05




雨ごいをしてたらな。
足がもつれちまって。
そのままどぼん!っていずみの中に落ちたんだ。


おれ、今までおよいだことなんかなくって。
水の中にはいるのもはじめてで。
うまく動けなくなってすっげぇびっくりした。


息ができねぇんだぞ。
体だってうまくうごかせねぇ。


ゆきむらとさすけがさけんだのが聞こえて、手をのばしてみたけどつかむことはできなかったんだ。
ゆきむら!っておれもよんだつもりだったけど、その声もきっとうまく出せてねぇ。
雨ごいどころじゃなくなっちまって。
とにかく足とか手とかをばたつかせてた。


するとな、ひょいって。
下からひっぱられたんだ。


「な…なんだ…?」


そしたらどんどん体が上にむかってすすんでいった。


おれが空をとぶみたいなかんじだ。
ふわり、ふわりってな。
息もくるしくなくなって。


「う…?」


うでをひっぱてんのはだれだ?
たしかにゆきむらとさすけと、おれしかいなかったのに。
きらきら光る水の中で上をみあげた。


「あ…」


あれは。
そこにいいたのは男のひとだ。


ゆきむら達とにたような背かっこうの。
けれどみなもにうすく映るかげは、うわさにきくりゅうのかげ。
ひとかたの向こうに、大きなりゅうのかげ。


だからきっとこの男のひとは。


「りゅうじんさま!!」
「Ahー?」
「りゅうじんさまだろ!?」


なぁなぁ。
ぜったいそうだ。


水の中でこんなに自由にいられるのはりゅうじんさましかいねぇ。
でもりゅうじんさまはおれを見下ろしたまま、じっとだまったまんまで。
ちょっとふあんになってじしんが無くなった。


だからもう一回「りゅうじんさま」って呼んだんだ。


「りゅうじんさまじゃ…ねぇのか…?」


そしたらな。


「…ふん、賢い奴は嫌いじゃねぇぜ?」


って。
すっげぇかっこうよく笑ったりゅうじんさまは、おれをだきあげて。
そのまま水の上までつれていってくれた。


ほら!
やっぱりりゅうじんさまだ!!

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