「真樹緒!」 「ぬ!?」
うーん、うーん、って唸ってたらいきなり肩をぐいって引っ張られた。 びっくりして振り返ったらそこにおったのはこじゅさんで。
「こじゅさん!」
お話終わったん? 俺、さっきまで小屋の前におったんやけどやぁ。 こじゅさんちょっと忙しそうやからこのお店にお邪魔してたんよー。 言うたらこじゅさんが顔を手で覆いながらはーってため息吐くん。
ぬー? なぁにー。 俺別にお商売の邪魔はしてへんよー。
………たぶん。
「黙っていなくなるな…」 「ぬ?」 「驚いた。」
こじゅさんがぼふ、っと俺の頭を撫でる。
わしわし。 ぐりぐり。 俺は気持ちよくってとろーん。 「ぬー」って目ぇ瞑ってたらお店のお姉さんがくすくす、って。
「猫みたいだねぇ。」 「ねこちゃうもん。」
もー。 お姉さんったらもー。 ぷう、って膨れながら指輪を元あったところに戻したら今度はこじゅさんが「欲しいのか」って。
「ぬ?」 「ずっと見てただろう。」 「あー…」
やぁ、確かに綺麗やなーって見てたけど。 こんなとこに指輪が!って思いながら見てたけど。 欲しそうに見えたかなぁ。
ぬー。 そんなつもりやなかったんやけど。
「主人、」 「はいな。」 「これは何だ。」
こじゅさんが俺の頭をわしわししながら、戻した指輪をまた持ち上げた。 こじゅさんが持ったらすごい小さく見えるねぇ。 かわいらしい!
「こじゅさん、それ指輪っていうねん!」 「指輪…?」 「おや、知っていたのかい。」
うん! やっておれのおったとこにもあったもん!
「指につけるん。」
簪とか櫛とかと一緒でな、これは指につける装飾品なんやで。 女の子がおしゃれにようつけてるけど、男の人でもするんよ! こうやってなーってこじゅさんにつけてみせたんやけど、やっぱりこじゅさんのたくましー指にはうんともすんとも入りません…!
ぬうう。 小指もむり!!
「俺につけてどうする。」 「ぬ?」
笑いながらこじゅさんが指輪を取った。
やぁってやー。 分かりやすく説明しようかと思って! 指輪見た事なかったやろう?
「随分深い青だな。」 「綺麗やでなー。」
吸い込まれそうやんなー。 じぃーって見てたら周りが見えやんようになるっていうか。 ずうっと眺めてたくなるっていうか。 やっぱり綺麗。
「ぬー。」 「真樹緒。」 「綺麗やねー。」
こじゅさんの手にある指輪をじぃー。 自分の顔が写るぐらいのつやつやな青い石をじぃー。 ずっと見てたら頭の上で笑ったような声が聞こえた。
うん? 何?
「主人。」 「はいはい。」 「この「指輪」を一つくれ。」 「こじゅさん!?」
ええ! 何で!
俺そんなつもりで見てたんやないよ! こじゅさん!
「欲しいんだろう?」 「ちゃうねんちゃうねん!」
あああ! ちがうんー。 見てただけ!
「俺、ほんまそんなつもりやなくって!」
こじゅさん! ええん、ええん。 やってそれ絶対高い…!
外国から持ってきたって言うてたもん。 すごい綺麗やから見てただけなん。 欲しいとか思ってへんから。
「主。」 「お買い上げありがとうございました。」 「ああああー!!」
こじゅさん! ちょっとこじゅさん! 焦ってこじゅさんの腕つかんだら既にこじゅさんがお金払ってしまっていました…!!
まじで!! こじゅさんまじで!!
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