02



「湯のみちゃうのん?」
「これは香炉だ。」
「へー…」


そろそろ衣香を焚くかと思い、香炉を出せば真樹緒が釣れた。
胡坐の上で香炉を上から下から眺め物珍しそうに首をかしげている真樹緒に思わず口元が緩む。


桂皮の匂いはどうやら「しなもん」という真樹緒がいた場所でも馴染みの匂いの様で、そしてそれはapple pieとやらの菓子に使われていたそうだ。
懐かしい匂いだと言った真樹緒に、ならば今度はそのapple pieとやらを作るかと機嫌を窺えばこちらを溶かしてしまいそうな笑顔が返ってきた。
相変わらずてめぇはcuteだな。


「気に入ったか?」
「ん、ええ匂い!」
「他にもあるぞ。」
「香炉が?」
「香炉もだが、空薫物がな。」


目をきょとんと見開いた真樹緒を胡坐に乗せたまま箱に入った香炉を取り出す。


この陶磁が黒方、桐が梅花。
荷葉はその黒い箱に、侍従はその花の文様の箱にある。
さぁどれでも好きなものを試して見ればいい。
気に入った匂いがあれば調合でもするか。
久しぶりに腕が鳴る。


「香水みたいなもん?」
「香水?」
「匂いのする水やねん。」
「ほぉ?」


この木ぃと一緒でなぁ、色んな匂いがあんの。
でも水やから腕とか耳の後ろとか首にぬれるねん。
ふんわり匂ってくる香りを楽しむんやで!
香合を匂っては戻している真樹緒が楽しげに言った。


「あ、これ政宗様の匂いー。」
「荷葉だな。」


匂い袋みたいなものだろうか。
匂いのついた水だという。
確かに香を焚くよりも体に直接塗るのなら、身につけるのに手軽ではある。
よく考えられたものだ。


それにしても香炉がいらねぇ香とは一体どんな物か。


「あ、俺もっとるよ。」
「Ah?」
「多分、カバンの中に入ってるで。」


見る?
小さいやつやけど。


えーっとやぁ。
なんとかチャーム。
名前忘れてもうた。
ボトルが超あばんぎゃるどなボトルなん。
トロピカルジュースとか入ってそう。
使い切ったらボトルだけちょうだいなぁって可愛い妹におねだりされてるやつです。


メンズちゃうやんとか言うたらあかんよ。
学校の友達にもろうたん。
真樹緒はこーゆう匂いが似合うぞ、って言われてやー。


Ah?
「ぬ?」
誰に貰ったって?
「やから学校の友達。」



席が隣やねん。
イケメンやねんけど彼女がおらんくてなー、いっつも俺に何かくれるねん。
はよ彼女つくりーってゆうてるんやけど。


ほぅ?
「んん?政宗様ちょびっと締まってるよ?」


痛いん。
体を揺らす真樹緒を腕の中に閉じ込め、香水はもういい、と笑う。


ああ?
目が笑ってねぇだと?


Ha!!
察しろよlady。
今はそれどころじゃねぇだろう?


「政宗様?」
「真樹緒、」
「ん?」
「今から香を選ぶぞ。」
「うぃ?」


その友が誰だが知らないが、俺じゃねぇ野郎が選んだ匂いを纏っているのが気に食わない。

お前に甘ったるい匂いが似合うのは同感だ。
ただそれを送るのは俺でいいと思わねぇか。
今、お前の傍にいるのはこの俺だ。


「ま、政宗様?」


俺を見上げた真樹緒の額に口付ける。
ひゃ!と飛び上がった真樹緒を胡坐にのせたまま香炉を取り上げその顔を覗き込んだ。
うろたえる顔に満足してもう一度、今度はその小さな唇に。


「なにするん政宗様!!」
「kissだろ?」
「ゆわんでええしー!!」


さぁ、真樹緒。
覚悟しやがれ。
お前が香りに酔うまで付き合ってもらうぜ。


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あれ…
キネマ主の好きなお香は何ですか、っていうお話だったのにな(汗)
もう少し続くので、キネマ主好みのお香を筆頭に調合してもらおうと思います。

キネマ主がもらったのはインカントチャーム(笑)
上げた友人はイケメンだけど要領が悪いヤンキーだというどうでもいい設定があったりします(笑)
「Q」にてコメント下さった方に感謝をこめまして!



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