01




「へへー…」
「あれ?花ちゃんごきげん?」
「きゅ?」
「こんにちは。」
「さすけ!!」


旦那のお遣いに行った帰りに森のお稲荷様はどうしてるだろうと思って立ち寄ったお社で、にこにこご機嫌な花ちゃんを見つけましたよー。
どうも。
猿飛佐助、お見知りおきをってね。


井戸の水を汲んでたっぽい花ちゃんは井戸の横で、水の入った桶をそばに置きながらいつも通りの可愛い顔を緩めてぺらぺらの紙を見てた。
あらあらそんなとこに座り込んじゃって。
何やってるの?って凧から降りたんだけど何とその紙には花ちゃんが。


「花ちゃんの姿絵じゃない。」
「きょうお社にとどいたんだ!!」
「へー可愛い。」
「きゅぅー。」


その姿絵は着物の袖を振って楽しそうに歩く花ちゃんがいた。
それも思わず抱き上げたくなるぐらい可愛いの。
ふさふさ尻尾も目の前にいるのと変わらないぐらいでね。
どんなすごい絵師さんに描いてもらったの、って花ちゃん撫でたら「かみさまから届いたんだ」だって。


「……へぇ、」


出所はそこなんだ。
想定内といえばそうなんだけど。
天界とやらの絵師にでも描かせたのだろうか。


まぁねぇ。
よく出来てるし。
うん、可愛い。


「なぁなぁ、さすけ!」

「うん?」

「これ、ゆきむら見たらびっくりするかな?」

「旦那?」


ちらっと花ちゃんを見たら尻尾をつかんでもじもじしてた。
何してんの花ちゃんちょっと可愛いんだけど。
よしよしよしよし。
ふっさふさの耳をぐりぐりして首を傾げる。


「ん!ゆきむらだ!」
「旦那にねぇ…」


旦那に見せるの?
この可愛い花ちゃんの姿絵を?
ああそりゃぁびっくりすると思うようん。
びっくりした後は大体読めるよね。


「可愛いでござらぁぁぁ」ってきっと叫ぶんじゃないかな。
うきうきと俺を見上げてくる花ちゃんをだっこして「旦那に見せたいの?」って聞いたら右手をしっかり伸ばして「きゅ!」ってお返事された。
これは連れていかない訳にはいかないねぇ。
まっすぐ伸びた手をふにっと掴んだ。


「それじゃあ、行こうか。」
「さすけ?」
「旦那なら今頃鍛錬でもしてるんじゃない?」
「いいのか!?」
「もちろん。」


きっと旦那も喜ぶよ、って笑えば花ちゃんは顔をちょっと赤くしてふさふさな耳を曲げる。


ああ、癒しだ。
俺の癒し。
眼福。


そのまま花ちゃんを肩車。
ちゃんと掴まってなさいよーって凧に乗れば「おれ、とべるぞ」って。


そっか。
花ちゃん神様だもんねぇ。
でもさ、させてよ肩車。


「俺様がしたいのー。」
「さすけが?」
「ん、」


だから大将のとこつくまでこのままね。
俺様最近お仕事ばっかりで癒しが足りて無くってさー。
花ちゃんで癒されたい訳よ。
どうせ館に着いたら旦那に取られるんだから。


「って事で出発。」
「しゅっぱつ!!」


いい天気の空を花ちゃんだっこしてまったりと飛ぶなんて至福以外の何ものでもない。


そよそそ吹く風は花ちゃんの尻尾と耳を揺らして。
気持ちいいねーなんて言いながら暫く空の散歩を楽しんでも罰は当たらないってねー。



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