02




「梵―、真樹緒―、笹取って来たよー。」


今朝、やけに早起きした真樹緒が俺の部屋にやってきて「おシゲちゃん七夕の用意しよ!」って布団の上に飛び込んできた。


最近ちょっと肥えたよね真樹緒。
うっと詰まった喉を抑えて見上げれば「食べ盛りなん」と何とも可愛らしい笑顔が返ってきた。


ああはいはい。
どうせおシゲちゃんは真樹緒に勝てやしないよ。
その笑顔で何だって許せてしまうんだから性質が悪い。


今日も相変わらず可愛いねー。
一体今朝は何の御用。


「おシゲちゃん、七夕の用意やで。」
「七夕?」
「笹に飾るん。」


ああ、そういえばそんな時季だっけ。
むくりと起き上がれば真樹緒と向かい合わせ。
何、一緒に飾りを作ればいいの?
頭を撫でれば「笹が欲しいん!」なんて楽しそうに。


「笹ねぇ…」


そんな顔でおねだりされちゃぁ、おシゲちゃん適わないなー。
笹だって何だって取ってきてあげたくなっちゃう。


「おシゲちゃーん。」


おねがいー。
笹欲しいんー。
顔の前で手を組む真樹緒に思わず噴出した。


「一本あればいいの?」

「!!」

「真樹緒のためなら笹の一本や二本、ってねー。」


任せなさい。


「おシゲちゃんー!!」て抱きついてくる真樹緒の頭を撫でたのが今朝で。
裏の山で鉈を片手に歩き回って数刻、やっと戻ってきたんだよ。


「!おシゲちゃんお帰りー!!」


まぁ、満面笑顔の(頭やら着物やらに紙が一杯張り付いてたけど)真樹緒に抱きつかれたのは役得だよねー。
笹を担いで、真樹緒を抱えて、梵の部屋に入ればあるわあるわ。
七夕の飾りが沢山、畳が見れないぐらいに所狭しと並んでいた。
でんぐりに、吹流し、ちょうちんに編み飾り。


って…網飾りに鴨田さん絡まってない?

「かえらしいやろう?」


……
………


それでいいの?
「ぶもー」って恨めしげにこっち見てるよ。


「もうちょっとしたら助けに行くん。」


…楽しそうだね。
確かに可愛いけど。
ため息を吐いてもう一度鴨田さんを見れば、「ブモッ」って言われた気がした。



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