「こーちゃーん。」 「(ふるふる)」 「むー。」
川の浅瀬まで二人で流れて、こーちゃんにひょいっと担がれながらまだ一人で泳ぐことに思いを馳せている真樹緒ですー。
ぬー。 もうちょい川におりたかったー。 泳いでみたかったー。 結構コツつかんだと思ったのにー。 じぃーって川の方見てたらこーちゃんが背中ぽんぽん、って。
「ぬ?」 「(すっ)」 「向こう?何?」
こーちゃんが川上の方指差すん。 川上に何かあったっけ? やぁ、こーちゃんと一緒に栗の木見つけたけど実がなるんは秋やねーってお話したばっかりやし。
なぁにー? こーちゃん、なぁにー? きょろ、ってこーちゃんの指の先を見た。
「あー!!」
ほんならな! 何とな!
「Hey真樹緒!!」 「政宗様――!!!」
政宗様が!! お城でお仕事してるはずの政宗様が!! しかも手に持ってるのはアイスに次ぐ夏の主役、スイカじゃありませんかー!!
「あっ、ちょっと真樹緒!やっぱりずぶ濡れじゃない!」
「あぁー!!おシゲちゃんもー!!」
やぁやぁ、何よー。 何なのよー。 みんなしてー。 俺をびっくりさせてどういうつもりー。
もー!! 嬉しいんー!!
「真樹緒、昼飯を…」 「こじゅさーん!!」
更にはこじゅさんまでー!!
ぬー! その手に持ってるのは俺の大好きな奥州の素敵米おにぎりー!
「うぬぬ…」
もう我慢の限界です! 俺、限界です。 あの素敵ゾーンに飛び込むで!
「こーちゃん!」 「(こくり)」
俺を担いだこーちゃんがしゅたって飛び上がった。 気がついたら政宗様らはすぐ目の前。 さっきまで浮いてた足がとん、って小石の上について。
「ありがとこーちゃん!」
こーちゃんのおでこにちゅう。 鼻の先っぽにもちゅう。 最近こーちゃんちゅうに慣れたみたいでな、やっても体びくってなれへんねんで。 ちっちゃく笑ってるだけなん。
可愛い!
「よし!」
こーちゃんにありがとうのちゅうが終わったら次は政宗様らですよ! 覚悟しぃやー政宗様! 素敵さぷらいずに真樹緒君のテンションは絶好調ですよ!
「政宗様―!!」 「おっと。」 「何でここにおるんー。」
政宗様に抱きついてぎゅう。 思いっきり向かっていったのにやっぱり政宗様はびくともせんくって。 片手で俺を抱き上げてしまったん!
あれやぁ。 政宗様、片手てー。 そんな軽がる嫌だわー。
「お仕事終わったん?」 「Of course.」
すごい! こじゅさん一杯書類持ってたのに! すごい!!
「過去最速であられた。」 「おお…」 「真樹緒のとこ行くんだって煩くって。」
おシゲちゃんが笑いながら俺の頭をわしわし拭いてくれた。 おおう、流石おシゲちゃん。 絶妙なわしわし具合ね。 頭気持ちいいん。
「俺?」 「会いたかったぜ?」 「ぬっ!」
俺が何?って政宗様見上げたら目ぇにちゅうされてもうてん…! しかもふいうちやで! こちょばい!
「もー。朝会うたやんー。」
ぎゅう、ってしたやん。 政宗様のさびしがり屋さんめー。
もー! 可愛いんやから!!
政宗様にぎゅー。 こーちゃんにやったように近くにある政宗様のおでこにちゅう。 俺はここにおるよ、ってちゅう。
「はいはい、いちゃつくのも良いけど。」 「Ah?」 「ぬ?」
びしょぬれじゃない真樹緒。 こっちおいで。 着替え持ってきたからご飯食べる前に着替えるんだよ。
おシゲちゃんがため息吐きながら俺の首根っこをみょーんって引っ張った。
は!! そうやお昼!! 俺朝から何にも食べやんと川来て遊んどったからものすごいヘリハラなん!!
「おシゲちゃんご飯!!」 「俺はご飯じゃありません。」
ほら、早く着替えて。 着替えないと小十郎お手製のおにぎり食べられないよ。 って言うか食べさせないよ。
笑顔が素敵なおシゲちゃん。 そしてちょびっと怖いおシゲちゃん…!!
「…さすが奥州のおかあさん…!!」
「はいはいお母さんの言う事はちゃんと聞きなさいね。」
ぬーん。
もそもそ濡れてる着物を脱いでたら、隣で政宗様とこじゅさんが笑うん。
笑わんとってやー。 やっておシゲちゃん怒ったら怖いんやもん。 お母さんはやっぱり一番怖いんやもん。 やからおとなしく着替えるんですー。
「ほら、風魔も。」 「(ぺこり)」
あ、そうやんな。 こーちゃんもびしょぬれやったもんなー。 やっぱり流石おシゲちゃん!! ありがとー。
「くく…真樹緒、」 「うぃ?」 「着替えたら飯だ。」
Come on
「ごはん!!」
こーちゃんと二人濡れてない服に着替え終わったらこじゅさんがお昼の用意してくれててな、政宗様に呼ばれたん。 お昼ごはんはこじゅさん手作りのおにぎりたくさん!! お漬物もあるで! おいしそう!! どれから食べようおいしそう!!
中身はきっと梅干となー、こんぶとなー、お野菜の刻んだやつとなー、お味噌やと思うんー。 困ったことに全部俺の好物なのですよー。 こじゅさんの手作りおにぎりー。 どうしよう!
「真樹緒、今日は俺と梵も握ったんだよ。」 「まじで!?」 「まじで。」
おおお! おシゲちゃんと政宗様の手作り! こじゅさんも手作り! めっさ贅沢なおにぎりやなぁ。 ますます迷ってしまうよー。
「ぬー。」 「こりゃぁ時間がかかりそうだ。」 「誠に。」
手ぇをうろうろさせてたら皆笑うん。
やってしゃあないやんー。 迷うねんもんー。 全部食べたいねんもんー。 でも絶対その前にお腹が限界になるから迷うんやもん!
皆に見られてるけど、まだまだ決まりそうにありません!
終
|