01



「花ちゃーん!」
「まきお!!」
「「ひさしぶり…!」」


雨が降り続いた六月の半ば。
花ちゃんのお山は大丈夫やろうかって心配してた次の日になんとその雨が止んで、やっとお顔を見に来れた花ちゃんはいつも通りのきゅーとなお稲荷様でした!
真樹緒ですー。
爽やかな花ちゃんのお山からこんにちは!


ぬー。
本当にお久しぶりね。
元気やった?花ちゃん。
ここのお社すごい立派やけど、ちょびっと小さいしあの大雨にやられてないか俺心配やったん。

ぎゅう、って花ちゃんと熱い抱擁をしてふっさりな耳としっぽを堪能して無事を確認して。
「くるしいぞまきお」ってゆう花ちゃんとおでこをごつん。


「怪我とかしてへん?」
「おれはだいじょうぶだ!」


おやしろは森のたけぇとこにあるし、そとにも出なかったからな!
それにおれはいなりだ。
あめぐらい何てことねぇよ!


「たのもしー。」
「きゅう。」


花ちゃんの頭をぐしぐし撫でる。
お社もどっこも壊れてへんみたいやし、花ちゃんは元気やし、ほんまによかったー。
花ちゃんが怪我とかしたらあの赤い人と緑の人が黙ってへんもんねぇ。


「あか?みどり?」


さすけとゆきむらの事か?


「大騒ぎしそうちがう?」
「さすけとゆきむらなら、きのうまでおやしろにいたぞ?」


かみなりとかすごかっただろ?
おれの事がしんぱいでやってきたんだ。
ゆきむらは雨のなかとりいのとこにやりもって立っててな。


花と花の社を守るでござらぁぁぁ!!
ちょ!旦那!守るならまず社の中に入れぇぇぇ!!


この大雨と風で吹き飛ばされても俺様知らないよ!
自力で帰って来てよね!


って。
さすけがおこってた。
その後ちゃんとおやしろにもどってきたけどな。
ずぶぬれだったからそのままさすけにふろの中にほうりこまれてたぞ。


「まじで!」


もうすでに大騒ぎしてた…!!


やぁ、政宗様も何や雷鳴ってんの見てテンション上がってたけどー。
テンション上がってこじゅさんに怒られてたけどー。
流石にお外に飛び出すのは無かったなー。
ずっとお部屋でくっついてたん。
二人でてるてる坊主作ったりしてね。
こじゅさんが窓のとこにぶら下げてくれたよ。


「らぶらぶだな!」
「ぬん!」


花ちゃんをだっこしながらお社へ続く階段を上る。
木の枝とか葉っぱとか色んな物が散乱してて、ほんまに昨日までの雨はすごかったなぁって実感した。

後で花ちゃんとお掃除やなー。
せめてお社のまわりは綺麗にしたいよね。
木の枝と葉っぱ集めてお外の灯篭の中もチェックしやんとね。


「あ、ほんで今日はおらんの?」
「きゅ?」
「さすけさんとゆきむらさん。」


今日はもう晴れたから帰ってしまったんやろうか。
でもあれだけ花ちゃんを大事にしてるんやったらずっとおりそうやと思ったんやけど。
どないしたん?って首傾げたら花ちゃんも反対の方向に首を傾げてもうた。


「ゆきむらはまだここにいるって言ったんだけどな。」
「うい。」


さすけがな、「どんだけお仕事溜まってると思ってんの!」ってゆきむらのみみひっぱっておやしきに帰ったんだ。
ごめんね、またすぐにようすを見にくるからね、って言ってたぞ。
だからきょうはもうこねぇんじゃねぇか?
帰ったのはけさはやくだ。


ぬーん…


花ちゃんが何でも無いように言うんやけど、どうなんやろうそれ。
ゆきむらさん。
花ちゃんの事よう考えてくれてるんは痛い程伝わってくるんやけど何ややればやるほど空回り…!
お耳を引っ張られて送還されたゆきむらさんの代わりに何だか俺がせちがらい…!
俺応援してるからがんばってゆきむらさん!


「あ、それとなまきお。」
「ぬ?」
「森にあるいわやがくずれたみたいなんだ。」
「いわや?」
「がんくつのことだ。」


しらねぇか?
しぜんのいわがどうくつになってるんだぞ。

そのがんくつのでっけぇのがこの奥の森にあって、とちがみさまをおまつりしてるんだけどな、そこのしめなわがほどけちまって。
ほら、おれはいなりだからむすびなおさねぇといけねぇんだ。
じゃねぇととちがみさまがあんしんしてそこにいられねぇからな。


境内にぴょんと飛び下りた花ちゃんが胸を張って言うん。
耳がぴくぴく、二本のしっぽがゆらゆら。
得意げな花ちゃんがちょう可愛い。

やぁ、でも。
しめ縄ってすごいふっとい奴ちがうん?
ほら、神社とかでようある。
一体どうやって締めたんか見当もつかん太さのしめ縄。
それやったら花ちゃん一人やったらちょっと無理ちがうんかなぁ。
お稲荷さまやゆうても、ちっちゃくてきゅーとな花ちゃんやし!
って思たんやけど。


「おれ、ちょっといってくるからおまえはおやしろでゆっくりしててくれ。」


花ちゃんが真面目な顔してきゅっ!って小さなもみじの手を振るもんやから俺はびっくりして。

ぬうぬうぬう。
可愛い花ちゃんは時にとっても男前―。
うっかり惚れてしまいそうよ!


「花ちゃん花ちゃん。」
「きゅう?」


どうした?
さすけがもってきたかんみもあるぞ?
それくってまってろまきお。


「いやいや花ちゃんが男前ってことはとってもよく分かったんやけどー。」


やっぱり心配やから俺も一緒にその岩窟に行きたいなーって思ってね。
そしてお手伝いしたいと思ってね。


「きゅう?」
「花ちゃんさえよかったら連れて行ってくれると嬉しいわ!」


花ちゃんと同じ目線になるようにしゃがんでお願い。
もみじの手を取ってお願い。
ぱちぱち瞬きをした花ちゃんは大きい目をこれでもかって開いてびっくりしてたけど、ちょっとほっぺた赤くして俺の手を握り返してくれた。


「まきおもきてくれるのか?」
「たいしたお手伝いは出来へんやろうけどね。」


一人よりは二人の方が絶対ええよ!
やから一緒にいこー。


「きゅん!!」


飛び込んできた花ちゃんを抱き締めて頭を撫でる。
ふわふわなお耳は俺の癒しで。
ぽすぽす俺の足を叩いてるもっさりなしっぽも俺の癒し。
可愛いお稲荷さまは今日もとってもキュートです!


「ではでは、花ちゃん行こかー。」


俺は場所知らんから教えてなーなんて言いながらお社の裏手に回った。
ここは花ちゃんの森のずうっと奥につながる小道があるん。
昨日までの雨でやっぱりぬかるんで木の枝とか落ち葉だらけやったけど慎重に、ゆっくりゆっくり進んでいく。

境内のお掃除は戻って来てからやねぇ。
かんみもかえってきてからだな!

そんな会話をしながら、花ちゃんと二人森の奥の岩窟まで行ってきますー。
しめ縄直してまいりますー。


「あ、そういやぁまきお。」
「ぬ?」
「おまえんとこのおさむらいはきてねぇのか?」


おさむらい?
政宗様とこじゅさんの事?
きゅう。
おまえがひとりできたらおこるんじゃねぇか?


「やぁ、政宗様この雨の間ずっと俺とおってくれたからやぁ。」


その分お仕事がたまってしもうて。
ゆきむらさんの事言えたためしは無いんやけど。
こじゅさんの見張りつきで今日一日ずっとお仕事なん。


…どいつもこいつもなにしてんだろうなぁ。


にんげんってのはがくしゅうってもんをしねぇのかなまきお。


見かけは可愛いお稲荷さまやのにそんなニヒルな顔する花ちゃんもすてきー。」


そして反論できへんところがつらいよねー。



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お久しぶりの稲荷とキネマ主でした。
キネマ主といると稲荷はとたんに大人ぶりまする(笑)
さて次は鬼の元親さん。

リクエスト下さりましたお二人様へは後書きにてまた改めてご挨拶させて頂きまする。
本当にありがとうございました!

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