一家の柴田家から書状が届いた。 年頃の一人娘を奥州へ見聞の旅に出したという。 その折女故、無知な事もあり候宜しくお導き下さいませんかと尤もに。
「チッ…」 「政宗様。」
ぐしゃりと書状を握りつぶした。
邪魔臭ぇ。 何が見聞の旅だ。 白々しい。
女一人が何を好んで冬の奥州へなど来るものか。 大方体の良い見合い話だろう。 今まで届いていた書状に散々と見ずを決め込んでいたせいか、まさか強行手段に出るとはな。 やってくれるじゃねぇか。
いかがなさいますかと小十郎が言うが、いかがなさいますもどうも。
「蹴散らせ。」 「無理を申されますな。」 「shit」
だったら聞くなと書状を破り捨てた。
船岡からここまで一日足らずで着くだろう。 この書状は一人娘が旅立った後忍によって届けられたものだ。 ならば到着は本日か明日。 ああ頭が痛い。
「政宗様どちらへ。」 「分かってんだろ。」
俺に今必要なのは癒しだ。 この腹の底に溜まったどろどろしたものを取り去るのは、気づけば畳の上をごろごろ転がっているあのちまっこい癒しだ。
「真樹緒の所へ行く。」 「柴田の姫が着かれたらどうします。」 「待たせとけ。」
ついでに追い返せたら追い返せ。
手をひらひらと振って部屋を出た。 重いため息が中から聞こえてきたが知りはしない。 実害は俺なんだ、それぐらいの泥はかぶりやがれ。
「また無茶を…、」
聞こえた声には聞こえないふりをした。
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