「てめぇ一体どこの間者だこの独眼竜に真っ向勝負とはいい度胸だAre you ready!?」 「あァァん?誰が患者だ俺は生憎ビョーキとは無縁でよオ!」
てめーこそ頭イってんじゃねぇのかどっかの誰かさんみたいにさあ!
…… ………
「ぬーん!」
お城のてっぺんが大爆発して暫く、もうもうもうもう漂う煙の中から現れたのは俺がとっても会いたかった政宗様とキリヲ君でした。 いつもの鎧はつけてへんけど、お部屋着な着物に六本の刀を通常装備の政宗様と、いつもの迷彩シャツにファーのコート、それからやっぱりミツコさんを通常装備のキリヲ君でした。 こんにちは。 なんであそこにキリヲ君と政宗様がおるんかちょっぴり頭がパニック中の真樹緒ですこんにちは!
…… ………
「まじで…!」
ていうかキリヲ君もこっちにきてたんやねまじで。 一体全体どういう事やろうちょう楽しそうやけどキリヲ君。 政宗様と戦ってて目がギラギラやけどキリヲ君。 そんなキリヲ君と戦ってる政宗様の目もちょうギラギラなんやけど! まじで…!
パニックな頭のまんま、ぼーぜんとお城を見上げる。 バランスがとりにくいはずやのにとってもすばしっこい二人はあっちに飛んだりこっちに飛んだり素敵にバトルを繰り広げてるん。 えええあれどうしよう。 俺どうしよう。 何で戦ってるんキリヲ君と政宗様。 何かとっても大きな誤解があるんちがうんキリヲ君間者やないよ政宗様!
「おらおらおらおらァ!口程にもねぇぜ!Hey guy!俺に恥をかかせんなよ!」
安心しやがれ生け捕りだ。 てめぇの知ってる事全部吐いてもらうぜ!
「あァん?後悔すんなよオ優男がァァ!」
「えええ二人ともちょっと待ってー!」
間者やないってゆうてるのに…! ぬん!
全然俺に気付いてくれない政宗様とキリヲ君はやっぱり二人で刀と鉄パイプをガンガンキンキン。 たまに刀がキリヲ君のほっぺたをかすめたり。 たまにミツコさんが政宗様のお腹に入ったり。 屋根の上で尋常やない戦いが繰り広げられてるんやけどどうしよう。 キリヲ君も政宗様も全然俺のお話聞いてくれへんよどうしよう。 グンジ君どうしようあれ…!
「グンジく、」 「っジジィー!」
てっめー一人だけで楽しんでんじゃねぇよこのクソジジイ! 俺もまぜろ!
…… ………
「ぬ?」
あれ? グンジ君あれ? ちょっとグンジ君。 グンジ君、グンジ君ちょっと待って。 俺あの二人止めたいんやけど。 別に戦わんでいいと思うから止めたいんやけど。 あの刀の人が政宗様でね、ほらさっきお話した政宗様でね、多分グンジ君やキリヲ君がこっちにいてる間とってもお世話になる人なんやけど。
あれ? 何で鉤爪光らせてるんグンジ君…!
「マキオ。」 「ぬ?はい?」 「あれがお前の言ってたマサムネサマか?」 「う?うん。」
そう政宗様。 さっきゆうてた政宗様、これから行こうと思ってたお城のお殿様なんやで。 やけどグンジ君なんで今そんな事、
「ジジー!そいつの相手は俺だァー!」
ひゃははは! マサムネサマは俺がミンチにすっからジジィはひっこんでやがれ!
「え?グンジ君…!?」
グンジ君が俺を地面に下ろして鉤爪を両手に付けた。 カシャカシャこすり合わせてにって笑う。 にって笑って俺を見て。
「マキオはー、おるすばーん。」
おるすばんのチュー。 ぬ? ほらチュー。 ぬん、ちゅー。
「待ってろマキオ。」
マサムネサマに挨拶してくっからよお!
「えええー!待ってグンジ君、」 「ヒャッハー!」 「shut!新手か?」 「ハジメマシテーマサムネサマあ、それからーさよならァー。」 「あーん!?邪魔すんじゃねぇよクソヒヨがあ!」
「グンジ君…」
楽しげに俺にちゅーした後、グンジ君はやっぱり楽しげに政宗様とキリヲ君がおるお城の屋根へとぴょんぴょん飛んで行きました。 鉤爪光らせて飛んで行きました。 屋根まで随分遠いのにたんたんたんたん、四歩ぐらいで辿り着きました。 それからそのまま政宗様に襲い掛かりました。
…… ………
「グンジ君もキリヲ君も政宗様もすとっぷー!」
うわーんストップ! ちょっともうほんま止めて! 戦うん止めて! 止めて俺のお話聞いて! 俺もうほんっま泣きそう…!
「っ真樹緒!?お前こんなところにいやがったのか!」
成実が探してたぞ朝から見てねーっつって。 危ないから城へ戻ってろ!
「ヨソミはー、命取りだぜぇ?マサムネサマよぉ!」
マキオはやんねーぞこらァ? あれは俺のウサギちゃんなんだよ!
「Ah!?冗談はその為りだけにしやがれ真樹緒は俺のsweetだDEATH BITE!」 「ぬーん!しんわざ…!」
政宗様の新技…! それ俺見た事無い技やで政宗様いつの間に! やあもうほんま皆落ち着いて…! 落ち着いてや政宗様もグンジ君もキリヲ君も…!
「俺は落ち着いてるぜ。」 「ぬ?」 「あの兄ちゃんはお前の知り合いか?マキオ。」 「あああキリヲ君!」
あれやあキリヲ君! さっきまで政宗様と戦ってたキリヲ君! いつの間にここまで下りて来たん俺びっくりするやん! 飛び上がってしまうやん! いつの間にやら俺のお隣までやってきてたキリヲ君はミツコさんで肩を叩きながら、さっきまでおったお城を見上げてる。 あー、めんどくせえ、なんて首をこきこき。 ヒヨがうるさくてよーなんてため息つきで。 政宗様と戦ってたのに傷一つないキリヲ君に俺はちょっぴり安心しながらも、もう!って顔を膨らませた。
「俺、下からストップ!ってゆうたのに。」 「あん?あの兄ちゃんから仕掛けて来たんだぜ。」
俺は屋敷に戻って普通にドア開けただけだ。 そしたら目の前にあの兄ちゃんがいてよォ。 鬼の形相で睨んできやがるから相手をしてやったんじゃねぇか。
キリヲ君が肩を竦めてどうだ!って顔するんやけど何それ何でビトロさんのお屋敷のドアが政宗様のお部屋に繋がってるん不思議じけん…! ぬう、でもドアっていう所は共通点よね。 それにしたって不思議じけんに変わり無いんやけど!
「俺とグンジ君はグンジ君のお部屋のドアからやったよ?」
ちなみにキリヲ君と戦ってたんは政宗様ってゆうん。 あ、ほんでここ俺がキリヲ君と出会う前におったとこね。 ここからやってきたん。
「マサムネサマだァ?」 「ぬん。」
俺のご自慢の政宗様。 とってもラブラブなんやで!
「………もう一回ぐらいイっとくかあ?」 「ぬ?」 「マサムネサマよう。」 「?なにが?」
どうしたんキリヲ君。 ミツコさんに力込めちゃって。 目がギラギラしちゃって。 政宗様をそんなに熱烈に睨んじゃって。 ちょっぴりお仕事モードな気がするんやけどキリヲ君何かこわい…!
「キリヲ君…」 「何だ?」 「俺、あの二人止めたいん。」 「あー?」
キリヲ君にお願いしたら、キリヲ君が俺をじっと見た後、ちょっぴり何かを考えてひょいっとお城を見上げた。
「おらおらおらおらァ!もっとイー声で鳴いてくんなァいマサムネサマよお!」
つっまんねーだろお!?
「シャーラーップ、二度とその口開けないようにしてやるよ。」 「ひゃっは!たーのーしーみぃー。」
それからそっとキリヲ君が俺を見下ろして。 首をくいっと曲げてまた何かを考えて。
…… ………
「めんどくせー。」 「キーリーヲーくぅーん…!」
もーうキリヲ君! めんどうくさがらないで! 俺やったら止めれやんからお願いしてるん! そりゃあ俺かってちょっと難しいかな、って思うけど。 何かもう、ほうっておこうかな、って思うけど。 ここで止めとかんときっとお城がとんでもない事になると思うん! ほらそのうちこじゅさんとかおシゲちゃんとかやって来てしまうかもしれやんし。 そうなったらまた何て言うか大変な事になると思うし。 こじゅさんとかおシゲちゃんってゆうんは俺がお世話になってるとっても大事な人なんやけど、これまたとっても強くって一筋縄ではいかないお相手でね。 絶対に大変な事になると思うんよ俺。
やからキリヲ君!ってぐいぐいキリヲ君のコート引っ張って一生懸命お願いしてるのにキリヲ君はうんともすんとも動いてくれなくって俺はしょんぼり。 もう!ってじだんだ踏みながらしょんぼり。 怒りながらしょんぼり。
「あ、」 「あん?」 「ぬん。」
でもちょっと待って。 ぬんぬんちょっと待って。 俺、とってもいい事思いついたかも。 ちょうナイスアイデア思いついたかも。 やってやで、ここが奥州のお城やったら、ほら、ぬん、おるはずやん? やあ、俺のお嫁さん。 伝説のお嫁さん。 俺のこーちゃん!
キリヲ君の腕から手を離してお庭をきょろっと見渡した。 俺は人の気配とかよう分からんのやけど多分大丈夫やと思うん。
「マキオ?」 「ぬん。」
不思議そうに俺を見下ろしてるキリヲ君に今度は俺がにやり。 キリヲ君がそんないじわる言うんやったら俺かって最後の手段があるんやから!ってにやり。 それから手を口に当ててメガホンにして思いっきり叫んだ。
「っこーちゃんやーい!」 「(しゅた!)」 「ぬーんこーちゃんやっぱりきてくれたー!」
さすがこーちゃん。 やっぱりこーちゃん。 すばやいこーちゃん。 頼りになるこーちゃん大好きこーちゃん…! ちゃんと俺のそばにいてくれたのねー。 いつもありがとー。
「こーちゃんお願い、政宗様とグンジ君を止めてきて!」 「(しゅた!)」 「あ、二人ともちょうげきせんやから気つけてねー!」
こーちゃんが怪我せんようにねー。
手をぶんぶん振ってしゅたっと飛んでいくこーちゃんをお見送り。 ちゃんと頷いてくれたこーちゃんをお見送り。 これで大丈夫。 絶対大城。 自信満々でこーちゃんの背中に手を振った。
ほんならすぐさま二人の所に辿り着いたこーちゃんは懐をごそごそおもむろに真っ黒な玉を二つほど取り出して。 ひょーいって。 かるーくひょーいって。
「………ぬん…?」
え? あれえ? ぬん、こーちゃん。 ちょっと待ってこーちゃん。 それってこーちゃん。 ちいちゃいけど存在感抜群なそれって。 その黒い玉って。 もしかして。
「こーちゃ、」
ドンドンドンドンドン…!
「ぬーん!」
やっぱり! やっぱり爆弾やった何それちっちゃいのにすごいいりょく…! お城の屋根の方で爆発したのに俺とキリヲ君のいるここまで真っ黒な煙につつまれてるんやけどとんでもないいりょくまじで! こーちゃんの今のお仕事は政宗様とグンジ君を止める事やでまじで! お城を大爆発させる事やないと思うんこーちゃんちょう伝説で俺ほれぼれするけど、ちょっとびっくりしたでまじで…!
お隣のキリヲ君の顔すら見えやん様になって、俺はとっさにキリヲ君のコートをぎゅって掴む。 爆風の勢いで足が浮きそうになるんをキリヲ君に抱えられながら目をぎゅっと閉じた。 うわーんこーちゃん俺まさか爆弾使うとは思ってへんかったで確かにグンジ君も政宗様も止まるかもしれやんけど、これはちょっとやりすぎやと思うわ俺!
「おーおー、何だあいつは面白ェもん使うじゃねえか。」
飛ばされてねーかあ?マキオ。
「飛ばされてないけど飛んでいきそうー!」
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グンジ君もきました。 やっぱり不思議などこでもドアの力が働いた様です原因なんてこれから明らかになりませんよ…! 不思議ドアは最後まで不思議ドアですすみませ(汗) やっと次回はちょっとお話できるかと思います。 落ち着いてお話しした矢先にまた戻るのですけれども。
あと一回で収拾したいかの子です。 ご覧下さってありがとうございました!
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