「こーちゃん、手ぇちゃんと持っとってなー。」
「(こくこく)」
やぁやぁ。 こーちゃんと二人、川の中にざっぷんって飛び込んでもうてやぁ。 もう何ていうかずぶ濡れやん? 二人とも。 このまますぐに上がるんも勿体ないし、折角やから泳ぎの練習してます。 真樹緒ですこんにちは!!
「足、ばたばたー。」
こーちゃんがな、泳ぎながら俺の両手持って引っ張ってくれてるねん。 やから俺は浮かびながらばしゃばしゃバタ足。 体が軽くて空飛んでるみたい! 気持ちいいんー。 たまにお水に潜ったりしてな!
「ぷは!」
ぬ? 何で練習かって?
やって俺、泳げやんねんもん。 いっこも泳げやんねんもん。 言うとくけど、生まれてこのかた25メートルプール最後まで泳ぎきった事ないよ俺。
足がつくプールとかで、ばちゃばちゃするんやったら大丈夫やねんけどなー。 平泳ぎとかクロールとか?ああゆうやつ泳げやんの。 別に水が嫌いとかは無いねんけどやぁ。 水に浮いた事がないのですよ。
ぬ? それやのに何で飛び込んだかって?
そんなん勢いに決まってるやん…!! ちょっと飛んでみたかったんやん…!! 十代の若者のきらめきは今だけなんやで! やりたい事やっとかな後から後悔するんやから!
でもそれ言うた後、こーちゃんに思いっきりぎゅうされてちょびっと背中痛いん。
ぬー。 そんなに心配かけてもうたかなぁ?
でもほら、こーちゃんがおったから飛び込めたっていうんもあるよ! 俺が溺れても絶対に助けてくれるやろう? でも心配かけてごめんなぁ。 こーちゃんの首にぎゅっとして、おでこもこつん。 何だか下がったような気がするこーちゃんのまゆげにちゅう。
「!」 「へへ…」
ごめんな、こーちゃん。 心配かけるつもりやなかったん。 ほら、ちょっとこう。 夏の暑さがやぁ。 俺を突き動かしたのよ。
すん、って鳴ったこーちゃんのお鼻にもちゅう。 もういきなりあんな事せぇへんから。
そしたらやっと腕の力抜いてくれて。 二人で泳ぎの練習なのです。
「なぁなぁ、こーちゃん。」 「?」 「何かコツつかんだかも。」
バタ足と体の動かし方。 ゆうるくバタバタして体はあんまり動かさんと腕をぐいーんってするんやろう? 分かった分かった。 かんぺき。 俺いける。 ほら、こう体が浮きそうな気がする。
「……」 「やぁ、大丈夫やってー。」
今やったら絶対俺泳げる気ぃするもん。 やからこーちゃん。
「ちょっと手ぇ離してみてー。」 「!?」
さぁ、こーちゃんぱぱっと離してみて。
俺浮くで! 泳げるで! こーちゃんと一緒に練習したもん!
ほらほらこーちゃん。 手ぇ、って二人でゆっくり川に流れながら言うてみたんやけど。
「こーちゃん…」 「(フルフルフルフル)」
こーちゃんにさっきよりも強い力で手をぎゅぎゅっと握り締められました。 そして思いっきり首も振られてしまいました。 しかも、さっきのしゅんとなったこーちゃんが嘘の様にちょうちからづよくです!
「こーちゃん…」 「(だめ)」 「ぬーん。」
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