02



手加減の一切無い一撃は、いっそすがすがしい程の音を響かせて勝負がついた。


「引き小手!!!」
「いってぇぇぇ!!!」


慶次の持っていた木刀は宙を舞い、くるくる回ってどすりと地面に突き刺さる。
武器を無くし挙句の果てにはその隙を突かれて慶次はぐうの音も出ない。


一番初めの胴が決まっていれば、自分が優位に立てたはずだと思う。
未だ小さい体格やら体重のせいで上から木刀を振り下ろされたならば自分に勝ち目は無い。
力の差なんて歴然だ。
それならば逆にそれを活かして懐に入り込めれば、一本とはいかずとも一泡吹かせるぐらいはできたはずなのに。


「…足使うとかずるいよー…」
「真剣勝負に狡いも何もないんだよー。」
「最後の一撃は見事だったぞ!!」


憎らしいほどに満足げな幸村に慶次は顔をくしゃりと歪めた。
とぼとぼと自分の木刀を拾いに行って「あーあ!!」と空を仰ぐ。


折角。
折角大好きなおいなり様に格好いいところを見せれると思ったのに!と見て分かるほどに慶次が頬を膨らませれば「甘いんだよ」と、にやにやと傍観を決め込んでいた龍神に頭を撫でられる。


「でも俺、いいとこいってたよね?」

「自分に満足するとそれ以上上には行けねぇぜ。」


ちぇーーーー!!!
ちょっとくらい。
ちょーーっとぐらい褒めてくれたっていいのにさ!!
俺すっげ頑張ってんのに。
素振りだって毎日してるよ。
筋肉だってけっこーついてきたと思うし。


「…その細っこい腕のどこに筋肉があるんだよ。」
「えー?ない?こことか。」


むん!って右手を曲げて力を入れてみる。
ほら、ちょっと膨らんでる!!
ぷるぷるしてるし。
これ絶対力こぶだよ!


「………おら。」


むにゅ。


「ああーー!!何すんだよ龍のおっさん!!」
「そんな簡単に潰れる筋肉ないねぇ。」
「笑うな忍のにーさん!!!」
「慶次はこれからでござるよ。」
「何か腹立つ!」


自分達がむきむきだからって!!
おとなげねーんだから!!

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