10 >> 黒尾鉄朗

ついに…ついにこの時期がやって来たわね…私はこの時期が一番好きだ。何故かってそんな…ネクタイベストジャケットのトリプルコンボ…!ふぎー!!猟奇的だわ…!いや殺人的?

「…ぃ、おい、そこの変態」

ガッと振り返ると永遠の宿敵、黒尾鉄朗。いつもならすぐさま反撃している。しかし今日の私はいつもと違う。だってネクタイベストジャケットの…

「何ガン見してんだよ」
「……………」

少しでも脳裏に焼き付けようと必死だ。

「あのね、私、この時期が一番好きなのよ…」
「…ふーん」

おいコラ、着替えるから出てけよ。

「わ、私あれなの!ネクタイ解く姿好きなの」
「…なんだよ見せろってか」
「うん」

今日は一段と素直な私に、驚いている。けど私自身、そんなこと気にしている場合ではないのだ。

グッグッとネクタイ解く…というか緩める仕草ね、これ、大好物。というか大事なこと忘れてた。私がそれよりもっと好きな仕草それは−−

「は?結ぶ仕草のが好き?」

すっかり呆れ顔だ。でも気にしない。結んでくれと懇願する。と、私の両手首をガシッと握ったかと思うと、あっという間に結びあげたのだ。

「ちょ、ちょここに結ぶんじゃないっバカ!」
「あー?結ぶ姿好きっつったろー?」
「解いてぇ!!!」

ニヤニヤにじり寄ってくる黒尾から必死で逃げようとする。背中に壁を感じる。や、やばい…!

「あー古文眠かったな……あ?」

外から声がして、扉が開く。た、助かった!そして気付いた。今の私と黒尾の体勢。おまけに私の格好。

「お、おまえらああああああ!!!」

夜久の怒鳴り声が響く。

「何やってんだよ今すぐヤメロなんで名前ここに居るんだよってかそもそも男子部室にのこのこ入るなって何度も言ってたろうがこの馬鹿!!!!」

ひとしきりいい終わった夜久をよそに、黒尾はいつもの飄々とした口振りでこう言った。

「だってな、名前の方から結んでくれって言ったんだぜ?据え膳食わぬは…」
「あああああ!お前も出入り禁止にするぞ!!!」


何も
聞こえなかったと首を振る


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