04




森でであったこぐまはな、まっくろでちっさくて、もふもふしてかわいいんだ!
おれの体のはんぶんくらいしかねぇこぐまはまいごみたいで。
おれとけいじでかかさまをさがしてやるんだぞ!!
やっぱり子どもはかかさまといっしょにいるのが一ばんだからな。


「あ!お稲荷さま!!」
「どうしたけいじ?」
「がーう?」
「ほら、木の実だ。」


慶次が差し出したのは赤く綺麗に熟れたフユイチゴだ。
みずみずしい赤い実は食べることが出来る。


雪の下、落ち葉の間に見える葉とつるを見つけた慶次はざくざくとそこを掘り、たくさんのフユイチゴを花に差し出した。


「お稲荷さま、あーん。」
「あー、」


ひょいと花の子さな口にフユイチゴを放り込んだ慶次は、足元で同じように口をあけている子ぐまにもフユイチゴを食べさせてやる。
もぐもぐと口を動かして「あまい!」と目をきらきらさせた花と「がうがう」と立ち上がって自分の手を叩く子ぐまに何だか照れて鼻の頭を擦った。


「へへ!」


二人手を繋いで、子熊を足になつかせながら森を歩く。
途中子さな沢で口を潤し、花が持っていた干し柿で腹を満たした。


ひらけた雪の原で子熊が駆け出せばそれを追って二人も走る。
追いかけっこが始まってしまえば子熊と子供、小さな稲荷はもう夢中になって走る。
雪を蹴って転んで回って走る走る。


走り回ってもうだめだ!!と花が雪の上に寝転べば慶次と子熊がその隣に寝そべった。


「冬なのにあちーなぁお稲荷さま!!」

おまえらはたいりょくがありすぎだ…!

「がぉう!」


見上げた空は、雪の結晶が太陽の光に反射してきらきらと光っている。
綺麗だなぁと花が慶次の方に振り向けば「なー」と目が合ってちょっと幸せを感じた。


「きゅう。」
「お稲荷さま?」
「なんでもないぞ、」
「んんー?」


もう一度なんでもないぞと言うと稲荷はそのままころころと転がる。
雪の上をころころ転がる花の後を追って、子熊も転がった。
「えー待ってよー!」なんて言いながら慶次も転がる。


耳に顔に、鼻に雪をたくさんつけて二人と一匹は元気だ。
ごーろごーろと転がってゴツンと。


「いて。」
「いて。」
「がう。」


転がるままに身を任せていた二人と一匹は太い杉の木の幹にぶつかってとまった。
ぱさりと落ちてくる雪に目を瞑り、くすくすと笑い声が控えめに響く。
皆そろって鼻を付き合わせてぎゅうと引っ付きあった。


「おまえ、あったけぇなー。」
「がーお!」
「もこもこだね!」



ガサガサ
ガサガサ



「うお、お前腹にかっこいー模様あるんだね!」

「ほんとだすげぇ!」

「うがー。」



ガサガサ
ガサガサ



「あれ?」

「どうしたのお稲荷さま。」

おれ、このもようどっかで見たことあんぞ…

「がが?」

「しかもけっこうさいきん…」


ほら、なんかすげぇ見たことあるんだ。
いつだったっけなぁ。
この黒いけに白のけで、みかづきみたいになってるの。


えーと。
えーと。


「お稲荷さま?」
「がう?」



ガサガサ
ガサガサ



ガサッ


ガガー


!?
あ、クマだ。
「ひょおっ!」


そうだ。
このもようは。
ずっとまえからおいかけられてるくまさんにあるもようじゃねぇか…!



稲荷と森のくまさん



「がうー。」
「え?こいつお前のかーちゃんかい?」
「ガガ。」
「お稲荷さまー。」
「……」


……
………


「お稲荷さま、お稲荷さま、」
は!!


「あ、おきた。こいつ、子ぐまのかーちゃんだってさ。」

「……は?」

「がう。」

「……かかさま…?」

「ガォ。」


……
………


おまえ、おんなだったのか…!!!

「ガウ。」

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