「慶次。」 「どうした?神様。」 「お前は強くなりたいのか。」 「へ?」
撫でる手は止めず、神様サンが聞いた。
盗み聞きするつもりは無いけれど近くにいると自然に聞こえてきて、何かと剣やら体術やらを教えている身としては気になる話題ではある。 ちらりと隣を見れば旦那も少し真剣な顔で慶次を見ていた。
ああ、まぁそりゃあねぇ。 最近慶次はやたらと旦那に修行を強請っているし。 色々幼いながらも思う所があるのかねぇ。 小さく呟けばくっと隣の龍神が笑う。
「…何、」 「いいや?」
鼻についたから横目で睨んでやった。
「俺?」 「最近稽古に励んでいるだろう。」 「俺かーーー」
うーん、うーん、と腕を組んで首を振っている慶次はやはりまだ子供だ。 強さや力に対して興味は持てど恐れている節は無い。 将来それを身につけて一体どうしたいのか。 「俺に剣を教えてくれよ!」と言った子供の真意は未だ分からない。
「俺さぁ、神様。」 「うむ。」 「おきつね様を守りてーんだよ!」 「、花を?」
意外な答えに少し肩が揺れた。 隣を見上げると龍神でさえ少し表情を崩している。
「今は兄さん達とか龍神様とか、みんなが守ってくれてるけどさー。」
「…うむ」
「龍のおっさんもいい歳だし、赤いお兄さんだって忍のにーさんだってそろそろおっさんだし、」
「Ahー?」
「慶次、ちょっとどういう事。」
「妙齢なのは政宗殿のみであるぞ慶次!!」
「違うって言ってんだろうがぁ真田幸村ぁぁ!!」
「間違いでは無いな。」
そこは否定しなよアンタ。
「神様はずっと若いけど、忙しいだろ?」
ちょっと、慶次。 お世辞なんていつ覚えたの。 世渡りばっかり上手くなったって仕方ないんだよ。
「それ故強さを求めるか…」
「おう!俺が強くなって、赤いにーさんも忍びのにーさんも龍のおっさんもおきつね様も、もちろん神様達も守ってやるよ!!」
「くく…頼もしい事よ。」
… ……
「はぁ…」
楽しげにこちらを向いた神様サンの目がちょっと癪に障る。 何だか見透かされているみたいで。
頼もしい? 全くだ。
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