06




「こらてめぇ!降ろせ猿!!」
「はいはい、じっとしてないと危ないよ。」


さっちゃんが俺と政宗様をだっこしてな、お城の屋根に上がったん。
そよそよ顔の横を流れていく風は気持ちええんやけど、政宗様がちょっと暴れてるから何だかぐらぐらして危ないさっちゃんのお膝からこんにちは!
真樹緒やでー。


何かお久しぶり?
ぬふー。
俺は元気よー。
まだまだ見かけは政宗様やけど元気やでー。


「さっちゃん、顔だらしないん。」
「だって真樹緒な独眼竜が可愛くって。」


さっちゃんな、さっきからずっと笑ったまんまなん。
俺と政宗様を見てずーっとにこにこ笑ってるねんで。
たまに俺らの頭撫でたりしてね。


もー。
へらへらしちゃってー。
そんな顔しとったらまた政宗様怒るよー。
知らんよー。


「あ、勿論独眼竜な真樹緒も可愛いよ?」


そんな事言いながらもさっちゃんはによによ。
やっぱりご機嫌ですよ。


このだらしない顔見てんー。
眉毛から目じりから全部がだらーんて下に下がってるねんで。
ほらちょっとしっかり、ってさっちゃんの頬っぺたをぺちぺち。
イケメンが台無しよってぺちぺち。
それでも元に戻らんから両手でさっちゃんのほっぺたぐにってやってみたんやけどな。


「はいはいなぁに。」
……


さっちゃん全然堪えてません。
何かでれでれ!


ぬー。
もうさっちゃんがご機嫌やったらそれでええかー。
何か可愛いしー。
俺がちょっと諦めてさっちゃんの頭撫でてたら「真樹緒!テメェは猿に甘い!」って政宗様に怒られてしまいました。
「もっと警戒しねぇか!」って怒られてしまいました。


……
………


やぁ、でもさっちゃんが言うようにあんまり怖くありません!


「さっちゃーん。」
「うん?」
「政宗様ほんまに怒っても怖ないねぇ。」
「ねー。」


可愛いだけだよねー。
子犬みたいだよねー。
思わずよしよし大丈夫、って撫でたくなるよねー。


「ねー。」
「ねー。」

ってめえら…!!


もっと事の重大さを実感しやがれ…!!


ぺちん。
ぺちん。


「ぬっ!」


さっちゃんと二人、怒る政宗様に何や微笑ましくてへらっと笑ってたら政宗様頭をぺちんて叩くん。
笑ってる場合か、っておでこをぺちんって。


ぬー。
こちょばい。
もう政宗様、折角褒めてたのにー。
照れちゃって!


照れてねぇ…!


べちん
べちん



「ぬー!」
「あはー。全然痛くない。」
「っこの野郎…!!!」


このまま元に戻らなかったらどうする気だ!って政宗様はまじな顔で言うんやけど。
やぁ、大丈夫やってー政宗様。
安心して。
俺にまかせて。


「Ah…?」
「ほら、俺らおでこごっつんこで入れ替わったやん?」


不安げに俺を見上げる政宗様の手ぇ持って聞いてや、って。
俺が政宗様にごっつんこしてこう、ガッってなってバッとやってもよーんって入れ替わったやん?
やからな。
戻るときもそれやとおもうん。


………Ah…?


大丈夫やで政宗様!
そんな心配せんでもええよ!
眉毛がハの字になってる政宗様の眉間をぐりぐり。
戻りたかったらまたごっつんこしたらええんやで!



「もう一回ごっつんこするん。」


ほんならきれいさっぱり元通り!
俺と政宗様元通り!
ほらほら漫画でようあるやん。
こういうんは入れ替わってもうたらまたその時と同じような事やったらええねんで。


ベタに。


べたに。
いやいや真樹緒。
「ぬ?」


ちょっと独眼竜遠い目してるから落ち着こうか。
余りにも不確かな戻り方云々に色々思うところがあるみたいだから。

さっちゃんが俺の頭をぽんぽんってして政宗様を指差した。


政宗様?
やぁ、俺政宗様とお話してたんやけどってさっちゃんの指の先見たら俺な政宗様が若干青い顔でお空を見つめてました。


あれ?
何で?


「ってか真樹緒。」
「ぬ?」
「入れ替わったのって事故じゃなかったんだ。」


さっちゃんびっくりしちゃった。
まさか真樹緒が遣らかしてたなんて。
本当、いつもいつも俺達が読めやしない事をやってくれるよね。
さっちゃんがな、ため息吐きながら言うん。


やぁ、すごい暇やったん。


ちょうど政宗様と一緒におったし。
何か面白い事ないかなーって思って。
まさか俺も成功するとは思わんかった!
びっくり!


「俺すごい?」
「すごいすごい。」
「へへー。」
和むなてめぇら。


「ん?」
「にゅー!!」


いたい!
政宗様!。
ちょっと政宗様ほっぺた引っ張るんやめて!
さっきまでちょっと遠い目してた政宗様がやっぱり眉毛をつりあげて俺とさっちゃんの頬っぺた引っ張るん。


もうー。
政宗様痛いんー。


「真樹緒。」
「うぃ…」


よく聞け真樹緒。
ついでに猿も聞け。
政宗様が真剣な顔して頬っぺた離してくれた。


俺はそのほっぺたさすりながら何、って。
ちょっとふざけたらあかん感じやねん。
やからな、さっちゃんと目を見合わせた後、ちゃんと政宗様の目ぇ見たん。


「もうすぐ小十郎が帰ってくる。」


どうするつもりだ。


……
………



あ。


そうやん。
忘れてた。
忘れてたこじゅさん。


やぁ、こじゅさん今お城におらんねん。
こーちゃんと氏政じぃちゃんのとこにお使いなんやて。
何や北条領?の事でお話もするみたい。


は!
そうやん。
それで俺畑のお仕事も無くって暇やってんやん。


「そっか、右目さんこの事知らないんだっけ。」


………まじで。
マジだ。



…まずくない?
だからさっきからそう言ってんだろ。
「ぬー。」


どないしょう。
こじゅさんにばれたら絶対怒られる。
やってあのこじゅさんやで。
中々おちゃめの通じへんこじゅさんやで。


絶対怒られる…!
どないしよう…!!


「事の重大さが分かったか。」


とっとと降りて普通に戻る方法を考えるぞ。
そう言うて政宗様がさっちゃんのお膝から降りた時やった。


「二人共掴まって!」


飛ぶよ!
さっちゃんが俺と政宗様を抱えてお空へ飛んだん。


お城の屋根をトン、ってひとっとび。
細い欄干の上を走ってひょーいって。

ぬ?
さっちゃん突然どうしたん。
何でいきなりお空。
びっくりしてさっちゃん覗き込んだんやけど、さっちゃんは笑ってるん。


「…さっちゃん…?」
「まずいぜ真樹緒。」
「ぬ?」


何?
何がまずいん政宗様。
政宗様が見てるのはさっちゃんの背中。
何があるんよーって振り返ったら何とそこにはこーちゃんが!!


「こーちゃん!!」
「(シュッ!)」
「あらよっと。」
「(イラッ)」


シュッ
シュッ
シュッ



こーちゃんが前にも増してキラッっと光るクナイを両手いっぱいに持ってさっちゃんを追いかけてました!


いつ帰ってきたんやろう。
今日は会うん今がはじめてね!
お帰りこーちゃん!!





「…風魔がいるってことは小十郎も帰ってきたな。」
「…ま、ご愁傷様。」
「テメェ猿。」


こうなったら責任取ってこのまま逃げ切りやがれ。
俺と真樹緒の逃避行だ。


「あはー冗談でショ。」


お仕事以外で俺様本気出したくないんだよねー。
真樹緒もいるし。
怖がるデショ。


Shit!使えねぇ!!


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