「あんな、あんな、政宗様。」 「Ah?」
政宗様のあぐらの上に乗っかって笑う。 今日は女の子の帯があるからもたれやんねん。 やから横向いてあぐらにのっかってみました!
「真樹緒?」 「俺なー、今日は政宗様の許嫁やねんでー。」
おシゲちゃんが言うてたん。
何でも政宗様、お見合いしやなあかんらしいやん? しかもそのお相手がちょっと悪い人らなんやろう? せやからな、俺がちょびっとお手伝い。
「許嫁?」 「ん!」
やって許嫁がおったらお見合いできひんやん。 もしお姫さん来てもやぁ、俺今女の子! 俺が政宗様のお嫁さんやしー!って言うたるよ!! ぐっっと親指を立てて政宗様を見上げた。
なぁ? これでオッケーちゃう? 政宗様が嫌がる事なんも無いよ! 笑ったら政宗様はびっくりしたような顔で目ぇ開いた後、「この野郎」って俺のほっぺたをぐりぐり。
「うわ、」
やぁ、あかんよ政宗様。 そこもおシゲちゃん何やつけとったで。 粉みたいなやつぽんぽんやられたで。
「真樹緒。」 「う?」
なに?って見上げたら政宗様が近かった。
「……う?」
えーっと、その。 あれです。 あれ。
うん? あれやん。
政宗様がやぁ、いっつもちゅーする時の近さ。 おっとこ前な顔がすぐ近くにあって息がかかるん。
「真樹緒、」
政宗様が首をちょっとずらしてもっと近づいた。
いやいやいや! 今そんな雰囲気ちゃうかったやん! 二人で頑張ろうなって話やったやん!
「すとーぷ!」
あわわ!ってなった俺は両手でガード。
… ……
むにゅ、って俺の両手は政宗様のお口にジャストフィットしました! 俺ナイス!!
「真樹緒…」 「あう…」
そんな恨めしそうな顔で見やんとってや。 俺かて恥ずかしい時は恥ずかしいねん。 政宗様いっつも急にちゅーしようとするやん。 俺、いっつもびっくりすんねんで。
「…口紅取れてしまうやんか。」 「Ah?誰もmouthにするなんざ言ってねぇぜ?」 「!!」
うそやん!! 狙ってたやん!! 何笑うてるん! 俺騙されへんねんから!
手のひらの中でくつくつ笑ってる政宗様を睨んだ。
「お前は俺の許嫁なんだろう?」 「せやけど…」 「将来の旦那の言う事は聞くもんだ。」 「ぬー…」 「手ぇ、どけろ。」
嫌や、ってちっさく言うたら政宗様に手のひら舐められた…! にょぉぉぉぉぉ!!! 聞こえてた!! ばれてた!!
「真樹緒、」 「やって、」
どけたら政宗様ちゅーするやん。 じぃーって見てたらおでこにちゅって。 うわ!ってびっくりしてたら頬っぺたにもちゅって。 政宗様が俺の弱いあの優しい笑った顔でな、するん。
もう。 そんな顔されたら逃げられへんやん。
「……むぅ…」 「降参か?」 「はじめっから勝負にならへんやんか…」
分かってるくせに意地悪や。 ぷん、って目ぇそらしたらまた名前を呼ばれて。 おっきい政宗様の手ぇでな、そらした顔を元に戻された。
じろじろ見やんとってぇな。 恥ずかしいだけやし、もう。 お見合いのお姫さん来るんちゃうの。 こんな事してる場合違うんちゃうん。 ありったけの逃げ道を用意してみたけどあかん。
もう、政宗様が近すぎて。
「真樹緒。」 「んぅ…」
気づいたら唇と唇がくっついてた。 やわっこくてちょっと熱い唇は一回だけちゅって音を立てて離れる。 短かったんやけど、俺はもうくらくら。
まだ近い政宗様を上目で見て息を吐いた。 目の前の政宗様の唇が赤い。 なんやろう、って指伸ばしたら「紅がついたか」って政宗様自分の唇舐めるん…!
「っ…!」
もう、ほんっま男前ってのは!! にって笑う政宗様に体の力が抜けてぼふって広い懐にもたれた。
あーもう。 政宗様とおったらいちいちドキドキして困る。 最近くらくらするんが多くなったなぁ、って熱くなった顔をあおいで。
「真樹緒。」 「なん。」 「本当に嫁に来るか。」 「…俺男の子やもん。」
ちょびっといってもいいかなぁって思ったのは内緒!! 政宗様わろうてるしばれてそうやけど、内緒ったら内緒!!
* * *
「あー!!真樹緒こんなとこにいた!」 「おシゲちゃん!!」 「打掛もって来たよって、…ちょっと…」 「う?」
「…梵、」 「Ah―?」 「真樹緒の紅が取れてんだけど、」
どういう事。
「I'm not sure」 「?どうしたん?」
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