「こじゅさんこじゅさん、あそこ何屋さん―?」
賑やかな町の中、はぐれやんように繋いだ手をぐいぐい引っ張って俺はこじゅさんを見上げた。
どうもどうもー。 政宗様がお仕事で忙しいから今日はこじゅさんとお出かけしてますよ。 真樹緒です。 こんにちは!
「あれは酒屋だ。」 「さかやさん。」
こじゅさんが俺を見て笑う。
ほうほう。 あれ、酒屋さんやねんて。 お店の軒先にな、何かでっかいボールみたいなんがぶら下がってるん。 あれ何やろーって思ってこじゅさんに聞いてみたわけです。
酒屋さんかー。 へー。
あのでっかいボールな、酒林って言うねんて。 酒屋さんの軒先に吊るして、お酒の神様に感謝してるらしいん。 そういやぁ、居酒屋さんとかの前でもたまに吊るしてるとこあるわなー。
ぬー。 こじゅさん物知り!!
「ほんならあれはー。」
ほらあっちのちっちゃいお店。 何やええにおいがするんー。 あまーい匂いやで!
「飴屋か。」 「あめ!!」
飴屋さん! 甘い匂いは飴屋さん!
ぬー。 ちょびっとな、ショウガの匂いもただよってくるんー。 俺のお腹をこれでもかってくすぐりよるねんー。 甘い誘惑!!
「あめかー。甘い匂いはあめかー。」
こじゅさんの手を掴みながら、その手をぶらぶら。 ちょっと歩くのも遅くなったりして。 飴屋さんの前を通り過ぎる時、何かなごりおしくってお店みながら更に足が遅くなったりしてこじゅさんに引っ張られた。
「真樹緒。」 「ぬ?」
ほんならこじゅさんがくくくって笑ってるん。 あれぇ? 何で笑ってるん。
笑ってるこじゅさんはそらぁイケメンやけどー。 どないしたんこじゅさん。 何かあったん? 首傾げたらこじゅさんがやっぱり笑いながら俺の頭をぐしゃってまぜた。
「後で寄るか。」 「!!」 「政宗様への土産にもなる。」 「まじで!!」
こじゅさんまじで!! 飴屋さん行ってええの?
「ああ。」 「ぬー!」
もうー。 何で分かったんこじゅさんー!! もー。 俺が飴にときめいてた事!!
そんなに顔に出とったやろうか。 ばればれ? よそみしてたからかなぁ?
恥ずかし!! 俺何かくいしんぼうさんやん!!
「真樹緒は分かりやすいな。」 「そおー?」
ぬーん。 やぁ、でもこれは愛ですー。 こじゅさんから俺への愛ですー。 うれしいんー。
「こじゅさんー。」 「こら、歩けねぇだろうが。」
こじゅさんの腕にまとわりついてみょーん。 ええんやもん。 こじゅさんからの愛を噛み締めてるんやもん。
「へへー。」
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