01




「ぬふふー。」
「真樹緒?」
「なぁーんも、ないーん。」


今日も今日とて「政宗様―」と部屋にやってきた真樹緒は、最近よく貰うようになった「手紙」を眺めながら相変わらず畳の上を転がっている。
何が楽しいのか笑いながらたまに「うーんとなぁ、」なんて独り言を呟きながら。


「真樹緒、」
「むふふー。」
「…、」


肩をすくめて文机に向かった。


俺が政務を始めて暫く、真樹緒は湯のみを持ってやってきた。
湯のみを俺の文机に置き、自分は今朝届いたという手紙を開きごろごろと。
一体その「手紙」に何が書かれてあるのか。


文机に頬杖をつきながら背中を伺ってみるが、仰向けになって足をじたばたとしている真樹緒がただ可愛いだけでその内容をうかがい知る事は出来ない。
たまに声をかけてみても上の様な返事を返されて終わりだ。
仕方なく政務をこなし、そう言えばhotcakeを作ってくれと言っていた時もこんな風だったかと思い返す。
ならば今回も何か可愛くおねだりでもしてくれるのだろうか。
肩を揺らして笑いを噛み殺せば「政宗様―」と、お呼びがかかった。


「どうした。」
「お仕事もうすぐ終わるー?」


ごろん、と横になった真樹緒は手紙と俺とを交互に見ながらへらりと笑う。


あんな、終わったらちょっとこっち来てな。
お願いあんねん。


「お願い?」
「ぬふふー」


ないしょー。
まだないしょー。
後でな!


そう言ってまたごろごろと部屋の端まで転がって行った真樹緒はただただ可愛かった。
「お仕事頑張ってな!」と手紙で顔を隠しながらのsmileもただただ可愛かった。
大方送られてきた手紙の内容のお願いなんだろうが、そんなものいくらでも聞いてやる。


「…」


本当にてめぇはcuteだな。


思わず筆が止まり、頭の上にいる鴨に話しかけている真樹緒を見ながらしみじみと。
お前の一挙一動に俺がどれ程腹の底をむずむずとさせているか知りもしないで。
今度こっちに転がってきたら捕まえて、俺の気がすむまで撫で繰り回してやる。
くすぐったいと暴れても知るものか。
すでに完成させる気の無くなった書類の上に文鎮を乗せ筆を置き、早く戻って来いと喉を鳴らした。



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