「幸村君、幸村君。」 「おお!真樹緒殿、お久しゅう。」 「ん、久しぶり!」
はいはい。 ちょっとこっちにこよーね! 政宗様、今ちょっとご機嫌が悪いから。 部屋から手招きして幸村君を呼んだ。
「息災でございましたか。」 「ん、幸村君も元気やった?」 「某もお館様も変わりなく、」
そっか! よかった!!
ほんで今日はどうしたん? 何のご用? 何やら急いでたみたいやったけどやぁ。 首を傾げたら幸村君がうっって詰まった。
うん? 何で。
「あっ、その!本日真樹緒殿が絵師を呼ばれると聞きまして!」
「よう知ってるねぇ。」
そうそう。 絵師さんを呼んだのは政宗様やけどなー。 まだけぇへんの。 もうすぐ来ると思うんやけど、それがどうかした?ってゆうたら後ろでチッって政宗様が舌打ち。 「あの猿か。」って小さい声でなー。
やから怖いよ。 でもお猿って何の事なんやろう。
なぞ!
「もしよろしければ!こっここここ、」 「こここ?」
ニワトリ? どないしたん幸村君。 ニワトリの物まねなんかして。
「これを!!」 「ん?」
幸村君が若干震えながら差し出したのは赤い花。 椿かなぁ? ものすごい綺麗な赤で真ん中が黄色いん。 大きくっていい匂いがします!
「わー…」
「そっその、真樹緒殿によく似合うかと思いまして!」
幸村君はその赤い花を髪の毛にさしてくれた。 おおお! ちょ、ちょっときざ!! ゆ、幸村君無駄にイケメンやから何か様になっとるし…!
「お似合いにございます。」 「あっありがとお…」
照れながらにっこり幸村君が笑う。
笑顔が!! 爽やか笑顔がまぶしい!! い、イケメンは本当におるだけで何やオーラがまぶしい!
俺は更に小さくなってしまいそうですよ。 髪の毛に花なんてやぁ、生まれて初めてやわ俺。 恥ずかしいなぁって思うけどちょん、って花を触ったら幸村君が嬉しそうに顔をくしゃってするから外せません。
「真樹緒から離れろ真田幸村。」 「そこにおられたのか政宗殿。」
せやのに何この雰囲気。 政宗様刀六本も構えやんといてんか。 幸村君、さっきの笑顔どこいったん。
…… ………
「真樹緒にあんな安っぽい花が似合う訳ねぇだろうが。」
「嫉妬は見苦しいでござるよ。」
「てめぇ俺のpresent見て腰抜かすんじゃねぇぞ。」
…… ………
あかん。 俺にはどうにもならん。 無理。 ここは最後の頼みの綱、こじゅさんの出番なんやけど!!
「てめぇ、人ん家の庭荒らしてどういうつもりだぁ?」 主の躾はきっちりしとけや。
「ごめんって右目の旦那―、ほら、うちの旦那って思いついたら一直線だからさぁ、」 止められないんだよね。
…… ………
さっちゃん!! あの迷彩はさっちゃん!! いつの間にきてたん!
「お久しぶり真樹緒ちゃーん。」 「話は終わってねぇぞ真田の忍。」
しかもさっちゃんとこじゅさん何か雰囲気悪い!!
誰か。 誰か助けて。 あの辺りのくろーい空気をどうにかして!! もう端っこにちっちゃくなって四人を遠目でみつめてたんやけどなぁ。
こーゆうんてな、重なるねんで。 俺思い知ったわ!! なるべく近づかんように部屋の隅っこに行ったらもたれた襖がスッパーンと開いて。
「真樹緒―!!絵師呼ぶんだって?ならこれつけて、って。」
「あ…」
「あれれー?皆さんお揃いかい?」
「けーちゃん!!」
黄色い着物が眩しいイケメン、けーちゃんが! けーちゃん! 京都にいるんやないん!? 何でこんなとこに!
「前田殿!?」 「Ah―?前田の風来坊が何の用だ。」 「俺は真樹緒に会いに来たんだけどねぇ。」
にっこり笑うけーちゃんですが、状況は更に悪化した気がしなくもありません。 どうしよう!!
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