03




一家の柴田家から書状が届いた。
年頃の一人娘を奥州へ見聞の旅に出したという。
その折女故、無知な事もあり候宜しくお導き下さいませんかと尤もに。


「チッ…」
「政宗様。」


ぐしゃりと書状を握りつぶした。


邪魔臭ぇ。
何が見聞の旅だ。
白々しい。


女一人が何を好んで冬の奥州へなど来るものか。
大方体の良い見合い話だろう。
今まで届いていた書状に散々と見ずを決め込んでいたせいか、まさか強行手段に出るとはな。
やってくれるじゃねぇか。


いかがなさいますかと小十郎が言うが、いかがなさいますもどうも。


「蹴散らせ。」
「無理を申されますな。」
「shit」


だったら聞くなと書状を破り捨てた。


船岡からここまで一日足らずで着くだろう。
この書状は一人娘が旅立った後忍によって届けられたものだ。
ならば到着は本日か明日。
ああ頭が痛い。


「政宗様どちらへ。」
「分かってんだろ。」


俺に今必要なのは癒しだ。
この腹の底に溜まったどろどろしたものを取り去るのは、気づけば畳の上をごろごろ転がっているあのちまっこい癒しだ。


「真樹緒の所へ行く。」
「柴田の姫が着かれたらどうします。」
「待たせとけ。」


ついでに追い返せたら追い返せ。


手をひらひらと振って部屋を出た。
重いため息が中から聞こえてきたが知りはしない。
実害は俺なんだ、それぐらいの泥はかぶりやがれ。


「また無茶を…、」



聞こえた声には聞こえないふりをした。


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