後編2
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「…何してんだ、真樹緒。」
「!?」
「縁側で昼寝をしてたんじゃねぇのか。」
「こじゅさん!?」


うわぁ、こじゅさん。
こじゅさん!
俺が虎次郎とこーちゃんが駆け抜けて行った先を切なく眺めてたら後ろからこじゅさんが!
何かお仕事してたんか着物にたすきがけ姿のこじゅさんが!

しかもほっかむり!
かっこいい!


「こーじゅさーん!」


やぁやぁこじゅさん!
ぐっとたいみんぐこじゅさん!
ちょっと俺のお話聞いてこじゅさん!
虎次郎とこーちゃんがな!


「、待て真樹緒。」
「………ぬ?」


なに?
どうしたんこじゅさん。
俺、今すぐこじゅさんに抱きつきたいんやけど。
飛び付きたいんやけど。
抱きついて飛びついて俺のお話聞いてほしいんやけど。


俺が今にも走り出そうとした瞬間こじゅさんが掌を前に出して「待て」って。


「こじゅさん…」


ええ、こじゅさん。
俺すごい今、でばなをくじかれたで…!
俺両手を開いて準備はばんたんやったのに!

ぬん…
抱きつきにいったらあかんかった?


「いや、そうじゃねぇ。」
「へ?」
「ほらよ。」
「わぁ!」


俺がちょっとしょんぼりしとったらこじゅさんが近づいてきて、おっきな腕を広げて俺を捕まえた。
ゆうるく捕まえられてすっぱりこじゅさんの胸に収まったらちょっと強めにぎゅうって。


「こじゅさん…」


腕を回して背中をぽんぽんってされる。
俺はそれに安心してそろっと手を伸ばした。
やぁやって、こじゅさんの腕がすっごく優しいから!
俺もだきつこうと思って!
こじゅさんの太い首にぎゅうって!


「こじゅさん今お暇?」


もうお仕事が終わってお暇やったらお願いあるんやけど!
俺と一緒に付き合ってほしいんやけど!


「どこか行きたい所があるのか?」
「政宗様のお部屋。」


虎次郎とこーちゃんと行こうと思ってたんやけど、二人とも追いかけっこして行ってしまったん。
それで俺ちょうショックやってんけど、ぐっとたいみんぐでこじゅさんが来てくれたから!
もう寂しくないん。
やから一緒に政宗様のお部屋へ行こう?


「あ、もしかしてもうゆっきーらとお話してる?」
「知ってたのか。」


真田とその忍がやって来た事を。


「ういうい。」


さっき会ったん。
さっちゃんとゆっきー。

どう?
今、俺とお話するんは無理やろうか。
ゆっきーが何やとっても急ぎのご用で呼ばれたみたいな事ゆうてたし。
ちょっと腕を離してこじゅさんを覗き込んで見る。
覗き込んでどうやろって首かしげたらこじゅさんが笑って。


「大丈夫だ。」
「お話しできるん?」
「ああ。」


真田やその忍は客間に通してある。
政宗様がお待ちだ。
早く行って差し上げろ。


「へ?」
「今か今かと待ち兼ねて、何も手についておられねぇ。」


政宗様が?
待ってるん?
俺を?


あれ?
でも俺何もお約束とかしてへんかったお思うんやけど…


「…俺?」


もう一回聞いて見たらこじゅさんが大きく頷いた。


ぬん…
政宗様待ってるんやって。
お待ちかねなんやって。


「…こじゅさん、俺、ちょっと、いってきます。」


俺もそう言えば全然今日は政宗様と会って無いってゆうか。
それ思い出したら何やそわそわするってゆうか。
政宗様をお待たせしたらあかんやろうし、早く会いたいなーってゆうか。


「ああ、行って来い。」


廊下は走るんじゃねぇぞ。


「えっと、うんと、がんばる…!」


いそぎあしで頑張る!
はやあしで頑張る!
でもちょっとだけ静かに、その、走ってもゆるしてね…!



「いそぎあし、いそぎあし、」



ぬんぬん。
ぬんぬん。


政宗様。
政宗様、もうちょっと待ってね。


もうすぐつくから。
もうすぐで政宗様のお部屋やから。



「政宗様!!」
「待ちくたびれたぜsweet!!!」
「うわぁ!!」



すぱん、って政宗様のお部屋の扉を開いた瞬間。
ほんまに開いてすぐに目の前にあったのは政宗様の胸。
ぶつかる勢いで飛び込んだ。
飛び込んですぐ捕まった!!


「び、び、びっくりした…!」
「くくく…小十郎に会わなかったか?」


俺がお前を待っていると言伝たんだがな。
抱きしめてくれた政宗様が笑いながら言うた。


抱きしめたまま政宗様が俺をだっこしながら移動して、日差しでぽかぽかあったまってる窓際に座る。
俺はいつも通りにお膝に乗って。
お腹に回ってる政宗様の手と手を繋いだ。


「こじゅさんには会ったよ。」


政宗様がお待ちかねやでってゆうてた。
やから俺頑張って急ぎ足できたんやで。
廊下走ったらこじゅさんとか女中さんとかに怒られてまうから!
政宗様のために頑張ったんやで。


「俺の為?」
「俺も政宗様に早く会いたかったら、その…俺のためでもあるけどー。」


そこはほら。
照れるから。
俺照れちゃうから。
政宗様のためって事にしときたいん。


「政宗様も俺に会いたかった?」
「Of course!!」
「ぬん!」


あのね、あのね、政宗様。
ちょっと聞いて。
俺のお話聞いて。
今日はね、さっきから不思議な事がいっぱいなん。
俺、それお話しようと思ってたんもあるんやで政宗様のとこへ来たんは!


「何か面白い事でもあったか。」
「あのね!」


今日はいっぱいぎゅうされたん。
鬼さんやろう、おシゲちゃんやろう、さっちゃんにゆっきー、こーちゃん。
さっきはそこでこじゅさんにもぎゅってされたよ。

俺ぎゅうは大好きやけどすっごいびっくりしてね。
今日はぎゅうの日やったやろうかって思ってね。
それか他に何かあったやろうやってね。
政宗様に聞こうと思ってやぁ。

やってほら、出会う人みんなが俺にぎゅうしてくれるん。
ほんま俺不思議で。


「くくく、」
「政宗様?」
「なァ、真樹緒。」
「?はい?」
「お前、本当に分からねぇのか?」
「…なにが?」


政宗様は何でか知ってるん?
みんなが何でぎゅうしてくれたか知ってるん?
背中で笑ってる政宗様を見上げたらおでこを俺の肩に押しつけながらくくくって。
笑いを堪えてるみたいやけど政宗様堪えられてないよ俺おいてけぼり!


「真樹緒、」
「なに?」
「今日はお前のBirthdayだろう?」



……
………



「へ?」
「神無月の十八、十と余年前お前が生を受けた日だ。」


この上なく喜ばしく、感謝すべき日だ。



「あ…え…?」



バースデー?
え?
あ、誕生日?
えっと十月、神無月のひーふう、みい、…


「は!!!」


ほんまや!
俺今日は誕生日!
バースデー!
忘れてた!
すっかり忘れたたまじで!
ってゆうか政宗様覚えててくれたん!?


「俺だけじゃねぇぜ?」
「え?」
「小十郎や成実、綱元に風魔、真田幸村とその忍にも会ったろう?」
「…みんながぎゅうしてくれたんは俺が誕生日やから?」
「hugだけで済むと思うなよ?」
「ぬ?」
「くく…」


政宗様が俺の耳元に顔を寄せる。
笑いながらやからちょっとくすぐったい。


「今夜はお前のBirthday partyだ。」
「!!!」


その為に集まったんだ。


「まじで!!」


まじで。
俺の誕生日パーティーとかまじで。
俺、そんな、誕生日とか忘れてたのに。


ほんま、俺。
やぁ、どうしよう。


「政宗様…」
「準備はもう出来てるぜ。」


広間には成実と猿特性の料理が並んでいるだろうよ。
お前に食わせるんだと風魔が水菓子を用意した。
虎次郎が採って来た雉は綱元が見事に捌いて見せた。
真田が七日七晩悩んで悩みぬいたというpresentは俺も楽しみだ。
ああ、そして勿論俺も。


「Happy Birthday、sweet」


I love you my Everything


「楽しみにしてろよ。」


お前へのpresent、誰にも負けるつもりはねぇぜ。


「ぬん…!!」


政宗様、政宗様、どうしよう。
俺うれしい。
うれしくて何や胸がきゅうってなる。
きゅうってなっていてもたってもいてられへんようになる。


どうしよう。
嬉しい!


「政宗様、」
「どうした。」
「その、皆はどこに、おるん?」


俺がまんできひん感じ。
そわそわそわそわちょっとじっとしてられへんかんじ。
うれしくて、うれしくて、もう俺泣きそうなん。
やからちょっと、このそわそわをどうにかしやなあかんの。


「政宗様。」
「あいつらなら広間にいるんじゃねぇか?」


今日の主役を待ってるだろうよ。


「!!俺、行ってきます!」


政宗様!
俺ちょっといってくる!
政宗様にぎゅうってして。
おでこにちゅってして、今まで笑ってた政宗様がきょとんってなったから今度は俺が笑う。
へへへって笑って行ってきます。


あのね、俺広間へ行ってくる。
行ってちょっと皆を抱きしめ返してくる。
やって俺がまんできへんから!
抱きしめてみんなにありがとうって言ってくる!


「おい、こら、真樹緒!」
「政宗様もすぐに来てねー!」
「真樹緒!」


待て!って政宗様の声が聞こえたけどだめだめ。
俺はもう皆に抱きつく事しか感がられやんから!
もう目的に向かって進むだけやから!
止めないでー!
絶対止まらんから!



ぬんぬん。
ぬんぬん。



あそこの角を曲がってまっすぐ行ったらもうそこは広間。
いつもは廊下走らへんけど今は猛ダッシュ。
待ってろ―。
まってろみんな!
俺もう限界やから!
皆に抱きつきたくて限界来てるから!
俺が部屋に飛び込んで、皆のお名前呼んだら、もうそこは素直に俺に抱き締められてくれると嬉しいわ!



「鬼さーん!おシゲちゃーん!こーちゃん!こじゅさん!さっちゃんにゆっきー!!こじろー!」



かくごしてね!!
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