政宗様がなー。 俺に似合うお香作ってくれるねんてー。 真樹緒ですよこんにちはー。
政宗様の胡坐に乗ったまんま、今は色んなにおいのお香をかいでます。 気に入ったものがあったら言えって次から次へとお香差し出されるん。 ええ匂いやねんけどちょびっとくらくらしてきたで!
「あ、これ好き。」 「甘松だな。」
すーってする匂いなん。 ほんで何かかいだことある匂い。 もとおったところでちゃうよ。 すーっごい落ち着く匂いでな、俺の力を抜いてしまう匂い。
「政宗様の匂い?」 「ああ、荷葉にも入ってる。」
お香って難しくってな、香木?にも名前があるし、それを混ぜてできたお香にも名前がついてるねんてー。 荷葉は政宗様が着物を焚く時につける匂いらしいで。
俺いっつも政宗様にくっついてるやろう? やからな、何かこの匂いかいだら安心するん。 ほーって息を吐いて政宗様にもたれた。
これ、好き。 ええなー。
「こっちはどうだ。」 「んーあんまりー。」
ちょっと辛い感じ。 つん、ってきっつい感じ。 それやったらこっちのほうがええなぁ。 この黒い奴。
「青木香か。」 「青木さん?」 「誰だよ。」
やって今ゆうたやんー。 笑いながら、お腹に回ってる政宗様の腕を叩く。 ほらほら青木さん紹介してぇや政宗様! 爽やかな匂いしてるやんー。
俺、これとさっきの「甘松」さんが好みー。 あんまり混ぜすぎでもあれやし、この二つでええよー。
「よし、なら混ぜるぞ。」 「おー!」
政宗様が木をごりごり。 何や粉末みたいにしてごりごり。 それをおさじに乗せて、俺の前にひょいって。
「ぬ?」 「この二つならどっちだ?」 「甘松!」
もう名前覚えたで! やって政宗様の匂いやもん。 この甘松さんが一番ええ匂い。 ちょーリラックス効果やでー。
へへ。 いっつも政宗様とおるみたい。
「…、」
いっつも一緒におるねんけどな! なら甘松の方を多くするかって、政宗様がまた乳鉢みたいなんでごりごり。
「……」
何かやぁ。 目の前に政宗様の手ぇあるんやけどな。 なんてゆうんかなー、俺なんかの手ぇとは全然違うちゃんとした男の人の手ぇでやぁ。
「ぬー…」
ちらっと自分の手ぇ見て政宗様の手ぇをも一回。
おお… 何、この差ぁ。 俺の短くてちっさいこの指のやるせなさ。
「なぁ、なぁ、政宗様―。」 「Ah?」
何か気になる香があんのか?って振り返ってくれた政宗様に首をふった。
んーん! 違うねん。
「俺なー、」 「どうした。」
「政宗様の手ぇ好き。」
…… ………
「………突然どうした。」
ぬー。 ちょっと。 ちょっと政宗様。
そんな呆れたような顔で見やんといてぇや。 久しぶりに何やせちがらいやん。
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