後編 ------- 虎次郎と一緒に厨に行って、お汁粉食べ終わったお椀を女中さんに渡して。 「ごちそうさまでした!」って虎次郎と一緒にぺこり。 おかわりはよろしいですか?って聞いてくれたんやけど、俺らちょっと政宗様のとこにいかなあかんから首を振ふって厨を出たん。 ありがとーってお礼もゆうたよ。 女中さんは笑って俺と虎次郎の頭を撫でてくれました! ぬーん。 虎次郎、最近奥州の女中さんやったら触っても何にもせえへんねんで。 初めはちょっと牙むいたりしちゃってたんやけど。 今はもう慣れてくれたんか静かにいい子にしてるん。 俺が一緒におらん時は女中さんに毛並みを整えたりもしてもらってるみたい。 日に日に虎次郎の毛並みがつやっつやになってるん。 「虎次郎、虎次郎、政宗様お部屋におる?」 「がうがう。」 そうだなー。 匂いは部屋の方だからいるんじゃねぇか? さっきの奴らが城に上がってるならもしかしたら広間かもしれねーけどさ。 取り合えず部屋に向かうかー。 落ちんなよ真樹緒! 「ういうい。」 虎次郎が鼻をひくひく、って動かして俺を振り返った。 多分落ちるなよってゆう意味やと思うー。 大丈夫、大丈夫、虎次郎の背中とっても広いから大丈夫ー。 虎次郎はね、鼻がいいから政宗様の居場所も分かるん。 凄いやろー。 やから虎次郎にまかせといたら俺は政宗様に会えるって訳ですよー。 虎次郎は俺ご自慢の虎っ子ですからー。 「ぬーん。」 のっしのっし歩く虎次郎の背中で揺られながら、今日あった事を考える。 初めに鬼さんがやってきてー、その後はおシゲちゃん。 二人にぎゅうされてびっくりしてたらさっちゃんとゆっきーがやってきて。 やってきたと思ったらさっちゃんとゆっきーにもぎゅうされて。 ぬん… 今日は何なんやろう。 ぎゅうの日なんやろうか。 出会う人皆にぎゅうってされるんやけど。 でもそんな日あったかな俺初耳やけど…!! 「ぎゅうは気持ちいいんやけどねー。」 「がう?」 「虎次郎もぎゅー。」 「がるる…」 虎次郎の背中でちょっとうつぶせになって、虎次郎の首にぎゅー。 ちょっと虎次郎が溜息ついた様な気がしたけど多分気のせいやから気にしないー。 ぎゅー。 ぬくいー。 ぎゅー。 「(……………)」 ひょい。 「ぬ?」 「ぐるる?」 「(ぎゅう)」 「あー!!こーちゃん!」 「がる!?」 やぁやぁ、こーちゃん! 今日はお久しぶりのこーちゃん! やー、朝会ったきりやねぇ。 朝おはようのあいさつしてから何やお仕事あるってゆうてたもんねぇ。 もうお仕事終わったん? 俺と一緒に遊べる? 急にだっこするからびっくりしたやんー! なぁなぁ今から政宗様のとこへ行くんやけどこーちゃんもどお? ほんで行った後また厨に行ってお汁粉もらおう。 俺と虎次郎は食べたんやけどこーちゃんはまだお汁粉食べてへんやろう? 焼いたお餅入っててとってもおいしかったよ! 「(………)」 「こーちゃん?」 「(ぎゅう)」 「あれ?」 やぁやぁ、こーちゃんな。 俺が虎次郎の背中で寝そべってたら突然ひょっこり現れてな。 本当にきゅうに黒い羽と共に現れてな。 俺をこう抱き上げてぎゅってくっついてくるん。 くっついてきて、やっぱりぎゅう。 ふわふわもこもこの虎次郎の毛皮から今度はこーちゃんの素敵筋肉に包まれてしまったのです。 ぬーん。 ほんまに今日は何やろねー。 本格的にぎゅうの日かしらー。 こーちゃんからこうやってくっついてきてくれる事少ないから俺どきどきしちゃうわー。 ぬーん。 とっても嬉しいんやけど! 「がるるるるる!!!」 やい忍野郎! お前どういうつもりだこの野郎! 真樹緒はこれからおいらと政宗のとこに行くんだぞ! その手を離しやがれ! 「(……………)」 ふんっ…! 「ぐるるるるるるる!!」 てめー! 無視してんじゃねーぞ忍野郎! 真樹緒を返せ! 返さねぇとどうなっても知らねぇからな…! …… ……… 「…え?」 あれ? 虎次郎?こーちゃん? あれ? どうしたん? どうしてそんなに睨みあってるん? 険悪な雰囲気なん? こーちゃん、こーちゃん、ぎゅうしてくれてるんはとっても嬉しいいんやけど虎次郎ちょう牙むきだしやから。 今にもつかみかかる勢いで構えてるから。 あれ? 何で二人はいっつも出会うと緊張感に包まれるん俺ちょっといたたまれやん…! 「こーちゃん…虎次郎…」 ちょっと落ち着こう。 二人とも落ち着こう。 虎次郎、虎次郎、ほら政宗様のとこ行くんやろう? こーちゃん、こーちゃん、一緒に行こう? …… ……… 「がうがうがうがうがうがー!!」 「(しゅたたたたたたたたた!!)」 「えー!!こーちゃーん!こじろうー!!」 どこ行くん! 二人ともどこ行くん!! 俺をほうってどこ行くんー!!! えー!! まじで…!! 廊下走ったら女中さんに怒られるよー! てゆうか追いかけっこするんやったら俺も連れてって…!! 俺一人で寂しいやん…! 「…こーちゃん…こじろう…」 俺が手をわなわなと伸ばしてみても、そこには長い廊下があるだけで。 虎次郎とこーちゃんの背中はどこにも見当たりません。 物凄い速さで俺の目の前を駆け抜けてゆきました。 やぁ、そりゃあね…あんな勢いで走って行ったらすぐに見失ってしまうよ… ひゅるると切なく風が吹いた様な気がして俺がとってもせちがらい!! 「お、お、お、俺おいてけぼり…!」 ぬーん! ひどい。 ひどい虎次郎とこーちゃん。 俺を置いて行くなんて。 一緒に政宗様とこ行くってゆうたのに…! ひどい…!! |