政宗様から真樹緒に届いたという手紙を拝見した。 それには女手で「真樹緒の仕種で何が好きか」と繊細な文字で。 これでは無碍には扱えない。 主人の目も痛い。 はぁ、と重いため息は吐いてみるも目の前の真樹緒はのほほんと茶を飲んでいるだけだ。
「どうした、小十郎。」 「いえ…」
何とまぁ、まれに見る楽しそうなお顔ですな。 真樹緒と同じく揚々と茶をすすっている主に思わず力が抜けた。 やれやれと苦笑いが漏れるが同時にくすぐったいものが体をめぐる。
真樹緒の仕種ですか。 この小十郎、恐れ多くも政宗様と同じくありますがよろしいか。
「気にするな。」
肩をすくめた主に一礼を。 改めて真樹緒を見た。
「う?」
そうですな。 数多ありますがどれから参りましょう。 畑に下りる折、手ぬぐいをほっかむり懸命に土を耕す様でしょうか。 嫌いな椎茸を半刻かけて食べるところでしょうか。 「こじゅさんこじゅさん」とやけに甘ったるく名を呼ぶところでしょうか。
それとも。
「真樹緒。」 「う?どうしたんこじゅさん。」
手を招くと何の疑いも無く傍により。 やたらとふわふわとした髪を撫ぜれば猫のように擦り寄ってくるところでしょうか。
けれど。
「おおー…」
気持ちいいんー。 おおきにー。 おおきにこじゅさん。 気持ちいいんー。
やはりこの顔には敵いますまい。 目を細め、ありがとうと柔らかく笑うこの顔には。
「く、結局同じじゃねぇか。」 「ですから申したでしょう。」
恐れ多くも、と。
笑う主に倣い、同じように笑った。 目の前では正座で大人しく撫でられる真樹緒がいる。 どれ程俺たちがお前を愛しいと思っているか知りもしねぇで。 漏れるのは笑みのみだ。
「どないしたん?」 「何でもねぇよ。」 「ああ、何でもねぇ。」 「じゃぁ何でわろうてるんー。」
もー! 俺だけ仲間はずれやん!! ぽこぽこ俺の胸を叩いてきた真樹緒を抱きとめ、だがやはり出るのは笑みばかりだった。
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た、ただの主従のわが子自慢みたいな話になってしまった(汗) 結局二人はキネマ主の笑った顔が一番好きですよーなお話でした(仕種じゃない…!)
というかただののろけにも読める… ぬーん。 ちょびっとやりすぎた感が否めません(汗)
「Q」にて質問下さった方に感謝を込めまして! 拍手にて頂いたコメントのお返事はまた改めまして御礼させていただきまする!
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