03



「あ。」


朝から厨にこもり、新しい兵糧の研究をしていたら廊下からとたとたとたと可愛らしい足音が聞こえてきた。


もしかしなくてもあれは真樹緒で。
何だかとても楽しそうだけどどうしたんだろう。
首を捻り、手についた蕎麦粉を叩き落とすと同時に厨の扉が開いて「おシゲちゃん!」と。
いつもの笑顔で真樹緒が飛びついてきた。


最近足音だけで真樹緒かそうじゃないかが分かってきて、嬉しいんだかどんだけなんだかたまに自分が怖くてやるせなくなるおシゲちゃんだよ。
ちなみに足音が分かるのは梵と小十郎もだけどね。
風魔は言わずもがなだ。


「はいはい、今日はどうしたの。」
「ぬふふー。」


一体何をたくらんでるの。
振り返って笑えば半纏の袖を振りながら楽しそうに。
「おシゲちゃんおシゲちゃん」と真樹緒が俺の周りを飛び回る。


ああ、この半纏今朝出来上がったばかりなんだ。
真樹緒と梵と小十郎、そして鴨田さんと風魔、もちろん俺もお揃いで。
ほら最近急に寒くなってきたからさ。
冬が来る前に作っとこうと思ってねー。
真樹緒は凄く喜んでくれて、朝からずっと着てくれてるんだよ。


「ぶも。」
「ああ、そうだね。」


鴨田さんもね。


「(…)」
「まさかお前が着てくれるとは思わなかったけど。」


よく似合ってるよ。


「あったかいんなー。」
「ぶもっ!」
「(こくこく)」


真樹緒の頭からひょっこり顔を出した鴨の子は、威勢よく一つ鳴いてまた真樹緒の髪に潜っていった。
風魔は何だか頬を赤くして頷いてくれた。
相変わらず仲がいい事。
おシゲちゃん思わず頬が緩んじゃうじゃない。


ほんとうもう、何だろうこれ。
ちょっと照れくさい。


「で。」
「ぬ?」
「今日はどうしたの?」


照れくささを隠す訳じゃあないけれど、真樹緒の頭を撫でて。
どんな楽しいことを思いついてここまで走ってきたのと笑う。
外に行ってたのは知ってるけど、梵の所には行かなかったの。
ちょっと頬っぺたも赤くなってるじゃない。


「やぁ、あんな!」


そうそうおシゲちゃんお誘いに来てん!
政宗様のとこには行ったよ。
でもまだお仕事終わってなかってん。
ほんでな、ほんでな、政宗さまがお仕事終わったらもみじがりやねんで!!


「紅葉狩り?」
「うぃうぃ。」
「可愛い顔しちゃって。」


真樹緒の話によれば。
どうやらさっき外に行っていたのは落ち葉や芒、木の実なんかを拾いに行っていたみたいで。
そんな色とりどりの「秋」を梵に見せた所、裏の青葉山の紅葉が綺麗だよって話になったらしい。


ふうん。
皆を誘って紅葉狩り。
梵の机には山ほどの書状が乗っていたはずだけどあれどうなるんだろう。
小十郎が黙ってるはずが無いようなもんだけど。


「半分終わったら行ってもええねんて。」
「半分?」
「はんぶん。」


こじゅさんにお願いしたん。
俺、もみじがり行きたいって。
ほんなら政宗様のお仕事半分終わったら行ってもええってゆうてくれたん。


「あらまぁ。」


相変わらず甘いこと。
小十郎に、お前にだけは言われたく無いと苦虫を噛み潰したような顔をされそうな事を思いながら笑う。
なら梵は今政務の真っ最中って訳だ。


「がんばってーってゆうてきたで!」
「ぶも!」
「(こくり)」
「あっはっは!」


不貞腐れる梵の顔が目に浮かぶよ。


それでも。
きっと真樹緒のために驚く程の速さでやってのけるんだろう。
本当単純なんだから。
本当溺愛なんだから。


「やからおシゲちゃん誘いにきてん。」


いこー。
もみじがりいこー。
ほらほら笑ってやんで。


腰に巻きつく真樹緒にふにゃりとやたら緩んだ顔で見上げられては敵わない。
はいはいどこでもお供しますよ。
甘さだったら負けないよ。
伊達にお母さんはやってないよ。


ああでも真樹緒。
そういう事は早く言ってもらわないと。


「ぬ?」

「ぶも?」

お母さんはお弁当の用意とか色々あるんだよ。

「おべんとう!!」


もうすぐ出るんだったら山に着くのは昼過ぎで、お腹すくでしょう。
せっかくだから紅葉を見ながら食べるのもいいんじゃない。
言えば真樹緒の目が大きく輝いた。
正直だね。


「そう、お弁当。」


うーん。
でも何があるかな。
お米は炊けてるみたいけど他に何かあっただろうか。
こうなったら全部おにぎりしてもいいかもしれない。


「おにぎり?」
「一緒に作る?」
「つくる!!」


まだ腰に巻きついていた真樹緒の額に自分のをくっつけてじゃれてみる。


お仕事頑張ってる梵のために。
それに付き合ってる小十郎のために。
楽しい紅葉狩りのために。
おいしいお弁当を作ってあげようか。


「こーちゃんもいっしょに作ってもいい?」
「頼もしいね。」


いいよ。
でもその手甲は取っておきなさいね。
食べ物触るんだから。


「(こくこく)」


張り切ってる真樹緒と風魔に笑って米と水と塩を用意する。


さぁさぁこっちおいで。
おにぎり作るよ。
呼べば二人がちょろちょろと後を着いてきて。


うーん。
最近、本当に俺お母さんだ。
息子達が可愛くてどうしよう。


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おしげちゃんと(笑)
おしげちゃんは意外と小太郎さんの事を気に入っているといいいかと。
キネマ主と一緒にいるのを見て癒されているのですきっと。

次回はおにぎり持ってやっとこお山へでかけます!



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