01



「真樹緒、真樹緒。」
「ぬ?」


ちょっと肌寒いお昼時。
奥州は朝から雪が降って、お庭を一面真っ白で。
そんなお庭にテンションが上がった俺は、おシゲちゃん手作りのちゃんちゃんこを着込んで、鴨田さんと二人、雪に足形をつけるのに大忙しなん。


「鴨田さん上手やねぇ。」
「ぶもー。」


せっせと二人でお庭を走り回ってたら後ろから声がしたのです。
あれぇ?
この声は。


「子供は風の子って本当なんだねー。」
「さっちゃん!」


振り返ったらそこにはなんとさっちゃんが!

そうそうさっちゃん!
甲斐のお母さん!
ぬー。
聞いたことある声やと思ったんよー。

あれやぁ、さっちゃん今日はお仕事?
それともゆっきーと遊びに来てくれたん?
いつもの迷彩ポンチョに茶色のえりまき巻いて「寒くないの?」ってお鼻の頭を赤くしてるさっちゃんに飛び込んだ。


えー。
寒いけどー。
それ以上に雪にテンション上がったってゆうか!


「真樹緒も鼻の頭赤いよ。」
「ぬふふ、お揃いやね。」


二人で笑ってその赤いお鼻をこつん。
ただでさえちゃんちゃんこでぬくぬくもっこりした俺は、さっちゃんにぎゅうされて身体中がぽっかぽか!


「ぶもー。」
「うん?どうしたの。」


襟巻きに入りたいの?


「ぶもも。」
「ほらおいで。」
「ええなー。」


さっちゃんのえりまきええなー。
ぬくそう。
ちょうぬくそう。
俺とさっちゃんがぎゅうしてる隙間から鴨田さんがさっちゃんのえりまきに飛び込んだ。

こう、さっちゃんがひょいっとね。
えりまきを引っ張って鴨田さんを入れてくれてん。
やさしー。
さっちゃんやさしー。


「ぬくい?鴨田さん。」
「ぶも!」


でも俺もさっちゃんにぎゅうしてもらって、負けへんぐらいあったかよ!


「さっちゃんさっちゃん、」
「なぁに?」
「今日はお仕事?」


白い息の向こう、さっちゃんの髪の毛についた雪を払う。
オレンジ色の髪の毛にキラキラ光る雪はとっても綺麗やけど、やっぱり寒そうで。
ちょいちょい払ったら「ありがと」ってさっちゃんが笑ってくれた。


「政宗様に会いに来たん?」


もしお仕事やなかったら一緒におシゲちゃん特性のおしるこ食べようかなーとか思ってやぁ。
ゆっきーも来てるんやったらもちろんゆっきーも!
お餅も焼こう!


「お仕事はもう終わったよ。」
「ぬ?」


大将のお使いでね。
越後に行ってたんだけど、もう終わっちゃって。
せっかく近くに来たんだからと思って寄ってみたんだよ。


「俺何してるかなーって?」
「そう、真樹緒何してるかなーって。」


鴨田さんと二人で一面の雪に足跡つけてました…!
ぺったぺったぺったぺった雪を踏んでました!

楽しいんやで、あれ。
よかったらさっちゃんもまざる?
ゆっきーがおらんのは残念やけど、さっちゃんが会いに来てくれただけでも嬉しいわ!
さっちゃんのポンチョを引っ張ってお誘いしてみる。


遊ぼー。
一緒に遊ぼーさっちゃん。
ほんで遊んだ後、おしるこ食べよう。
焼いたお餅入れてやぁ。
あつあつのおしるこ食べようや!


「えー、でもさっちゃん暫くこのままがいいな 。」


もうちょっと真樹緒にくっつかせてよ。
子供体温。
さっちゃんすごく癒される。


「えー。」


このまま?
このまま。


「あー幸せ。」
「ぬー、さっちゃん髪の毛こちょばい。」


むう。
そらぁくっついてたらあったかさっちゃんでぬくいんやけど、俺お腹空いてきた。
小腹空いてきた。
やっぱりおしるこ食べたい。

ぎゅうするんやったらお部屋でくっつこうやー。
俺のお部屋、火鉢もあるんやで。
政宗様がお仕事前に炭も入れてくれたん。
鼻をすんってすすってさっちゃんを見上げた。
そしたらえりまきにくるまってる鴨田さんと目が合って。


「ぶも。」
「ぬう。」


じゅうぶんあったかいよ、ってお返事する鴨田さんはさっちゃんの見方っぽいです!


「あ、そういやぁさ。」
「うん?」


なぁに?
さっちゃん。
俺と一緒におしるこ食べる気になった?
頭の上に顎のっけてるさっちゃんが「真樹緒」って俺を呼ぶ。

冷たいお耳をいじってくる指がこちょばい。
ここも赤いねぇ、なんて笑うさっちゃんにだからおしるこって言うてるのに、って膨れてみせたらさっちゃんが「こーちゃんは?」って。


………
…………


う?こーちゃん?
そう、こーちゃん。


ほら、俺と真樹緒がくっついてたら何かとお邪魔をしてくれるこーちゃんだよ。
同盟組んだってのにいつもいつもこれでもかって急所を狙ってくれるこーちゃんだよ。
普段ならそろそろさぁ、苦無の一つも飛んでくるのに。


さっちゃんがきょろきょろ辺りを見渡した。
気配はうっすらあるんだけどねぇって首を傾げてる。


「んー…朝ごはんの時は一緒におったよ?」


それからこーちゃんは屋根裏に行ってしまってな。
俺は鴨田さんとお庭に来たし、政宗様とこじゅさんはお仕事やん?
鬼さんもおシゲちゃんも忙しそうやったから…
やー、誰も朝からこーちゃんに会ってへんの違うかなぁ。


鴨田さんも会ってへんよね。
ぶも。


「ふうん?」
「さっちゃん?」


さっきまで笑ってたさっちゃんがちょっと難しい顔になってすっと目を細めた。
それから黙ってしまう。
俺とさっちゃんの白い息がふわふわ浮かんでは消えて。
どうしたん?って聞いたら急にさっちゃんが俺をだっこして飛んだ。


「わあ…!」
「掴まってて真樹緒。」


足元が浮く感覚にびっくりして目の前のさっちゃんの首に腕を回して。
びゅうっと吹いてくる風に目をつむった。
開いたらもうそこはお城の屋根。
さっちゃんが俺を抱き込んで「本当さっむい。」なんて顔をしかめてる。


「さっちゃんさっちゃん、急にどうしたんー。」
「ん、ちょっと気になってさ。」
「う?」


真樹緒のこーちゃんの気配はこっちにあるんだけど、違う気配も一つね。
ちらって俺を見るさっちゃんの顔は甲斐のお母さんの雰囲気なんて全然無くて男前のお忍びさんの顔でした!


やぁ、でも。
違う気配って何やろう。
こーちゃんの知り合いが来てるんやろうか。


……お友達とか?


「真樹緒、ほら見て。」
「なん?」
「あそこ。」


どこ?
さっちゃんが指差すのはお城からすぐそこにある物見やぐらの屋根で。
ちょっと低くなってるそこは俺とさっちゃんがいるとこから丸見え。
揺れる木の影なんやけど、上からやったら見えるん。


そこには朝ぶりに見るこーちゃんと、
こーちゃんと……


ぬ?だれ?


やぐらの上にはこーちゃんがおったん。
いつもとおんなじ様にすっごいええ姿勢でびしっと立ってるこーちゃんがね。


でもそこにおったんはこーちゃんだけじゃありませんでした!


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