「たのもーーーう!!!」 「ちょ、旦那!門番の人倒しちゃ駄目でしょー!」
俺がおシゲちゃんに頭撫でられてたらやぁ。 何やお城の外の方ででっかい声が。
ぬふー。 あれ多分ゆっきーとさっちゃんやんなー。
頭と頭をごっつんこして政宗様と入れ替わった真樹緒ですー。 見かけは政宗様でこんにちは!!
「うーん。まだ複雑。」 「そお?」
ゆるゆるな梵って可愛いんだねー。 まさか梵の頭をこんな風に撫でれるなんてさ。 そんな事ゆうておシゲちゃんまた俺の頭撫でるねんで。 俺は別に全然いつもと変わらへんねんけどなー。 ほら力抜けてまうー。
「気持ちいんー。」 「おお…癖になりそう。」 「てめぇ成実。」
いい加減にしろよ。 絵面を考えろ。 俺がお前に頭撫でられるなんざ、何の冗談だ。
「ぬ?」
政宗様がな、俺の頭の上に乗ってたおシゲちゃんの手ぇぺしっと叩いたん。 やぁ、見かけは俺なんやけど。 なまってへん俺なんやけど。
んー。 何か不思議―。
「やだなぁ、梵。」
真樹緒の顔で言われてもこれまた可愛いだけだよ。 中々新鮮だね。 癖になりそう。 今度はおシゲちゃんが俺と政宗様の頭を一緒にぐしぐし撫でてくれました。
気持ちいいん。 おシゲちゃんってこう、絶妙の撫でぐあいよね。 俺好みー。
「はい、可愛い可愛い。」 「ぬー…」 「っこの野郎…!」
楽しんでやがるな。 テメー、その薄ら寒い笑いを引っ込めやがれ。
何や政宗様が怒ってるんやけど、どないしたんやろう? 自分で言うのも何やけど、俺の顔で怒っててもあんまり怖ないでー。
ぬー。
「た の も うーーーー!!!」 「ああ又扉壊して!!!」
「ぬ?」
おシゲちゃんと政宗様が睨み合って(やぁ、おシゲちゃんはにこにこ笑ってるだけなんやけど)るの見てたらな、さっきよりももっと近くでゆっきーの声が。 そしてゆっきーを叱るさっちゃんの声が。
…… ………
いつも通りー。 さっちゃんがゆっきー叱ってるんいつも通りー。
甲斐におったんを思い出すなぁ。 毎日賑やかやったん。
ゆっきーが政宗様に手合わせ申し込んでなー、政宗様もそらぁあんな熱くお願いされたら断られへんやん? やからずっと二人とも武器持って暴れとってんで。 その武器が本物ってとこが政宗様とゆっきーよねー。
俺はさっちゃんとこーちゃんと三人でそんな二人見ながらまったりしとったんやけどな。 さっちゃんが桜もちくれて、こーちゃんが水ようかんくれてん。 おいしそうなお菓子がめじろおし!
でもな、桜もち食べようと思ったらこーちゃんがずいって水ようかんプッシュでな。 こーちゃんのプッシュやったら見ぃひんかった事にできひんし、ではでは水ようかん頂こうと思ったらさっちゃんが桜もちをずずいってプッシュなん。
…… ………
あの時の空気は何や重たかったなぁ。 ほら、せちがらいっていうん? 俺最近全然せちがらくなかったんやけど、あの時はちょっぴりそんな気分やったん。
ぬーん。
「政宗殿ぉぉぉぉぉ!!!」 「shit!!来やがった!」 「あ、ゆっきーや。」
俺がせちがらい思い出に遠い目してたら、もうゆっきーとさっちゃんはすぐそこなん。
でもこのままやったらヤバない? やって、ゆっきーお馬乗ったまま全速力やで。 槍二本持って全速力やで。 さっちゃんもちょっと困ってる感じやしー。 あれ、あのまんまやったら政宗様のとこ一直線やと思うん。
「この真田幸村!政宗殿と今一度手合わせ願いたく、甲斐より馳せ参じた所存にござりまするぅぅぅ!!」
「…」 「…」
ほら、ゆっきー本気やで。 見て。 もうここまで来て、
来てって… ちょっと待って…!!
「今、俺が政宗様…!!!」
あかんやん!! 今俺政宗様やん!! 政宗様が俺で、俺が政宗様やん!!
えっ、ちょっとゆっきー俺の事見てへん? 見て、目ぇぎらぎらしてへん!? どうしよう!!
「ちょっと真樹緒落ち着いて。」 「やっておシゲちゃん…!」
大丈夫だよ、俺が相手するからっておシゲちゃんが言うけどでもゆっきーやで! おやかた様の素敵パンチを物ともしないあのゆっきーやで!? あのまんまやったらゆっきーがやってくるの俺のとこ…!
無理! 絶対無理! 俺、ゆっきーの槍なんか受け止められません…!!
どうしよう。 どうしよう政宗様! ゆっきーが、って振り返ったらやぁ。
「OK、OK、上等だ。」
…… ………
「ぬ?」 「受けてたつぜ真田幸村ぁぁぁぁぁ!!」
政宗様が。 俺な政宗様がいつも通り刀六本持って土煙が迫ってくるお庭へ走り出して行きました。
「…えー…?」
まじで。
……俺、六本刀持てたんや。 すごい俺。
今度やってみようかなぁ。 じぃ、って今は政宗様な手ぇを見た。 この手ぇでも六本刀持てる自信ないけど…!!
………まじで!!
「ちょっと梵!真樹緒の体に傷一つでもつけたら許さないよ!!」
「Ha!!誰に言ってやがる!」
え? おシゲちゃん、怒るとこそこ?
ええの。 迎え撃ってるくだりはええの?
ちょいちょい、っておシゲちゃんの着物を引っ張っても「真樹緒は下がってなさいね。」ってにっこり笑われるだけでやぁ。 ぐしぐし頭撫でられるだけでやぁ。 俺ちょっと切ないわ!
「政宗殿ぉぉぉぉ!!!」
「コラ旦那!いい加減言う事聞け…!!!」
「真田幸村ぁぁぁぁ!」
「政宗殿ぉぉぉお!!!……お?」
「え?」
「よく来たな真田幸村!」 「なっ!!真樹緒殿!?」 「えっ!?ちょっとどういう事…!?」 「余所見してると怪我するぜェ!?」
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