「グンジくーん?」
あれ? 雨でとってもじめじめしたお昼下がり。 俺は自分のお部屋にいててもなーんにもする事がなくってとっても暇で、鴨田さんと二人ビトロさんのお屋敷をてっくてっく。 たまに擦れちがう仮面のおにーさん達とごあいさつしたりしててっくてっく。 最近もう仮面のおにーさん達も見慣れちゃってびっくりする事も無くなったよねーなんて鴨田さんに話しかけながらてっくてっく。 やってきたのはグンジ君のお部屋。
やあほら。 グンジ君っていっつもお昼ぐらいまで寝てるから。 キリヲ君は規則正しい感じで朝起きるけど、グンジ君はお寝坊さんやから。 まだお部屋で寝てるかなーってやってきたん。 お部屋におったら一緒に遊んでもらおうと思って。 もしまだ寝てたらそのお隣に潜り込もうと思って。 あったかいベッドで一緒に丸くなろうと思って!
ぬん! チョコレートみたいな立派な扉をそおっと開けて、グンジ君のお名前呼んで。 おじゃましますーって一歩お部屋の中に入ったらそこは。
「………ぬ?」
そよそよとそよぐ爽やかな風。 さっきまでじめじめお天気やったのにちょう快晴な青いお空。 ざあざあ揺れる木と、その木にとまってる小鳥。 すくんでしまった足でそろっと振り返った後ろにはとっても、とーっても、見慣れたお城。
「ぬん…」
そうお城。 でっかいお城。 そびえる石垣。 遠くに見える大手門。 素敵な瓦の屋根はよく俺がこーちゃんとおやつ食べたりひなたぼっこしたりするそれで。 それで。
…… ………
「俺、もどってきた…!」
まじで…!
グンジ君のお部屋のドア開けたらお城のお庭でした。 いつものお散歩コースなお城のお庭でした。 こっちにやってきた時と同じぐらいの急さ加減で戻ってきたけどそこのところどうなんやろうまじで! 何でドア開けたらお城のお庭…!
「あれ、でもほんならグンジ君は?」 「ぶも?」 「ぬん、」
グンジ君のお部屋がお城と繋がってたりしたらそのお部屋で寝てたはずのグンジ君は? 無事やろうかグンジ君。 ちゃんとお屋敷で無事やろうかグンジ君。 やあ寝てるかどうか決まってる訳ちがうけど多分寝てたと思うからグンジ君。 不思議なドアのせいで不思議な事になってへんやろうか。 ほら俺がグンジ君らのところにばびゅんと飛んで来た時みたいにこっちにばびゅんと飛んできたりしてへんやろうか。
「マキオ。」
やあやあそうなったら大変よ。 俺、どうやって戻ってきたのかも分からへんし、どうやってあっちに行ったんかもわからんし。 グンジ君のお部屋のドア昨日まで普通のドアやったもん。 もしグンジ君がこっちきてたら戻り方全然分からへん俺…!
「おーい、マキオ。」
腕を組んでうろうろ。 その場でうろうろ。 戻って来たんは嬉しいけど、グンジ君の事が心配でうろうろ。 これは政宗様にゆうてみた方がええんやろうか。 こじゅさんとかおシゲちゃんとかにも相談してみたほうがええんやろうか。 あれでも俺向こうへ行ってた時ってどうなってたんやろう。 そんなに日数経ってへんけど結構お留守にしたよね! え、ちょっと待って俺それだけ勝手にお留守にしてたらまたおシゲちゃんに怒られるんちがうんまじで…!
「マキオ、聞こえてっかー。」 「ぬ?」 「よ!」 「グンジ君!」
ぬーんグンジ君! えええグンジ君! 赤のパーカーに、俺の大好きな綺麗な金髪、ちらって見える目元。 草むらをがさがさゆらして片手上げながらこっちにやってくるのは俺のよく知ってるグンジ君でした! やっぱりこっちに来てたんやね…! でもそんな普通に草むらからがさがさ出てこないで欲しかったわー。 何で普通なんグンジ君もっとびっくりしててくれなくちゃー。 俺、やるせないん。 ぬーん!
「、でもよかった。」
会えてよかった。 こっちにきてしまったのはちょっと大変やけれども、会えてよかった! グンジ君のパーカーをくいっと引っ張ってほっと一息。 よかったってむねをなでおろす。
「ぶじ?」 「んあ?何が?」 「やってここに飛ばされて来てしまったんやろう?」 「ここ?」
あ、そーいやここどこだよ。 グンジ君が鉤爪のついて無い手で頭をぽりぽり。 髪の毛くしゃっとかきあげて俺を見る。
「部屋から出たら何っかこんなとこにいんだけど。」
どーなってんだァ?
「ここね、俺がトシマに行く前におったとこなん。」 「あ?」 「俺ほんまはここで生活してたんやけど何かの拍子に向こうにいっちゃってー。」
どうやって行ったかも分かれへんねけどね。 お城のお庭でお散歩してたら迷い込んだ感じやねんけどね。 まさかグンジ君のお部屋のドアがこっちに繋がってるだなんてー。 あ、ちなみに俺はグンジ君のお部屋のドアを開いたらここやったんふしぎ。
「へー、よく分かんねー。」 「…グンジ君、もうちょっと慌ててほしいん俺。」
もっと焦ろうやあ。 向こうへ戻る方法分からへんねんで。 きょろきょろ辺りを見渡しながら伸びをしてるグンジ君にぶう、ってほっぺた膨らます。
「べーっつに焦ってもしょーがねージャン。」
トシマに戻れねーつってもアッチにきょーみねーしィ? 毎日毎日ツマンネーしさあ。 あ、でも肉切り刻めねーのはストレスかもー。 トシマはラインでイった奴らが腐るほどいたかんな。
「もー、グンジ君!俺しんけんやのに!」 「俺もシンケンだぜーえ。」 「キリヲ君とかビトロさんとかにずっと会われへんかもしれやんねんで!」 「マキオには毎日会えんだろ?」 「ぬーんそうやけど!」 「だったらいーじゃん。」
もーうグンジ君! もうちょっと自分の状況を冷静に見てほしいわ俺! これとっても不思議な出来事なんやってば! 足と手をじたばたしながら熱く俺が語るのに、グンジ君は俺の頭を撫でて笑ってばっかりで俺は更に足と手をじたばた。 何怒ってんだよーなんて、いっこも俺の気持ちを分かってくれへんグンジ君にじたばた。 俺、このままキリヲ君やビトロさんと会われへんのとか嫌なんやで! これっきりとか絶対嫌やで! もしこっちに帰ってこれたとしてもちゃんとばいばいゆうておきたかったし! こんないきなりのお別れは嫌なん。 そうゆうてるのにグンジ君は俺のほっぺたをむにむにしたり、頭を撫でたり、うししって笑ったり。
「ぬう、とにかくお城へ行こうグンジ君。」 「城?」 「うい。」
あそこのでっかい建物がお城なん。 ビトロさんの所とはまたちょっと違う形やけど、あれもお城でね、その国を治めてるお殿様がおるんやで。 お殿様。
「政宗様ってゆうん。」
政宗様に相談に乗ってもらおう。 この不思議なできごとちょっと聞いてもらおう。 向こうへ戻るいいアイデアあるかもしれやんし! あの高い所で政宗様はお仕事しててね、普段の生活はお城の周りの広いお部屋で過ごすん。 でも今はまだお昼っぽいから多分あそこでお仕事してると思う。 政宗様。 さぼってなかったらけど! お城のてっぺんを指差してグンジ君を振り返る。 見て!ってゆうて笑ったらグンジ君はちょっとおもしろくなさそうな顔で。
「グンジ君?あそこ。」 「ふーん。」
マサムネサマねー。 マサムネサマ。 マサムネサマ。
「マキオの何。」 「ぬ?」 「マサムネサマ。」 「政宗様?」
やあ、政宗様は…えーっと、ぬん。 あれ? 俺のなにってゆわれたらやあ、ちょっとすぐには思いつかんけど、ぬん… ぬーんっと。
「政宗様は、俺のご自慢の政宗様でー…」
そんでもってちょう強くってかっこよくってー。 だいすきでー。 政宗様も俺の事すきってゆうてくれてー。 らぶらぶでー。
「…へー。」 「ぬん…?」
えええグンジ君どうしたん。 その顔どうしたん。 鉤爪付けて無いのにお仕事モードなその顔どうしたんちょう怖い。 あれでもおもむろに鉤爪そうちゃくしだしたん何でちょう怖い。 ぺろっと鉤爪舐めてるその舌かっこいいけどやっぱりちょう怖い…!
「グ、グンジくん…」 「さァーいこーぜぇマキオ。」
そのマサムネサマとやらに会いになあ? チョー楽しい事になりそうな気がするあー楽しみィー。
「グンジ君…!まって!」
パーカーをぎゅって掴んで何だか危険なグンジ君を止めようとしたけど、素敵筋肉のグンジ君にもやしっ子な俺が勝てるわけも無くてずるずる引っ張られて抱えあげられて。 俺が何度もお名前呼ぶのにグンジ君はにやりって笑ったまんまお城へ向かう。 すったすったすったすった歩いて行ってしまう。
えええこれ止めやんとまずいんちがう。 このまま政宗様とグンジ君が出会ったら大変なんちがうん。 グンジ君何かをしかける気まんまんなんやけど…! 何か悪い事企んでる気がするんやけど…!
ぽっこぽっこグンジ君の胸叩いてストップ!って叫ぶんやけどグンジ君はびくともしやんくって俺はおろおろ。 やあもうどうしたらええん、っておろおおろしてたその時。
ドオオオオオオン…!
「ぬ?」 「あん?」
お城が。 政宗様のお城が。 お城のてっぺんがものすごい勢いで爆発しましたえええ何で…! 何のまえぶれも無かったで爆発なんで…!
…… ………
「まじで…!」
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お久しぶりの企画ですシラトリ様ありがとうございました! やってきましたグンジ君。 この後キリヲ君もきます。
一応うらきね設定ですので、キネマ主は最終的にトシマへ戻りまする突然に…! ではでは最後までどうぞお付き合いくださいませ。 ご覧下さりありがとうございました!
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