小さい子供二人と。 でっかい大人一人の面倒を見るのがこんなに疲れるものだとは思わなかった。
「あー!!さすけ!!」 「忍者のにーさん!!」 「花!慶次!待つでござる!」
山ほど戦利品が入った籠をしょって走っていく三人の背中を見ながら、一体自分は何しに下りてきたんだっけと自分に問い返してしまうぐらい駒は疲れていた。
畑に行ったまではよかった。 いざ掘るとなった矢先、何を思ったか人間の少年はイモでなく穴を掘り。 塹壕かと見まごうばかりの穴を畑につくってくれた。 そしてそれを稲荷がすごいと褒めたものだから赤い方が妙なやる気を出し畑に穴が増えた。 イモを掘りなさいと静かに声を荒げれば「競争だ!」と加減を知らない三人はぼこぼことイモを掘り上げ畑中のイモを掘ってしまった。
これで神社に帰れるかと思えば山に入り。
「今度は栗拾いぞ。」
と確か元就様の声が聞こえてきたのまでは覚えている。 もう何からどうすればいいのか分からない。 栗やら栗じゃないものまで拾い始めた子供と元就様が籠を一杯にしてやっとお開きになった。
「………てめぇはよくやった。」 「……」
ぽん、と龍神から渡された餅は温かかった。 私にしてみれば、何も言わず勝手知ったる風に餅を焼くあなた方に感動です。 よく大人しく餅を焼いていましたね。
「さすけ!もち!!もちはやけたか!?」
「我はきな粉を所望する。」
「忍者のにーさん!!俺も餅!!でっけぇの!」
「俺はその海苔がいいぞ佐助。」
「ああもう分かったからちょっと静かにしなさい!!」
赤い方の背中にへばりついてる稲荷と子供は醤油の匂いにつられて籠を下ろしてすぐに駆け出して行った。 ちなみに元就様も駆け出していって稲荷と子供にかぶさるように人間の背中にへばりついた。 本当にあなたた神様ですか、と小一時間考えたい気持ちで一杯です。
「平和で結構じゃねぇか。」 「そういう問題じゃないんですけど。」
神界での将来に関わったりしたらどうしてくれますか。
遠い目をしてみれば立ち上がった赤い方の背中に未だへばりついている三人が見えました。 餅を寄越せと三人そろってかしましい。 それでもあの忍の方の口元が緩んでいるのが、この龍神の言う平和なのだろうか。 なぜか自分もそれにつられたりしてしまうのだけれど。
「さすけ!!もちがのびた!!」
「餅だからね。」
「忍者のにーさん!俺の餅がちいさいぜ!!」
「一つで済まないんだからそれで十分だよ。」
「きな粉に甘みが足りぬ。」
「我侭言わないの」
「佐助!おかわりだ!」
「ちょ、旦那海苔ついてるよ!」
そんな光景に体のどこかが温かくなるのは私も大概ここに染まってきているのかもしれない。
「見よ花この伸びを。」 「かみさますごい!!」 「すっげー!!」 「おれもやる!!」 「俺も負けぬ!!」 「食べ物で遊ぶんじゃありません!!」
ぺちんぺちんと、小気味いい音が響くのも最近ではすっかり茶飯事です。
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