01




秋も中旬。
田んぼの稲穂が首を垂れて、辺りは一面に金色が広がっていた。
その上を赤とんぼが飛んでいるのが何とも秋らしい。
真ん中に佇む案山子にはすずめが三匹羽を休めている。
森の木々も色づきはじめ、山は赤や黄色と鮮やかだ。


今年もあけびやノブドウ、栗などの実りの豊年で満足げにその尻尾を揺らした稲荷は今、村の子供けいじと一緒に田んぼと田んぼの間のあぜ道をぴょこぴょこと歩いていた。
稲荷の身の丈ほどもある稲穂は花の大きな耳をくすぐる。
目指すのは自分の住まう神社だ。


「おいなり様、すげぇ嬉しそうだねぇ。」
「だいしゅうかくだからな!!」


あのな!
きょうはけいじの村でもち投げがあったんだ!
村でいっちばん長生きのじいちゃんの家のものみやぐらで。
おれはいなりだから「ごこくほうじょう」のお礼にってけいじの村のみんなによばれたんだぞ。


あ、そうそう。
もち投げってのは、今年とれた作もつに「ありがとう」ってかんしゃして、それを高いとこから投げる小さなまつりみたいなもんだ。
みんなでそれを拾ったりとんでくるのを受けとめたりして騒ぐのがおもしろい。


でもさくもつが実ったのはみんなの力なのにな。
けいじの村のみんなはいいやつらばっかりだ。


「でもこんなに一杯のモチ、おいなり様食いきれるかい?」

「?…もちってくえるのか?」


白くてきれいな石じゃねぇのか?
これ。


「………」
「………」
「………」
「………」


「……食った事ねぇの?」
「みたのもはじめてだ!!」


白くって、丸くって、なんだかつやつやしてる。
はなをちかづけてみたらちょっと米のにおいがした。
なるほど。
たしかにくいものっぽいな!!


「んー……」
「けいじ?」
「…よし!!」
「!?」


な、なんだけいじ。
お前はいつもとうとつすぎていけねぇ。
まつもなやんでたぞ。
たまにけいじが何かんがえてるのかわからないのです、って。


「おいなり様!!」

「う…うん?」

「神様とー、赤いにーさんとー、忍者のにーさんとー、龍のおっさん呼んでモチ食おうぜ!!」

「うわ…!!」


けいじがおれの手をとってはしりだした。
ちょっとまて。
足がもつれちまう!


「けいじ!!」
「おそいぜおいなり様!!」
「ちょ…」


もちの入ったかごをしょってたおれは、いつもどおり走れなくて。
でもけいじだってりょう手いっぱいに干菓子やらもちやらもってんだぞ。
おれよりたいりょうだ。
なのに何でお前はそんなに足がはやいんだ…!


「ほら、おいなり様つかまってろ!」
「けいじ!?」


おれとそう背たけがかわらねぇのに、けいじがおれをせおってそして。


「とばすぞーー!!!」
きゅうぅぅぅぅぅぅっ!!!!


ぜんそくりょくでかけだした。

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