「こじゅさーん。」 「どうした。」 「えだまめって引っこ抜いてええのー?」
今日からな、夏のお野菜の収穫やねんで。 こじゅさんの畑は大豊作で、はしっこのあぜからカボチャやろう?きゅうりやろう?ナスになー、俺の前にはおいしそうな実ぃつけたえだまめがわっさわっさ生えてるのです。 ほっかむりを直しながらでごめんやでー。 真樹緒ですよこんにちは!!
「ああ、力一杯引き抜け。」 「おす!!」
収穫一日目はきゅうりとえだまめでやぁ。 朝からな、畑でこじゅさんのお手伝いなん。 こじゅさんが水やりしてる横で俺草引きしてなー。 畑がきれいなったところでついに収穫やで! えだまめ抜くんー。
「うんしょー。」
両手に抱えれるだけえだまめ抱えてよっこらせ。 顔がちょびっとちくちくするけど気にしない! えだまめ抜いたら茹でてもらうんやもん! お塩で茹でておやつに食べるんやもん! 政宗様もえだまめでお料理作ってくれるってゆうてたし!
ぬー。 楽しみー。 えだまめ楽しみー。
縁側でまったり食べたいなぁ。 政宗様とこじゅさんとこーちゃんと並んでやぁ。 やから俺、こんなちくちくにはくじけません!
「足元気をつけろよ。」 「うい!」
お隣のあぜできゅうりをぱちんぱちん収穫してるこじゅさんは俺とお揃いのほっかむりなん。
大丈夫こじゅさん! 俺にまかせて。 そんな不安げな顔せんでもえだまめぐらい一人で収穫できるてー。
「むん!」
あんな、引き抜く時は腰が大事やねん。 足をしっかり踏ん張って、腰にぐぐっと力入れて。 はい、いっせーのーっせ!
「えーいやっ!」
ほんならずぼぼって! えだまめずぼぼって!! 思った以上に勢いよくえだまめが抜けました!
「おおお…!!」
めっさ抜けた。 一気に抜けた。
な、中々やるやんえだまめ… ちっさいお豆やと思って俺ちょびっと気ぃぬいてたわ! ただのちっさいお豆やと思ってたら結構力強いやん…!! あまりの勢いに俺しりもちついてもうたよ!! やるやんえだまめ…!!
「ぬーん…」 「…何やってんだ。」 「…えだまめがちょっと強敵でやー…」
ほら。 よわよわなお豆やと思ったらところがどっこいー。 俺にしりもちをつかせるぐらいの力持ちでした! でもえだまめ離してへんで! ほめてやー。
「ほら起きろ。」 「わぁ!」
しりもちついたまんまこじゅさんに笑ったら、こじゅさんがえだまめごと俺を持ち上げて立たせてくれたん。 流石こじゅさん! えだまめより力持ち!! 俺の体もふわっと浮いてしまうよー。
「真樹緒。」 「おちゃめやん…」
ほら。 えだまめの意外な力強さにテンション上がった真樹緒君のちっちゃいおちゃめやん。 こじゅさんはえだまめより力持ちってそんなん知ってるやんー。
そんな顔せんとってぇなこじゅさん。 せっかくのイケメンが台無しよ!
「でもちゃんとえだまめ採ったん。」
ほらこじゅさん見て。 えだまめ。
ゆでてー。 ほんでみんなでおやつにしよー。 ゆでて!
な? 俺、ちょう楽しみなん。
「ぬー…えだまめー…」 「…涎が出てるぞ真樹緒。」 「ぬっ!」
おおお! 大変! ちょっとゆがいたえだまめに思いを馳せてたらうっかり! 俺としたことがよだれなんて…!
慌てて口元ぬぐおうと思ったらその前にこじゅさんがぐいって。 そんなに腹が減ったのかって笑いながら俺の口ぐいって。
「んん、」 「土がついてるじゃねぇか。」
笑ったまんまこじゅさんは俺のほっぺたをぐりぐり。 それから頭もわしゃわしゃ。
ええー? そお? そんなとこにも土ついてる? お尻だけやと思ったんやけど。
「豆の前に湯だな。」 「ぬ?おふろ?」 「そのなりで城に上がらせねぇぞ。」 「わぁ!」
お風呂やて! こじゅさんが俺をやっぱりえだまめごと抱っこしてほっかむりを取ったん。 湯殿に行くぞ、って。 俺のほっかむりもこじゅさんが取ってやー。
真横におるこじゅさんからはお日様の匂い。 汗がじんわり浮かんでるおでこにちょっと擦り寄った。 やってな、俺こじゅさんの匂い好きなん。 「汚れるぞ」ってこじゅさんが言うけど気にしないー。 こじゅさんにくっつくんやもん。
「くすぐってぇな。」 「我慢してやー。」
くくって笑うこじゅさんに構わずすりすり。 政宗様にくっつくんも好きやけど、こじゅさんにくっつくのも好きなんー。 ぬー。
「真樹緒」 「やーやしー。」
こちょばいのが嫌やったら早く俺をお風呂に連れて行ってちょうだいねー。 そうやないと離れませんよー。 くっつき虫な真樹緒君やねん。
ほんでお風呂出たらお豆! えだまめ食べるんー。
「あ、」 「あ?」
そうや。 俺、いいこと考えた。 めっさいいこと考えた!
「真樹緒?」 「なぁなぁ、こじゅさんー。」 「どうした。」
俺、今からお風呂やろう? 泥だらけやし、汗かいたし、それは嬉しいんやけどな。
ほら。 こじゅさんも一杯汗かいたやん? 土だらけやん。
そこでですよ。
「こじゅさんも一緒にお風呂はいろー。」
お風呂。 うちのお風呂めっさ広いやん。 泳げるぐらい広いやん。 やからこじゅさんも一緒に入ろう。
「お風呂ー。」
なぁってこじゅさんのほっぺたをぺちぺちしたらこじゅさんちょっとびっくりしてるん。 やぁ、そんなびっくりせんでもー。 ほら、大勢でお風呂入るんて楽しいやん。
「いや、俺は…」 「だめだめー。」
もう決定やもん。 俺、こじゅさんと一緒にお風呂入るん。 こじゅさんと一緒やないとお風呂に入らへんもーん。 ちょっとわがまま真樹緒君ですよ。 困ってるこじゅさんなんて気にしないんですよ!
こじゅさんの腕から飛び降りて、こじゅさんの手ぇをぎゅー。 さぁこじゅさん覚悟しぃやー。 今日は俺と一緒にお風呂! さくさく行きますよ! それからその後えだまめもよろしくね!
「っこら待て真樹緒…!!」 「れっつらごー!!」
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