かくれんぼ大会初めての犠牲者はゆっきーでした! 逃げられやんようにゆっきーとおてて繋いでお屋敷の中てくてく歩いています。 真樹緒ですよこんにちは!
「っ真樹緒殿!」 「ぬー?」 「そっ、その!なぜ手を…!」
「ぬ?」
やぁやぁ、次のターゲットはおシゲちゃんやねん。 おシゲちゃん。 おシゲちゃんは多分お外やなくてお屋敷とちがうかなーって思ってお庭からお屋敷に戻ってきたんよー。 ほら、おシゲちゃんてアウトドアよりインドアな感じするし。
…… ………
せえへん? やぁ、それはエアーで。
後はあれ。 勘やん。
俺の勘って結構あたるんやで! 多分きっとおシゲちゃんはこっち!
「やってゆっきーに逃げられたらあかんやん。」
やからはやく!ってゆっきーの手ぇ引っ張ったん。
ほらさっきゆっきーをお庭で発見したやろう? 俺に見つかったやろう? 鬼に見つかってもうたら一緒に他の人探さなあかんねんで! やからおてて繋いでおシゲちゃん捜索なん。
「そっ某!逃げるなどと!」 「えー…でもー…」
ええやん手ぇぐらいー。 繋いどこうやぁ。 俺ら仲良しさんやんー。 ええやんー。
ぶんぶん繋いだ手ぇ振ったらゆっきーが何やあわあわしとるん。
「…っ、真樹緒殿。」 「?ゆっきー?」
あれゆっきー。 どないしたんゆっきー。 あわあわしたまんま、ちょっとゆっきー可愛いなーとか思いながらそれでも手ぇ引っ張って歩いてたらな、いきなりゆっきーが立ち止まってしもうたん。
ぬう、何で。 もしかしたら手ぇそんなに嫌やった?
「ゆっき、」
名前呼んでもゆっきーは下向いてふるふるしたまんま。 顔が見えへんからちょっぴり不安なん。 手ぇ繋ぐんもな、いつもの恥ずかしがり屋さんなゆっきーが出てしまったんかと思って俺気にしてへんかったんやけど、何やちょっと違う感じやし。
「ゆ…」 「っ真樹緒殿…!」
ゆっきーごめん大丈夫? ひょいって覗き込んだ時やった。
「…ぅい?」
ぎゅうって繋いだ方の手ぇ握られたんは。
「そのっ、某…!」 「ゆっき…?」
あまりの強さに俺はびっくりしてもうて。 目ぇぱちぱち。 目の前のゆっきーは真っ赤。
ぬー。 そんな事考えてる場合ちがうんやけど、やっぱりちょっと可愛いなって思ったんは秘密! 頭撫でたいなぁとか思ったんは秘密!
「お、お聞き下され。」 「う?」
ほんならゆっきーが俺の両手を取って。
「そっ、某の手はかっ硬く、肉刺や傷で、大層無骨なものです。」
「………うん?」
ですから、ってゆっきーが眉毛をハの字にして言う。 某のようなこんな手が、柔らかく白い、真樹緒殿のその手を掴むなど恐れ多く。
恐れ多く…!
「は、離して下さらぬか…」
…… ………
「ゆっきー可愛い…!!」 「…っな!!」
やぁごめん。 何やちょっと雰囲気壊してもうてごめん。
でもゆっきー可愛かったんやもん! 真っ赤になっちゃって! もう、ゆっきーそんなん考えてたん! 気にすること無いのにー!
「あんな、ゆっき。」 「…真樹緒殿…?」
まだまだ真っ赤なゆっきーを見て笑う。 なぁなぁゆっき。 こっち見て。 話聞いて。
「俺な、この手ぇ好きやで?」 「んなっ!」
ゆっきーの手はちょっとごつごつしてて、マメとかあって、俺とは全然違うんやけど。 おっきくって俺の手ぇなんかすっぽり入ってまうやん? しっかり掴んでくれるやん? じんわりあったかいしやぁ。
「真樹緒殿…」 「へへー…」
俺、実はゆっきーの手ぇ大好きなんやで。 知らんかった? はよう言うといたらよかったなぁ。 ほんならゆっきーが心配する事なんもなかったのに。 かんにんなー。
ゆっきーを見上げながら笑う。 やからこのまま繋いでてな、って笑う。 両手がしっと掴まれたまんまそれをゆるゆる振ってみたらゆっきーの手から力が抜けたん。 ほんで両手が自由になって。
「…そ、某…!」 「うん、」 「このまま、!」 「うん。」
真っ赤なゆっきーをじぃー。 やっぱり可愛いなーとか思いながらじぃー。
ほらほらゆっくり。 ちゃんと俺聞いてるよ。 やから落ち着いてな。
「その…!」 「うぃ。」 「っっ…!」
一回ぐ、って詰まった真っ赤なゆっきーはその後俺の目を見て。 ちょっと逸らしてまた見て。
ぬうう。 何だかいっぱいいっぱいなゆっきー見てたら俺まで緊張してきちゃったじゃない! ドキドキするやん! むーって顔が熱くなってきてやぁ。
ちら、って俺から目ぇそらした時ゆっきーが。
「その!よろしくお願い致し申します…!!」
右手を前にずずいって出したん!
「ゆ、ゆっき…」
あの恥ずかしがり屋のゆっきーが自分から手ぇを前に出したん! ほら、お願いしますの右手やで!
おおおお! ゆっきー!
そんな俺がちょっと恥ずかしいやん! こっそりゆっきー見たらやっぱり真っ赤。 可愛い!
「へへー…」 「真樹緒殿…?」 「やぁ、こちらこそ。」
お願いします。 右手失礼します。 しっかり握っててねゆっきー。 ちょん、ってゆっきーの右手掴んだら物凄い強い力で握り返してくれました! やぁ、やっぱり俺も何だか恥ずかしい!
「ぬー…」 「いかがされました真樹緒殿。」 「やぁやぁ、何もないんー。」
ちょびっとね。 照れてもうてね。 うん。
でも大丈夫! おシゲちゃん探しに行くよ!
***
「ぬっ!真樹緒殿!」 「うん?どないしたん?」 「あちらから何やらよき香りが。」 「あっち?」
ゆっきーが指差すから、そっちむいてくんくん。 ほんならゆっきーが言うた通りものすごいいいにおい。 それも甘―い匂いやで。 お鼻をくすぐるのです。
ぬう。 こっちの方向はくりや。 女中さん達の炊事場なん。
「……ゆっきぃ。」 「…はい。」 「…ちょっと寄ってく?」 「御意に。」
かくれんぼ忘れた訳ちゃうんやで! あの甘い匂いの正体を探りにいくだけなんやからな! でもちょっとおいしいもんやったら分けてもらっちゃったりなんかしちゃってね!
女中さんにおねだりなん。 いっつもな、味見さしてくれるねんで。 優しいん。
「ではではくりやにれっつごー!!」 「ごーにござる!」
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