05



部屋中の香を片付け、換気をし、やはり真樹緒を腕抱いて炭を焚いた。
畳の上に真樹緒にと選んだ小さな香炉を置き、先ほど調合した香を乗せる。
物珍しげに真樹緒が覗き込んできたのに喉を鳴らし、ふわりと匂ってきた香りに「どうだ、」と。


「わー…」


そのまま匂うんと香炉に乗せるんとは全然違うなぁ。
ええ匂い!


「これ、もらってええのん?」
「お前のために調合したんだぜ?」


お前が持たなくてどうする。
香水とやらの変わりにいつでも身につけていろ。
機嫌のよい真樹緒の頭を撫で、これからはこの匂いに染まれと言い聞かせた。


「へへー…」


政宗様の匂いと似てるなぁ、などと言いながら笑う真樹緒にこの香の名はどうすると首を傾げれば同じように首をきょとんと。


「ぬ?名前?」
「つけねぇのか?」
「つけてもええの?」


この香はお前が選んだ香で作ったoriginalだ。
名前は無い。
別につけなくてもいいが、同じのを作ろうとする時に不便じゃねぇか?
まぁ材料と言っても青木香と甘松だけで、その必要もないかもしれないが。


「うーん、」
「真樹緒?」
「名前なー…」


うーんうーんと首を捻る真樹緒の顔は真剣で、つけるのかと。
どんな名を考えだしてくれるのやらと口元が緩んだ。


「うーんとやぁ。」


青木さんと甘松さんの名前やろー?
爽やかなええ香りやし。
ちょっと夏っぽい感じ。
すーって鼻に通っていって、体がやんわりなんるん。


「むーん。」
「出ねぇか?」


もーう、笑ってる場合ちゃうで政宗様。
中々ピンとけぇへんの。


夏でー。
爽やかでー。
やんわりでー。


「…」


でもな、でもな、やっぱり一番はあれやと思うねん。
あれ。
俺が一番好きな匂いのあれ。


「よし!」
「決まったか?」
「ん、」


びっくりせんとってやー。
すっごいのん思いついたんやから。


政宗様の耳にひそひそ。
俺らのほかに誰もいてへんけどひそひそ。
おれひそひそ話好きやねん。
やってな、政宗様がこう顔近づけてきてくれるねんもん。
「何だ?」って背ぇ低い俺に届くようにしてくれるねんで!


優しい!!


「あんな、」
「ああ。」
政宗でいこう!


……
………


…………Ah?
やから「政宗」


むしろMASAMUNE?
ほら、サムライみたいな感じで。
マサムネ。


格好いい!!
決まり!!
マサムネ!!
ニューブランドマサムネ!!


…マジか。
「まじで!!」


たーっぷり黙った後、おっきなため息吐いて、もう一回黙って、俺を見た政宗様はちょぴり恥ずかしそうやったけど俺が決めたんやから「マサムネ」で決まりなんです!
ダメ押しでピース。


この匂いはマサムネなん。
政宗様の匂いなん。
俺の大好きな匂いなん。
ほらほら顔上げて、って政宗様の頬っぺたぺちぺち叩いたら「この野郎」って思いっきり抱きしめられました。


おおー!!
生マサムネ!!


*
*
*


「政宗様、失礼します。」
「小十郎。」
「こじゅさん!!」
「、香を焚かれたので?」
「Ah―…まぁな。」
「マサムネやねん!!」


この匂い!
マサムネやねんで!!


「はぁ?」
「へへー。」
「…政宗様?」
「「まさむね」なんだとよ。」
「……はぁ、」


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MASAMUNEです(笑)
キネマ主の好きな匂いはマサムネでしたというベタなお話をここまで引っ張ってすみません(汗)

でもお香の事を調べるのは楽しかったです。
余談ですが、個人的に大学で源氏物語をかじった時に読んだお香のシーンが好きだったので、そこに出てきたお香をちょっと出してみたり。

政宗様はそういう風流な事も嗜んでいたらいいなーと思いました。
凝りそう(笑)
でもキネマ主の好きな匂いはマサムネで(笑)
「Q」にてコメント下さった方に感謝をこめまして!



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