おシゲちゃんに連れられてやってきたのは広間。 三センチぐらいの襖の隙間から向こう側を覗いたら、眉間にシワを寄せた政宗様がこじゅさんを思いっきり睨んでるのが見えた。
おおお… 怖い。 政宗様ちょう怖い。 目ぇで殺されそうや。 それを正面から受け止めてるこじゅさんもすごいんやけどな!!
「な、なにごと…」
おシゲちゃん、あの雰囲気あかんよ。 よどんどるよ。 黒いし暗いよ。 何あれ、ほんまちょっとやばいて。
「だーから言っただろー。」 「むー…」
でもほんまに何であんなに機嫌悪いん政宗様。 まれに見る不機嫌政宗様。 俺が政宗様の部屋火鉢の灰だらけにした時でもあんなに怒れへんかったのに。 火傷したら危ねぇだろ、ってちっさいでこぴんだけやったのに。 その後ちゃんとぎゅーしてくれたし!
「…火鉢こかしたの…?」 「やぁ、転がってたらこうバァーっと…」
バァーっと灰がな。 うん。 畳にやぁ。
「ほんと、転がるの好きだよね真樹緒。」 「ぬーん…」
ええやん。 おもろいやん。 広い部屋でごろごろ転がるん。 最近休憩せんと端から端まで転がれるようになってんで!
「はいはい、すごいすごい。」 「…心がこもってへん…」
頭撫でてるおシゲちゃんにぶーって膨れたら、可愛いだけだよって笑われた。 もー。 すぐそーやって逃げるー。
「だって真樹緒俺の話聞いてくれないじゃない。」 「ぶう。」 「聞いてくれる?」 「うぃ。」
それからおシゲちゃんは今朝梵宛にに書状が届いたんだよ、って話してくれて。
政宗様がお見合いしやなあかんらしいん。 しかもその相手が何や断りにくいんやて。 伊達のお家が昔からお世話になった後ろ盾さんらしいねんよ。
でもな、このお相手さんちょっと怪しいらしいで。 どうも政宗様に近づくためにお姫様をお嫁に送ってな、しかも伊達のお家も狙ってる感じなんやて!! 政宗様が頑張っておっきくした奥州も取られるかもしれへんねんて!!
あくどい!! せこい!!
「そこでだよ、真樹緒。」 「う?」 「梵のために一肌脱いでくれるよね?」
…… ………
「う?」
ぽん、って肩を叩くおシゲちゃんに首をかしげたらものっそいイイ笑顔で笑われました。
あれ? おシゲちゃん? 何や怖いよ?
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