03




「な、なんだ…」
「大丈夫かい?お稲荷さまー。」
「きゅう。けいじはへいきか?」
「なんとかー。」


お稲荷さまと走ってたらさ、雪のつもったしげみから何か黒いかたまりが出てきたんだ。
俺、おもいっきり走ってたから避けられなくってさー。
思わず飛び上がったら、お稲荷さまといっしょにごろごろ転がっちまったよ!
まぁ雪の上だったからそんなにいたくなかったんだけどね!!


耳にかかった雪をはらってるお稲荷さまを手伝いながら周りを見る。
最近おれ、ちょっとなら気配読めるようになったんだよ!!
さっきの気配は、小さいやつだから多分あぶなくないはずだ。
けどお稲荷さまがびっくりしたらいけないからさ、こっそり何だか分からないあの黒いのをさがす。


気配は俺達の近くだ。
茂みを見て。
俺らの転がった後を見て。
お稲荷さまの雪はらって。


「あれ?」
「きゅ?」
「お稲荷さま。」
「どうした?けいじ。」
「しっぽ。」
「しっぽ?」


きゅ?とお稲荷さまがしっぽを動かすと、それにじゃれてた黒いかたまりが転がった。
ころんてな。


「あ、」
「お。」


そして「がう」なんて小さい体でいっちょ前にほえたのはお稲荷さまの体はんぶんくらいの黒いこぐまだった。


うっわ何こいつ!
もっさもっさして、ころころして毛玉みたいだ!!


「おまえ、まいごか?」

「がう?」

「こいつ以外くまの気配は無いよ、お稲荷さま。」


子熊を抱きかかえてその頭を撫でる花に慶次が答える。
きょろきょろ二人があたりを見回してみても、親熊の気配はまったくない。
静かな雪の森が広がっているだけだ。
その雪の上にあるのは自分と花と子熊の足跡で、どうやら本当にこの子熊は迷子のようである。


「こんなゆきのもりで、かかさまとはぐれちまったのか…」

「がーぁ!」

「どうする?お稲荷さま。」


うーんとお稲荷さまが首をかしげると子ぐまも首をかしげた。


うお。
何だい、お稲荷さま。
ちょうかわいいよ今の。


「こんなとにひとりおいとくのはしんぱいだ…」


子ぐまをぎゅっと抱いてお稲荷さまは俺をみあげた。


なんかさいきんな、お稲荷さまにこうやって見上げられると体がぎゅーってするんだよ。
ぎゅーってして、むずむずする。
むずむずした後はむしょーにお稲荷さまにくっつきたくなるんだよな。


びょうきなのかな俺。
忍の兄さんとかと龍のおっさんに聞いてみたけど、頭をぽんぽんされただけでさ。
何か俺にはまだ早いんだって!


「なぁなぁ、けいじ。」
「うお!?」
「けいじ?」
「あ?えーと、なんでもねぇよ?」


おっといけねぇいけねぇ。
今は子ぐまだよ。
まいごの子ぐまどうするか決めねぇと。


「あのな、こいつのかかさまをさがしてやりてぇんだ。」

「かーちゃんを?」

「いいか?」

「あったりまえだよ!!」

「う、わ!」


小ぐまをだっこしたお稲荷さまをだっこする。
お稲荷さまが「きゅう」って叫んで子ぐまが「がぉ!」と叫んだ。


二人とも仲いいな!
かわいいよ!!

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慶次と皆様の修行話はまた別にあったりします(笑)

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