雨ごいをしてたらな。 足がもつれちまって。 そのままどぼん!っていずみの中に落ちたんだ。
おれ、今までおよいだことなんかなくって。 水の中にはいるのもはじめてで。 うまく動けなくなってすっげぇびっくりした。
息ができねぇんだぞ。 体だってうまくうごかせねぇ。
ゆきむらとさすけがさけんだのが聞こえて、手をのばしてみたけどつかむことはできなかったんだ。 ゆきむら!っておれもよんだつもりだったけど、その声もきっとうまく出せてねぇ。 雨ごいどころじゃなくなっちまって。 とにかく足とか手とかをばたつかせてた。
するとな、ひょいって。 下からひっぱられたんだ。
「な…なんだ…?」
そしたらどんどん体が上にむかってすすんでいった。
おれが空をとぶみたいなかんじだ。 ふわり、ふわりってな。 息もくるしくなくなって。
「う…?」
うでをひっぱてんのはだれだ? たしかにゆきむらとさすけと、おれしかいなかったのに。 きらきら光る水の中で上をみあげた。
「あ…」
あれは。 そこにいいたのは男のひとだ。
ゆきむら達とにたような背かっこうの。 けれどみなもにうすく映るかげは、うわさにきくりゅうのかげ。 ひとかたの向こうに、大きなりゅうのかげ。
だからきっとこの男のひとは。
「りゅうじんさま!!」 「Ahー?」 「りゅうじんさまだろ!?」
なぁなぁ。 ぜったいそうだ。
水の中でこんなに自由にいられるのはりゅうじんさましかいねぇ。 でもりゅうじんさまはおれを見下ろしたまま、じっとだまったまんまで。 ちょっとふあんになってじしんが無くなった。
だからもう一回「りゅうじんさま」って呼んだんだ。
「りゅうじんさまじゃ…ねぇのか…?」
そしたらな。
「…ふん、賢い奴は嫌いじゃねぇぜ?」
って。 すっげぇかっこうよく笑ったりゅうじんさまは、おれをだきあげて。 そのまま水の上までつれていってくれた。
ほら! やっぱりりゅうじんさまだ!!
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