「政宗様ー!」
すっぱんと襖を開いて部屋に飛び込んだ。 さっきまでこーちゃんと二人でうずくまってた部屋には、政宗様が俺に声をかけてくれた時の格好のまぴしりと固まってて。 そのちょっぴり悲しげな背中にどんっと抱きついた。
「政宗様!政宗様!」
動いて政宗様! しっかり政宗様! ごめんなごめんな嫌い違うで! 俺政宗様の事大好きやから!
「政宗様!」 「あ、…Ahー…?」
ゆらり、って振り向いてくれた政宗様の目はうつろ。 ぬう… どないしよう。 政宗様の目がちょっと変。
やぁ、政宗様ちゃんと俺を見て。 俺、政宗様に謝りたいん。 嫌いってゆうてもたやろう? あれ嘘やで。 お腹空いてたし、寂しかったし、何てゆうん?勢い?やからほんまに思ってへんの。 やからこっち見て!
「政宗様!」 「…真樹緒…?」 「うい!」 「……」 「政宗様!」 「……真樹緒!?」
さっきからそう言うてるん!
やぁ、もうやっと俺を見てくれた。 目ぇ見開いて瞬き一杯して政宗様が「真樹緒」ってまた俺の名前を呼ぶ。
政宗様、俺ここにおるよ。 さっきはごめんな。 嫌いってゆうてごめんな。 そんなんほんまは思ってへんからね。
「ごめんな、政宗様。」
政宗様の首にぎゅうって抱きついて顔をすりすり。 大好きやでってすりすり。
「何でお前が謝る…!」 「ぬ?」
ほんなら眉間にシワ寄せちゃった政宗様が俺の体をべりっと剥がした。 やぁ何するん政宗様。 俺もうちょっとくっついてたい。 やって今日は全然一緒におれやんかったやんか。
ばたばた手と足で暴れたらぎゅうって思いっきり抱き締められた。 ぬぅ。 政宗様これ結構苦しいかも。 くっついてたいゆうたけど苦しいかも。
「真樹緒。」 「ぬ?」 「約束を違えたのは俺だ。」
お前が謝る必要は無い。 己の事にかまけ、あまつさえお前を泣かせるなど。
「…悪かった。」
お前の涙を見た時、心の臓が鷲掴まれる思いだった。 息が止まり声も出なかった。 体も動かず己が石にでもなったように。
お前に、嫌いだと言われた時。 冷たいものが背中を流れる様な心地に目の前が真っ暗になった。
己がこんなにも阿呆だと、己に腹が立った。
政宗様が小さい声で呟いた。 ちょっと震えてて耳がくすぐったい。 やぁやぁ政宗様。 そんな事言わんとって。
「政宗様。」
聞いて。 聞いて政宗様。 謝らんとってぇな。 俺の方がごめんなさい。 政宗様がお客様来て忙しいの分かってたのに、構ってもらわれへんからって拗ねてもうて。
「あんな、」
政宗様の顔を覗きこんだら「どうした」って優しく頭を撫でてくれる。 でもそれが何だか泣いてしまいそうな笑顔で、俺の胸がぐって詰まる。 さっきまで苦しいぐらいぎゅっとしてくれてた政宗様の手が緩んで、何だかちょっと不安になった。
「俺、やきもち焼いてたん。」 「…真樹緒?」 「政宗様のお父さんに。」
やぁーって、いっつも政宗様とおるのは俺やったのにやで、急にやってきた輝宗様が政宗様を取ってしまうんやもん。 俺もうもやもやむかむか大変やったん。
でもやぁ、それってな。
「俺が政宗様の事大好きやからやねんで。」
ゆうたら政宗様がびっくりしたような顔で俺を見た。
へへ。 やから一緒にごはん食べてくれやんくって腹立ったし、せっかく来てくれた政宗様にあんな事ゆうてもうて。 ぬぅー…ほんまはそんな事思ってほんの。 いっつも政宗様とおりたいん。
えと、ほんで、やから。
「仲直り、しよお?」
笑って政宗様に抱きついた。 さー政宗様仲直り。 ちゃんと俺をぎゅっとしつ真樹緒って呼んで。 いつもみたいに頭を撫でて。 それからちゅうも。 いっぱいいっぱい、政宗様にやってもらいたいことあるん。
俺も政宗様もごめんなさいしたで。 ほら、もう仲直り!
「真樹緒…お前…」 「ぬふふ、政宗様はやく。」
ぎゅうして、頭撫でて、ちゅうして。 笑ったらやっと政宗様もいつものイケメンな笑顔で。
「お前には…本当に敵わねぇよ…」
しっかり俺の体をぎゅって抱き締めてくれた。 大きな手で頭を撫でてくれた。 もう、耳の後ろはあかんていつもゆうてるのに。
「真樹緒、」 「うん?もうごめんは言うたらあかんよ。」 「ああ。」
くすくす笑う政宗様とお鼻をすりすり。 やっと二人でお話しできたねぇってすりすり。 じぃっと目を合わせてまた笑う。
「Thanks sweet」 「やぁ、こちょばい。」
政宗様がおでこにちゅう。 鼻先にもちゅう。 ゆっくりほっぺにもちゅうされて。
「政宗様、」 「…Dear mine」 「ん、う…」
最後に唇をちゅって吸われて抱き締められた。 真樹緒、真樹緒、って名前呼ばれて幸せ。 ちゅうされて幸せ。
「好きだぜ」「sweet」「愛してる」「thanks」沢山の言葉と一緒に政宗様のちゅうが降ってくる。 それに俺はいっこずつ「俺も」「ほんなら政宗様ははにー?」「どういたしまして」「ありがとう」ってお返事して、いつも通り。
もうやきもちなんかこりごりなん。 喧嘩もこりごりなん。 政宗様とお話できやんのは嫌やもん。
ぎゅうぎゅう政宗様に抱きついて。 今度は政宗様に「苦しいだろうが」って言われるまで抱きついて。
今日はずっとくっつけやんかった分、このままひっつき虫で暫く甘えとこうと思います!
終!
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