01



ばたばたと廊下から聞こえる足音で目が覚めた。


「ぬー…」


やぁ、覚めたってゆうても頭はまだぼーってしてるんやけどね。
お布団の中でもぞもぞしたい気分なんやけどね。
ほら、ぬくもったお布団って出るのにそれなりの勇気いるやん。


ごろんと寝返りをうって、二度寝の準備は万端です。
真樹緒ですこんにちは!


………、おはようございます?
でも俺まだ寝る気満々なん。


ええよね。
もうちょっとぐらいええよね。
やってまだお外薄暗いもん。横の政宗様もまだ静かやしー。


へへ…
一緒に寝るん。
政宗様と。
めさめさあったかいんやから!


「……う?」


……
………


あれ?
でもちょっと待って。


政宗様?


「ぬぅ…?」


政宗様ー?
あれー?


「………おらん…」


大変。
政宗様おらんで。


やぁやぁ、寝る時はおったのに。
ほら、昨日の夜。
俺政宗様のお布団に潜り込んで、ぎゅーってされて寝たんやで。


最近寒いし。
毎日くっついて寝てるん。
ほんで政宗様が絵いっぱい描いてあるご本読んでくれたりしてな。
知らん間に俺寝てもうてるねん。


そんな感じで昨日も寝たのにやー。
今見たら政宗様がおらんの。


「ぬーん…」


あれー?
政宗様が寝てたとこをペシペシ叩いてみた。
でもそこはひんやり。


あれやぁ。
政宗様先に起きてしまってるやん。いつもは俺が起きるまで横におってくれるのに。


うーん。
お仕事やろうか。
………こんな朝早くに?
やぁ、でも何や廊下が騒がしいん。


「…」


廊下が見える方へ寝返りごろん。
外の様子をうかがってみる。
二度寝する気満々やったのに目ぇ冴えてもうたしねー。


目の前の障子に映る影は多分女中さんらで、行ったり来たり忙しそうに動いてる。
むむー…
何かいつもと違う感じ。


「よいしょ。」


むっくり起き上がってきょろきょろ。
やっぱり薄暗い部屋には俺しかおらんし。
このまま一人で寝ててもええねんけど、


「……」


さみしいやん。
一人こんな広いお布団の中におるんさみしいやん。
目ぇ覚めてもうたし。
きゅるるっと程好くお腹もすいてきたし。


「起きるん!」


お布団を片付けてね。
枕も二つ並べて置いて。
そおっと障子開けたら目の前を足がバタバタ通り過ぎた。


ぬー…
ほんまに忙しそう。


「政宗様どこやろー。」


そろそろお外も明るくなってきたん。


道場やろか。
厩やろうか。
もしかして厨?
ほら政宗様たまにお料理もするから。


廊下を忙しそうに歩いてる女中さんらに聞いてもええんやけど、やっぱり忙しそうでなー。


「おはようございます!」って挨拶するのが精一杯です!
「あら早いのねー。」なんて頭撫でられながら政宗様捜索やで!


「まずは道場かなー。」


いつも朝から鍛練してるん政宗様。
木刀ぶんぶんふるってな。
たまにそこへこじゅさんも入ったりしてね。
俺はそんな二人を見てたり、ご飯の用意したりするんやで。


その後の朝ごはんは皆一緒!
こじゅさんとー、政宗様とー、もちろんおシゲちゃんもね!


「あれ真樹緒?」
「ぬ?」
「今日はやけに早起きだね。」
「おシゲちゃん!」


やぁやぁ、噂をしてたらおシゲちゃんが!
廊下の角からひょっこりおシゲちゃんが!
何とびっくりするぐらいの大荷物で現れました。


……すごい荷物ー。


片手で着物一杯かついで、片手で何でかお椀とか食器?を一杯持ってるん。


ぬ?
どんな組み合わせ?


「今日はちょっとお客様がいらっしゃるんだよ。」

「お客様?」


そのお客様のお召し物と、倉の中に眠ってた陶磁器を運んでたところ。
おもてなしはこういうところから始まってるんだよ。
間違ってもおざなりな事は出来ないお方でね。


「だから今日は忙しくて構ってあげられないの。」


ごめんね。
そう言うておシゲちゃんは申し訳なさそうに笑った。


「へー…」


お客様。
誰やろうお客様。
皆がこれだけ忙しそうやから凄い人なんやろうか。
おシゲちゃんの様子やと、ゆっきーとかさっちゃんやないみたいやし。


むむむ。
俺の知らん人?


「いらっしゃったらきっとお目通りがかなうよ。」

「そお?」

「うん。」


だからそれまで良い子でね。
ご飯も一緒に食べれそうにないから梵達と食べるんだよ。


奥州のお母さんは俺の頭を撫でようとして両手が塞がってたもんやからおでこ同士でぐりぐり。
何か用があったら近くの女中にお願いしてね。
いい?っておシゲちゃんの目が聞いてくる。
やから俺も瞬きぱちぱちしてお返事。


ほら、おでこくっついてるからね!


「政宗様も忙しい?」
「梵?」
「朝起きたらお隣におらんかったん。」


いっつもは俺が起きるまでおってくれるのにやぁ。
今日は一人で起きてんで。
お布団がでっかくて広くて嫌になっちゃうわ!
もちろんおはようのちゅうもなかったん。
ほんまは朝、ちゅってしてから起きるねんで。


「あらお熱い事。」
「ぬふー。らぶらぶなん。」


やぁ、でもおシゲちゃんともらぶらぶやんなぁ?俺。
こじゅさんもこーちゃんも。
皆でらぶらぶなん。


「らぶらぶやろう?」
「うん、らぶらぶだよね。」


おシゲちゃんが笑いながら俺のおでこにちゅう。
可愛いおでこだねぇってちゅう。
ほら、らぶらぶ。


「梵なら謁見の準備で大広間にいるよ。」

「えっけん…?」

「ほら、お客様。」

「あ、」


そっかー。
そっかー。
お客様をお迎えする用意してるんや。


ほんなら大広間に行ったら政宗様に会える?
忙しいんやったら俺もお手伝いするし。


ぬうぬう。
お手伝い。
頑張るん。


……
…………よし!


「おシゲちゃん!」
「うん?」
「俺、大広間行ってきます!」


政宗様のお手伝いしてきます!
らぶらぶしてきます!


止めないでねー。
止まらないからー。
行ってきます!!


「あ、ちょっと真樹緒!」


おシゲちゃんの声が聞こえるけど気にしない!
やって今日は一回も政宗様見てへんねんもん。
大広間目指してダッシュです!


あの広いお部屋は俺が一番始めに行ったとこやから覚えてるん。
すぐに政宗様を見つけてみせるー!!




「…やれやれ。」



ほんっと、梵の事が大好きなんだから。



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