それから「行ってきます」ってかみさまに手をふってお社から森の中にやってきたんだ。 森はいつもどおり気持ちがいい。 風と匂いが最高だ。 おれははなうたを歌いながらあるいてんだけどな、何でかゆきむらとさすけもついてきてる。
「ゆきむら。」 「何でござるか?」 「…何でついてくるんだ?」 「…領地の検分にござる。」 「……ふうん?」
さっきから何度も同じやりとりをしてるけど、ゆきむらはおれの後ろをぴったりくっついたままだ。 けんぶんって、何かちょうさしたりすんじゃねぇのか? 別におれじゃましたりしねぇのに。
「なぁ、さすけ。」 「なぁに?」 「ゆきむらといっしょに、しごとしてきていいんだぞ?」
おれは一人でもだいじょうぶだ。
「……」
ぴくり、と動いた花の耳と。 きょろりと見上げてくる無垢な目に。 まぁーったくこの子は全然分かってないんだから!と、佐助は思わず遠くを見つめてしまった。
一人で森を歩かせるのが心配だとか。 あの神様とやらがいけ好かないだとか。 狐と龍神なんかが簡単に疎通できたりするのかだとか。 そもそも龍神何かが本当にいるのか、とか。 理由は腐るほどあるが、それに全く気付きもしない花ちゃんがもどかしかった。
「…、」 「さすけ?」 「……さぁー、いそがなくっちゃ日が暮れるよー。」 「しんぱいしてやってるのに!」
こっちの台詞だよまったく。
「ふらふら歩いてトンビに攫われても知らないよー。」 「!いなりを何だとおもってんださすけ!!」 「可愛い子狐ちゃんでしょー。」 「きつねじゃねぇいなりだ!!」 「花は可愛いぞ?」 「おれはかっこういいいなりなんだ!!」
トンビどころかカラスでも太刀打ちできそうにないけどね。
稲荷と神様
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やっとこ次は筆頭です。 筆頭は竜神様セッティングです。
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