「すげーたけぇぞかみさま!!」 「ならばもう一度ゆけ。」 「たっけぇー!!」
お社にかえったらな、かみさまがいて。 「おかえり」って頭をなでてくれたんだ。 雨にふられてぬれてたけど、くしゃってなでられるのはやっぱりきもちがいい。
それからだっこされてな。 たかいたかいをしてもらったんだ!! すっげー飛んだんだぞ!! 竹やぶのてっぺんまで見えたんだ!!
「花ちゃんはもっと危機感持って…!」 「さすけ!!」
ひょいって体がうけとめられたと思ったらさすけがおれの首ねっこをつかんでた。
「俺はねこじゃねぇぞ!」 「可愛いきつ「いなりだ!!!」
いいかげんに覚えろさすけ! じたばたと暴れていたら、目の前でかみさまが「取られてしまったか」なんてわらってる。
「どうした花。」 「…きゅぅ。」
わらうとかわいいな! かみさまは!! おれ、てれてしまうぞ。
「「目の錯覚だ(にござる)、花」」 「花ちゃんの方が絶対可愛いよ。」 「ゆきむら、りゅうじんさま、さすけ。」
りゅうじんさまはかっこういいんだぞ? りゅうのすがただって、今のすがただって。 もちろん、さすけもゆきむらもな。
「俺がか?」 「きゅ!」 「俺様も?」 「もちろんだ!!」
「「花(ちゃん)!!!」」
「simple-mindedな奴らだぜ。」 「愛いものよ。」 「…Ahー…?」 「ふふ…人間も捨てたものではないぞ龍神よ。」
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さすけとゆきむらにぎゅーってされてな、み動きがとれねぇよ。 もぞもぞ動いて耳をぴん! こら二人とも!ってさけぼうとしたら。
う? ちょっとまて。 何か聞こえるぞ。
「…きゅ…」 「花ちゃん?」 「どうした。」
何か聞こえるんだ。 ちいせぇけど、音が。 だんだんこっちに近づいてくる。
「おれ、ちょっといってくる。」 「花!?」 「行くってどこに、」 「きゅ?」
さすけとゆきむらも来るか? ちょっとこの笹の上にのぼろうかと思ってんだけどな。 二人ぐらいなら連れてってやれるぞ?
「…よぅし、ゆきむら、さすけ。」 「花?」 「花ちゃん?」 「つかまってろよ。」 「ぬぅ!?」
頭をなでてたゆきむらの手をとってしっぽをゆらす。 耳もゆらして。 ちょっとじっとしてろよ? さすけの手もとってぐん、とうでに力を入れた。
「とぶぞ!」 「なぁぁぁ!!??」
すぐにふわりとうかぶ体。 ゆきむらとさすけなんて、かるがる持ち上げれるんだぞ。
「っ花!?」 「おっ俺様浮いてる!?」
ぐんぐん、二人のうでを引っぱって。 竹やぶの上までとんだ。 ざかざかといっぱいの木をかきわけて行くと、さっきまでの雨でたまったしずくがきらきら光ってきれいだった。
「花!」 「ちょうじょうだ!」
とん、と高い木のてっぺんちかくにゆきむらを立たせて。 さすけは身軽だからひょいって細い枝の上でな。 ふふん、ってちょっと得意げに二人の周りをとんだ。
どうだゆきむらさすけ!! いなりってすげぇだろ? 目をまるくさせたゆきむらとさすけに笑って、近かったさすけの肩にのった。 かた車だかた車。
「花ちゃん、飛べたんだねぇ。」 「いなりだからな!」 「すごいでござるよ花!!!」 「へへ…」
さすけの橙色の髪にあごを乗せてそよいでくる風に目をつむる。 ぺちぺちとさすけのほっぺたを叩いて顔をのぞきこんだ。
「見なおしたか?」 「…まぁね、。」
ふ、ってさすけががわらった。 さすけはたまにかわいいな!!
「そのまま落ちちまえ。」 「大人げないぞ龍神よ。」
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