「それにしても。」 「ぬ?」 「この騒ぎは何事かね。」
松永さんが俺をだっこしたまんまちっちゃいため息を吐いた。
風魔と甲斐の忍の馬が合わないのはいつもの事だが、今日は一段と。 そう言いながら松永さんはお屋敷の縁側座る。 どうやら俺はお空から落ちて、松永さんのお部屋の前のお庭にいるみたいです。 真樹緒ですよこんにちは!
「えーっとー…」
やぁ、これにはふかーい訳があって。 言うたらちらりと俺を見る松永さんの視線がちくちく。 何や強い視線がちくく。 俺、何にも知らんもーんってそろーりその視線を逸らしてみたら「真樹緒」って。
「……うぃ。」
とーっても。 とーってもその視線が痛いです!!
「まぁ、卿の顛末が発端だろうが。」 「ぬー?」 「これは何だね。」
ふに。
「にゅっ!!」
ほんならじぃ、って俺を見下ろしてた松永さんが俺のおっぱいふにって掴んでん。 松永さんが! 俺のおっぱいふにって!!
ちょっと政宗様より優しげやで。 そぉーっとふにってされてん。
「やぁ、ちょっと俺今、女の子でなー。」
ふにふにされてるおっぱい見ながら「柔らかいやろー?」って笑っててんけどやぁ。
あれ? でもあれ? 松永さん知ってたん? 俺が女の子になってもうた事。 言うたっけ?
「竜の右目が騒がしくてね。」 「あー…こじゅさん。」
そっかー。 さっきこじゅさんがえらい勢いで政宗様の事怒ってたからやー。 聞こえたんや。 真剣、鬼みたいやったよなぁこじゅさん。
「孕ませられそうになったそうじゃないか。」 「…はら?」
はらま? ぬー? 何、はらま。
俺政宗様にはおっぱい触られただけやで? 松永さんよりもちょびっと強くもにもにされたん。 松永さんはふにふにやけど、政宗様はもにもにやったん。 まぁ、どっちもこちょばいんやけどな!!
「卿には危機感というものが足りない。」 「ききかん…」
えー? ほんま何の事よー松永さん。 そう言えばこーちゃんもそんな事言うてたような気ぃするけども。 何が危機なんやろう…
やぁ、そんな事よりもやで。
「松永さん。」 「何かね。」 「何で俺、床に寝転ばされてるん今。」
さっきまで松永さんのお膝におったやん、俺。 おっぱいふにふにされとったやん。 それやのにいつの間に床に。
背中ひやっこくて気持ちええけどやぁ。 松永さんが覆い被さってきたらちょびっと動きにくいやん。 やからのいてやーって。 松永さんの肩押してみたんやけどびくともしません。
「そういう所に付け込まれるのだよ。」 「ぬっ!」
全然全く動かへん松永さんは笑いながら俺のおでこにちゅうするん。 頭ゆるゆる撫でながらちゅうするん。 頭は気持ちええねんけどちゅうはこちょばくってな。 ほっぺたとかおでことか首がもぞもぞ!!
「やー、松永さんお髭こちょばいん!」 「どこまで笑っていられるかな。」 「やぁ!」
ちょっとー! 松永さんどこさわってるん! いきなり足触ったらびっくりするやんー!! おっぱいの時もそうやったけど、気をつけてくれなくちゃー。
「優しくしているだろう?」 「…何か松永さんやらしいん…」 「私とて男だ。」
卿を愛いと思っているのは、何も竜やその右目だけではないのだよ。
笑ってるけど松永さんやらしいん。 手ぇ、ものすごい足撫でてくるねんで。 でもその手ぇ優しいから何や足震えてきてもうて。
「んん…っ、」 「辛抱はよくない。」
声を出したまえ。
そんな事言うけど、それどころやないん。 松永さんが色んなところにちゅうするから俺、何にもしてへんのにちょっとくたくた。 さっき足にもしたやろう?
もう、もう。 松永さんほんまに止めて。 は、って息はいて松永さん見上げたら笑うんやで。 俺がこんなにくたってなってんのに。
やぁ、でもいつもの意地悪な笑い方違うん。 ちょっととろっとなりそうな笑い方なんよ。 やから俺松永さんに手ぇ伸ばしてお願い。
「松永さん…、」
かんにん。 松永さん、かんにん。 俺力抜けてまう。 やから俺の上からのいて。 ちゃんとお願いしたのに。
「さぁ、何処からあばこうか。」 「ぬー…」
松永さんが俺の着物の中にするっと手ぇ入れてきて。 熱くなった頬っぺたにまたちゅうするん。
もう、俺訳わからへんやん? 頭もぼーっとしてきてもうたしやぁ。 じぃ、って見てたら笑ってた松永さんが笑ったまんま。
「まつながさん…?」 「竜の右目は鼻が利くようだ。」 「…?」
寝転んでた俺の体をぐいって引っ張って。 ほんなら俺が今おったとこにドスッて。
「………ぬ?」
やぁ、きらっと光る長い刀がドスッて。 あれどっから。 この刀どっから? 物凄い勢いで刺さってるその刀をそろっと見上げてみたらな。
「うちの娘に手ぇ出すたぁ、タマ取られる覚悟は出来てんだろうなぁ松永。」
こじゅさん。 鬼のようなこじゅさん。
…… ………
何だかパリッっと電気を帯びているこじゅさん。
「……こ…こわい…」
怖い。 こじゅさんが怖い。
「目を離す卿らが悪いのだよ。」
いやはや。 実に。 もう少しで手遅れになるところだ。
松永さんは笑ってるけど、さっきみたいな優しいもんや無くて。 鬼みたいなこじゅさんは刺さった刀を抜き取って構えとるし。
「抜かせ。」 「くく…」
「こじゅさん…松永さん…」
何だかとってもここら辺りの雰囲気が薄ら怖いです…!!
ちょ! 誰かこの空気なんとかして!!
政宗様!! 政宗様どこにおるん!!
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