子供たちと三成君の小ネタ


今川さん家族と四国家族が揃って奥州でお泊まりです。
皆が止まりに来てるからさっちゃんとゆっきーもおいでませー。
なんてお手紙が届いたのでもちろん甲斐組もやってきておりますよ。
親は親同士、子供達は子供達同士でそれぞれ違うお部屋で楽しく過ごしていたのですが、子供達がいる部屋でお花見の話題になり、子供達の中で一番年長で博識なひなぎくさんが。


「小田原の桜はたいそうみごとだとか。」


とかなんとか絵巻物で見た小田原の桜に思いを馳せたんです。
ものすごい綺麗な絵巻物だったとかです。
じゃあそんな話題にのっかってくるのは奥州の双子とたんぽぽさんで。


「それはまことにございますか、ひなぎくねえさま!」
「おうしゅうよりもでございますか、ひなぎくねえさま!」
「わらわのおうちよりもでごじゃりますか、ひなぎくねえさま!」


わきたつ子供達。


「やまざくら、かすみざくら、そしてしだれざくらが見事とか。」


わたくしも、ははうえにいただいた絵巻物でしか見た事はありませんが。
ははうえはごらんになった事があるごようすでした。
それはそれは美しいけしきだとおっしゃって。


ひなぎくさんがうっとりとため息を吐きながら言うので、その桜がとても気になった子供たち。
小田原ならば奥州からはそんなに遠くも無いし、見に行けるんじゃないかと話しあいます。
ほらあの辺りは昔政宗様が平定しているので、特に危ない感じもありませんし。
小田原城下なら、人通りもあるしで安心だし。


そこでひなぎくさん考えます。
わたくし達だけで行くとははうえ達にしんぱいをおかけしますし。
ならばいっしょに来て下さる方がいれば…


うーんと考えてふと見た縁側。
自分達の邪魔にならないように、けれど大事なものを守る様にそっとそこにいるのはひなぎくさんの大事な兄上です。


「あにうえ、あにうえ、」
「…どうした。」
「あにうえ、わたくし小田原の桜がみとうございます。」


三成君は静かに子供達の遊びを見守っていました。
怪我をしないか。
危ない事をしないか。
もしそんな事があればいつでも手を伸ばせるように静かに縁側に座っていました。

もちろんキネマ主達が一緒にお茶でもどうぞって誘ったんだけれども、やんわり断って子供達の傍にいました。
ひなぎくさんが生まれてちょっと人間が丸くなった三成君でひとつ。


「小田原はここからもちかいとぞんじております。」


あにうえがごいっしょして下されば、わたくし達だけでも足をはこべるとおもうのです。
あにうえ。


「ひなぎくねえさまのあにうえ、まきのからもおねがいもうしあげます。」
「ひなぎくねえさまのあにうえ、まさおみからもおねがいもうしあげます。」
「ひなぎく姉さまの兄うえ、たんぽぽからもおねがいもうしあげまする。」


四人の期待に満ちた目が三成君に集まります。
きらきらぴかぴか。
それは眩しくてちょっと目を細めてしまう三成君。
暫く考えそして小さく笑った後、ひなぎくさんの頭を撫でて。


「…お前達の母上が良いと言ったらな。」
「「「「!!!」」」」


「おききしてまいりますおまちくださいませあにうえ!」
「まきのもまいります!」
「まさおみもまいります!」
「たんぽぽもまいります!」


皆素直ないい子。
すぐさまお部屋を出て母上達がお茶してるお部屋へ猛ダッシュ。
三成君はからっぽになった部屋を見て、ふう、とため息を吐いて、よっこいせと立ち上がり、明日の天気を刑部さんに聞けばいいと思います。
ニルの刑部さんは緑ルートでも三成君と和解してるよ沢山の時間をかけて。
まだまだ顔を合わせるには時間がかかるけれども、お手紙のやりとりはしてたりするので明日の天気を聞くぐらいは気まずい事なんかないのです。
刑部さんなら三成君の事情を知ったら雨でも晴れにしてくれると信じてるわたし。


さてさて、その頃の子供たち。
母上達のお部屋に走って行った子供達。
失礼します!と一声かけて扉を全開します。


「ははうえ、あにうえと一緒に小田原の桜をみにいってもよろしいですか!」
「ははうえ、まきのもいきとうございます!」
「ははうえ、まさおみもいきとうございます!」
「ままうえ、たんぽぽもいきとうごじゃります!」


お茶を飲みながら井戸端会議にお花を咲かせていた母上達は突然の事に目をぱちくり。
そこでちゃんと年長のひなぎくさんが説明します。

まきのとまさおみとたんぽぽと花見のはなしをしておりまして。
小田原の桜が見事だというわだいになり。
小田原ならばここ奥州からも足をのばせるのではないかと思いました。
あにうえにそうだんもうしあげましたところ、ははうえがよいとおっしゃったら連れて行って下さるとのこと。
ですのでみなでこうやってお願いもうしあげにまいりました。


真剣な子供達になるほどと頷く母上達。
けれども、やあでも危なくないやろか、とか。
子供達だけでは、とか。
近いゆうてもねえ、とか。
心配は尽きません。

ここで四国のとーちゃんが空気を読めずに「おうおうひなぎく、とーちゃんが連れてってやろうか」ってほろ酔いで言いだすんだけれども、ひなぎくさんは絶賛対父上反抗期中なので「けっこうですちちうえ。」って冷たくばっさり切り捨てます性格はおかみ寄りだよ。
四国のとーちゃんは(に、関わらずですが)子供がちょうぜつ大事ですが、そこはらいおんはーとなので後で明智の光秀さんに慰めて貰うから大丈夫です。


「ははうえ、」
「ははうえ、」
「うーん…三成君おるから大丈夫やろうけど。」


母上らもいったらあかん?
みんなで行くほうがたのしくない?


「それはまぎれもないじじつでございますがははうえ、」
「それにいささかのはんろんもございませんがははうえ、」
「われらだけでいってみたいのです。」
「われらだけのぼうけんがしたいのです。」


「ぬーん、なるほどー。」


そういう事やったら。


子供達だけの遠出って何かわくわくしますよね。
大人と一緒では味わえないドキドキ感がありますよね。
ちょっとの距離の遠足でも、すごい冒険に向かう気持ちになれますよね。
そういうテンションの子供達はゆずりません。


「そなたらだけでなど、危ないでおじゃる。」


そなたは大事な麿の姫。
一人でなどやれぬでおじゃるよ。


「ぱぱ上さま、ひなぎく姉さまの兄うえも一緒にごじゃります!」


今川さんは一人娘が可愛くてしょうがないので、いくら伊達の領地内といえども手放すのは辛いのです。
逆にひまわりさんは可愛い子には旅をさせろなスタンスなので、たんぽぽさんが楽しいのなら自主性に任せる感じ。
それに三成君もいるので心配はしておりません。


「ははうえ、よろしいですか?」
「…そうですねえ。」


あなたの兄上がそう言うなら。
お任せしましょうか。


「ははうえ!」
「けれど、今から出るにはもう日が暮れてしまいます。」


今日は早く寝て、明日の朝小田原に向かいなさい。
破籠も用意しておきましょう。


明智の光秀さんも基本子供の自由にまかせます。
アニキはほら、自分の子供構い倒したいタイプだと思うのでやたらとちょっかいかけてはひなぎくさんに「うるさいですちちうえ。」ってあしらわれてる。
男の子なら一緒に騒げたんだけれどもね!
ひなぎくさん女の子だしね!
もうちょっと大きくなったら多分父上の見よう見まねでからくり作り出してハマっていくんだよあにきの子供だもの。


「おべんとう!俺も二人のために作るからね!真樹埜ちゃん政臣くん!」
「たのしみにございまするははうえ!」
「たのしみにございまするははうえ!」


はりきってるキネマ主ですが、キネマ主よりも政宗様がお弁当気合い入れて作りそうですけれどもね!
母上達のコミュニケーションを邪魔は出来ないので明日の朝は三人の母上達で子供達のお弁当づくりです。


さて。
明智の光秀さんのお許しが出たので、ひなぎくさんはオッケーです。
キネマ主も三成君の事はとっても強いお侍さんだと知っているので双子もオッケーです。
ちなみにお忍びさんとお侍の修行も始まっているので、それなりに戦えたりしますオッケーです。
政宗様も子供達は大事ですがやりたい事に口を出す気は無いのでオッケーですでもこっそり小太郎さんに後を追わせると思います。
たんぽぽさんは娘溺愛の今川さんが反対するんだけれども、ひまわりさんが何とか言い含めてオッケーを貰います。


「、それにしても小田原までの足はどうやって。」
「天君を連れて来た。」


車から機巧は外してある。
危険は無い。
あれならばひなぎく達が全員乗っても大丈夫だろう。


ああ…私はてっきり暁丸でも持ちだすのかと…
冗談でも恐ろしい事を言うな明智。


製作段階にも関わらず暴れまわるからくりになぞ、ひなぎくを乗せられるか。


という事で天君で参ります天君。
あの大阪城で暴れまわってた馬車君です天君。
あのままなら車の中身は大砲だったり雷だったりするので、ちゃんと人が乗れるような車に変えて連れてきていました。

何から何まで準備は万端。
三成君に隙はありません。
妹を喜ばせるためなら力は惜しみません。


さてさてやってきました次の日。
刑部さんのおかげでからりと快晴です。
昨日までお城のてっぺんにあった灰色の雲はどこへ行ったのでしょう。
青空広がるお花見日和です。


「ヤレヤレ、よい仕事をしたワ。」


海の向こうで刑部さんは満足げかと思います。
すごいですね刑部さん。
あのでっかい数珠でどうにかしたんだと思います。


「おはようございます、ははうえ!ちちうえ!」
「おはようございます、ははうえ!ちちうえ!」
「おはようー。お弁当できてるよー。」
「Good morning my dears!!」


「まま上…ぱぱ上…おはようごじゃりまする…」
「おはようでおじゃるたんぽぽ。」
「おはよう、たんぽぽ。顔あらっておいでねえ。」


「おはようございまするははうえ、ちちうえ、あにうえ。」
「おう!おはようさん!」
「おはようございます、ひなぎく。」
「おはよう。」


朝からお母さん達は頑張ってお弁当をつくりました。

おにぎりをにぎって、お芋の煮たのをつめて。
さわらは酒粕とお味噌につけたのを皮までぱりっと焼いたよ。
お漬物は小十郎さんがつけたやつを皆にふるまって。
焼き豆腐には甘いお味噌をつけて食べます。
牛蒡の甘辛いためもおいしいよ!

デザートにはこれまたおシゲちゃんと成実さんが手をふるったちまき。
何でちまきかと言うと私がちまき食べたいからです今ちまき。
柏餅じゃなくてちまきが食べたいんだ…


という事で準備も万端、お弁当も人数分受け取りましたし小田原に向かいましょう。
小田原に向かうまでで一体どれだけかかっているのか長い…!
ほんとすみません長い…!
これからです。
これからなんですお花見。

ちょっと動きやすい、でも可愛い感じの着物に四人着替えて天君に乗りこみます。
いってきますと手を振る四人を見送るのは奥州家族と四国家族と甲斐のおふたり。
ちょっと心配してるキネマ主をよそに笑顔の政宗様。


「風魔。」
「(しゅた!)」
「石田にはばれても構わねェ、真樹埜と政臣には絶対に知られずに守れ。」


Go it!!


「(しゅばばばばば!)」


「佐助。」
「はいはい〜ってね。」
「姫と若君達を護衛しろ。」


見つかるなよ。
気付かれてもならん。
その時は減給と思え。


「りょーかいっと!」


幸村さんは子供達の事をとっても大事にしてくれてるので、そんな子供たちに自分の忍びをつけるのもやぶさかではないよ。
ゆっきー、と首をかしげるキネマ主に


「本来ならば某が行きたいのですが。」


邪魔をするのは本意ではありません。
自分の忍の力は信じているので佐助に任せまする。
苦笑いですが頼もしく頷いてくれます。



「おい…明智よう…やっぱり暁丸に後を追わせた方がいいんじゃねぇのか…?」
「ひまわり…やはり心配でおじゃる…麿も小田原に行ってはならんか。」


一人娘が心配なのはどこのお父さんも一緒みたいですね。
でも母は強いので。
こんなときやっぱりお母さんなので。


「ひなぎくに嫌われたいならどうぞ。」


もし暁丸が行って、桜を折りでもしてごらんなさい。
口をきいてくれなくなるだけでは済みませんよ。


「あれやあ、義元さん。そんな心配せんとー。」


たんぽぽやったら大丈夫よ。
子供らだけで行くって喜んでたのに、父上が行ったのばれてしまったら怒ってしまうんちがう?


奥さんが慰めるのが大変ですね!
政宗様は小太郎さんを飛ばしてしまいましたけれども。
幸村さんは子供達はすべからく守るものだと思っているので佐助さん飛ばしてしまいましたけれども。
でもこの二人なら暁丸や今川さんと違ってばれる事がないので大丈夫だと思います。


さてさて子供達サイド。
天君に揺られてまったり小田原への旅です。
窓から見える景色を楽しんだり。
四人で今日のお弁当は何だろうとお話してみたり。
三成君に話しかけてみたり。
休憩に寄った小川で足を洗い、きゃあきゃあと遊んでみたり。


「あにうえ!さかながおよいでおります!」
「ひなぎくねえさま!あれ、あそこにも!」
「まさおみ!あしのしたを何かとおったでおじゃる!」
「たんぽぽねえさま、かにでございます!」


小田原まで後半分のところぐらです。
ぽかぽか暖かい陽気、辺りは自然がいっぱいで敵もいない。
とても平和な朝です。
子供たちは何がおこっても楽しくてしょうがありません。


「かーわいいねえー。」
「(……)」
「…やはり着いて来ていたか貴様等。」
「大丈夫大丈夫、絶対ばれない様にするからさ。」


俺様達を誰だと思ってんの。
ちょっと挨拶しにきただけだって。


「当然だ。」


私の妹の顔を潰す様な真似は許さん。
誰の差し金か知らんが水を差すな。
即刻気配と姿を消し去れ。


「あにうえ?」
「ひなぎく。」
「どなたとお話されていたのですか?」


お声がきこえましたが。


「いや、それよりたんぽぽと真樹埜と政臣はどうした。」
「!そうですあにうえ!」


あちらにたんぽぽがねこを見つけまして。
あまりにも小さくかわいらしいさま、あにうえにもごらんいただこうと思って呼びにまいりました。


ねこですねこ。
このまま無事に小田原についてもいいのですが、無事についたらそれこそ花見しかしなくなるのでちょっとここいらで事件でも。
子猫を見つけた子供達はその子猫が可愛らしいもので後を追って行ってしまいます。
まだ明るいし、辺りは開けた道で、危険なものは何もないので特に気をつける事も無く。
ひなぎくさんも可愛らしい猫を兄上に見た貰いたくて天君のにもたれて休んでいた兄上を呼びに来たのです。


で、その猫をおいかけていくのですが双子もたんぽぽさんもいません。
声もしません姿も見えません。
名前を呼びますが返事も返って来ませんでした。


あたりはとても平和で、自然がいっぱいなのに人の気配がなくてちょっと不気味です。
さっきまでとても陽気な朝の風景だったのに、途端にどこもかしこも怪しく見えます。
何だか不穏な空気を読み取ったひなぎくさん。
明智の光秀さん譲りの観察眼で状況を把握しようと努めます。


「あにうえ、」
「ああ。」
「わたくし達がねこをみつけねこを追うまでのあいだ、出会ったものはおりませんでした。」


それならば真樹埜と政臣、そしてたんぽぽがみずから歩きそしてその後ふそくの事態にまきこまれたかとひなぎくはすいそくします。
あれらの足でむかえるはんいは限られております。
ここからならばあの、


「あの…ふるでらなどがあやしいかと。」
「依存無い。」


お前は天君で待て。
私が行く。


「いいえわたくしもともに。」


一番としうえのわたくしが目をはなしてしまったがおちど。
三人のぶじをたしかめとうございます。
どうかともに。


ひなぎくさんは特に刀や薙刀を習っている訳ではありません。
女の子らしくお作法やお茶、手習いに少し興味のある商学などを教わってる以外はとても普通の姫君です。
ただとても肝は座っていて。
自分の大事な者が傷つけられたりするのに敏感で。
もしそんな事があれば誰が相手も許さない決意で。
そんな事だから、自分の大事な弟分と妹分がもしかしたら危ない目にあってるかもしれない今、一人で待っているだなんて出来なくて、赤い目がちょっと据わっているひなぎくさんです。


「もし真樹埜や政臣、たんぽぽがけがでもしていたならわたくし、れいせいではいられません。」


このひなぎくさんは闇属性持ってるかもしれませんね。
闇と炎属性で。
きっと武器とか無くてもお市さんみたいな闇の手ちゃんっぽいの出せたらいい無意識に。
ええっと何にしよう。
何出せる事にしよう。
鮫とかですか海の幸。
真っ黒な鮫がBASARA技っぽい感じで出てきて敵を襲うんですねひと飲みですこわい。
目だけきっと真っ赤なんですよこわい。

たまに炎属性も付加されるから何かたまったもんじゃありません。
兄上はBASARAに開花してしまった妹を、さすが私の妹だとものすごく自慢げに納得し、でもまだコントロール出来兼ねているのを少しはらはらしながら見守っています。
もちろん妹に手を出す輩がいたら許しません。
刀の錆にされると思います。


さて、一方の双子達ですが。
猫をおいかけて案の定古寺までやってきて、そこを根城とするゴロツキに捕まっていました。
着物は上等ですし、言葉づかいもやはり違うので、どこかの公家の姫と若君だと思われて捕まっていました。
そこにはもちろん佐助さんと小太郎さんがいるのですが、うっかり出て行く事も出来ずに様子見です。
まさか子供達の前でゴロツキを殺す訳にもいかないし、正体をばらす訳にもいかないので。
特に双子は変な所で目ざといので、気を抜くとばれてしまうのです。


もちろん双子達も黙って捕まっておりません。
守るべくはたんぽぽ姉様です。
蝶よ花よと育てられたたんぽぽさんは見かけの通り姫ですので、武芸の一通りの事を習い始めている双子にとっては全力で守らなければならない姉様なのです。
でも今川さんの娘なので。
それなりに不思議な力を持っている姫だと思いますたんぽぽさん。
父上から頂いた扇子がそれはもうピンチの時に凄い力を発揮してくれると思います。
そしてひまわりさんの血も引いているので度胸はあるよ。
物怖じもしないよ。
ゴロツキに絡まれたって屁でもないよ。


「まきのとまさおみにさわるなでごじゃる!ぶれいもの!」


基本二世達はゴロツキ相手ぐらいじゃうろたえないよ。


「おさがりください、たんぽぽねえさま。ここはまきのが。」
「おさがりください、たんぽぽねえさま。ここはまさおみが。」
「何をもうすでごじゃる。そなたらがわらわの後ろへきやれ。」


としわかを守るのはとしうえのつとめでごじゃる。


子供達は立派に育っております心配ないよ。
でもほらゴロツキも子供が相手だから舐めてかかるんですよ。
何生意気言ってんだって刃物を出してきたりするんですよ。
そして子供等をどこの奴らかを突き止めて、身代金をたんまり頂いちまおうぜと画策するわけですよテンプレ!


「あーもーどこにでもいるんだねぇ、金が全てな馬鹿が。」
「(…)」
「ちょっと風魔、頼むから早まらないでくれよ。」


あんたが風おこすと漏れなく真樹緒んとこの双子ちゃんにばれるんだからね!
苦無も羽も禁止だよ!
特に政臣には最近俺等で稽古つけてんだから何かの拍子で気付かれたらどうすんのさ。


「(ぶすっ!)」
「そんな顔したって駄目!」


仲良いですねお忍びさん。
わたしさすこたもこたさすも食べれる口ですよもぐもぐ。
いえいえ小ネタに戻ります小ネタ。


でも長い。
お花見まで長い。
もう早く小田原行きたい私。


という事で三成さん投入です。
展開早いですか。
でもだって私はやくお花見行きたいんですじゃなきゃ終わらないんですゆるしてください…!


こっそりではなく堂々と古寺に入った兄妹はやっぱり堂々と双子達を探します。
ここがゴロツキの根城だとかそんなの関係無いよ。
いっそ迎え撃つ気満々だよ。
入り口を入った辺りからそれなりに襲撃されたけれども、もちろん三成君がそれを許す訳も無く、汗もかかずに駆逐されます。
みごとな手さばき。

何て言うかあの三成さんの居合すごいですよね。
何も見えないっていうか。
光しか見えないって言うか。


「ひなぎく。」
「はい。」
「奴等はどこにいると思う。」
「はい、あにうえ。」


みずからの身をみずからの力のみでまもれぬよわきものは、しゅうだんを作り、こそこそといりぐちからもっとも遠いところでかたまっているものとははうえが申しておりました。
そしてさらにはひきょうにも逃げみちをかくほしているものだと。
このてらの西が川につうじでおりまする。
ふとどきものは寺の西のおくにおりますかと。
われらにきづけば川ににげる心づもりでおりましょう。


「北には山がある。」
「真樹埜や政臣、たんぽぽをりようするのならやまみちはえらびません。」


けわしいあくろをゆくよりも、川を船でくだるほうがよりはやくにげきれますかと。
わたくしなら船をよういしておきます。


「お前が聡くて私は鼻が高い。」
「あにうえ?」


いい子だ、と三成さんはひなぎくさんの頭を撫でて西側の川へ向かいます。
恐らく船は既に小太郎さんや佐助さんに破壊されていると読んでいますが、そこに皆がいる事は確かなので川側から中へ乗りこむよ。
乗りこんだ先にはちょっとゴロツキにぼろぼろにされた政臣君がいます。
真樹埜さんとたんぽぽさんは女の子なので乱暴はされませんでしたが、政臣君は男の子なので手をだされていました。
けれどもそこは侍の子供、どこか隙が無いかと辺りを窺っています。


そんな時に三成君が登場です。
颯爽と登場です。
ざわつくゴロツキ。
いろめきたつ子供達。


「ひなぎくねえさまのあにうえ!」
「無事か。」
「このようなもの、こたろうとさすけのしゅぎょうにくらべたらいたくもかゆくもありません!」
「……そうか。」


姉とたんぽぽをよく守った。
後は私に任せろ。
不届き者共を懺滅する。


「はいっ…!」


で、三成君の居合がさく裂する訳です。
もちろん子供達の前なので血は出さないし斬らないよ。
思いきり峰打ちですが、威力ははんぱないのでゴロツキは起き上がれるはずもありません。
その間お忍びさん二人はここに居ないゴロツキをやっつけたりお仕事はちゃんとしてるよ。
一応子供達の見えない所でちゃんとお仕事してるよ。


子供達も威勢はよかったし度胸もあったけれど、やっぱりとても怖かったので。
刃物を持っている大人は自分達よりとても大きくて恐ろしかったので。
精一杯気力で耐えて我慢してこころが限界です。
ゴロツキが全員三成君に成敗されて何の心配も無いと分かった瞬間泣いてしまいます。


「ひなぎくねえさまのあにうえっ!」
「あにうえっ!」
「おそろしゅうごじゃりましたあにうえっ!」
「あにうええええ!」


ほらまだみんな小さいから。
多分上から11、9、7歳ぐらいだから。
三成君が頼もしくて頼もしくて。
思い切り三成君に飛びついてぎゅう。
三成君はため息を吐きながらも四人の頭を順番に撫でてくれるのです皆の兄上。

ちらりと視線を上げるとぼろぼろの屋根裏には佐助さんと小太郎さんが。
後始末と報告は任せる、と無言で伝えて視線を妹たちに戻します。


「…天君へ戻るぞ。」
「「「「っはいっ!」」」」


さあやっとお花見!
お花見…!
天君へ戻ってからは平和な旅路です。
でも真ん中の三成君から皆はなれません。


三成君はお説教などはしませんでした。
何が悪いのかも妹たちは十分分かってるからです。
二度と同じ事は繰り返さない賢い子達だと分かっているからです。
だから怒りもせず、注意もせず、ただただ行くぞと背中をぽんと押しただけでした。
これが母上達なら怒られてるんだけれども、兄ならではの役割をあえて貫く三成君です何かすごいお兄ちゃんしてる三成君すごい。


「ひなぎくねえさまがうらやましいでごじゃる。」
「どうかんにございます、たんぽぽねえさま。」
「どうかんにございます、われらもあにうえがほしゅうございます。」


あらあら三成君のお株が上がりっぱなしです。


「あにうえは、わたくしの自慢のあにうえです。」


ひなぎくさんも兄上が褒められてご機嫌です。
断然父上よりも兄上の方が好きかと思いますひなぎくさん。
ざんねんですねあにき!

双子とたんぽぽさんはひなぎくさんの兄上がとっても羨ましくなってお家に帰って「わたくしたちもあにうえがほしです!」ってご両親にお願いに行ったらよいかと思いますだそく。


さてさてお花見ですが。
何だか書きたい所が終わってしまたので本当に普通にお花見するしかありませんどうしましょう。
小田原城の城下についた一行は素敵なお花見スポットを見つけてお弁当を広げて。
もちろん三成君の分もあるよ明智の光秀さんが作ってくれました。
冷たい水もほてった体をうるおしてくれます。

おにぎりに煮物、味のついたお魚、美味しいお漬物に、美味しいお野菜。
甘い甘い桜の匂いにつつまれてまた一味違った美味しさです。


「あにうえ、こちらの梅がたいそう甘くおいしゅうございます。」

いかがですか。

「あにうえ、まきののごぼうはこじゅうろうじまんのごぼうにございます。」

いかがですか。

「あにうえ、まさおみのこうのものも、こじゅうろうのじまんにございます。」

いかがですか。

「あにうえ、たんぽぽのいなりはははうえじまんのいなりにごじゃります。」

いかがですが。


もてもて三成君です。
お弁当のおかずをあげたい妹たちに、自分は子供に好かれるタイプじゃないと分かってる三成くんはちょっと驚きますが、なんだかんだ妹の友達であり、キネマ主のゆかりの子である四人を大事にしてくれてるとかでおかずはきちんと貰ってくれます。
その代わりに自分のお弁当に入っているおかずを一人一人にあげるよ。
皆に配って下さいと明智の光秀さんから渡されていたちまきも渡しておやつも一緒に食べて。
こんな旅も悪くないなんて思いながら帰路につくのです。


お土産は沢山の桜の花びら。
そして屋台で売っていた桜もち。
三成君は天君の中ですっかり眠ってしまった妹たちを見守って、穏やかな帰り道何だか自分の小さい頃を思い出したりなんかして少しセンチメンタル天君です。
もしかしたら秀吉様や半兵衛様と一緒に馬車に乗った事を思い出しているのかもしれません。
その懐古は意外にも穏やかで、思わず浮かんだ笑みに自分で少し驚く三成君。
自分は変わったものだとやっぱりセンチメンタル天君です。


そうして夕暮れ時には奥州へ。
あれ特にお花見中にイベントなくてすみませんあれれ。

まだほら、双子とかたんぽぽちゃんは三成君になれてないから。
今回の事で打ちとけたから今度一緒にお出かけするときはもっと振りまわしてくれると思いますかしこ…!


あわわわ。
あわわわわ。
長い。
ちょう長いですね何なの特にオチもないのに…!


前半家族でうだうだしているのがあんまり必要なかったかもしれません。
いっそお城を出る所からスタートでよかったかもしれません。
長い癖に尻切れトンボとか何それ…!

うわーん。
こんな長い小ネタにお付き合い下さってありがとうございます。
うまく落ち無くてすみませんぐすん。
もっと三成君が振りまわされていた方が盛り上がったかと思うのですが、何だか「こら貴様等ァァ!じっとしとらんか…!」って叫ぶのはもうちょっと慣れてからの様な気がして!

皆の憧れ三成兄上が苦労するのはもう少し後に持ち越しそうですすみません…!
これから距離が縮まって、もっともっとこの五人でおでかけすればきっとその暁には。
どうぞこの度は落ち着いたクールな三成兄上でお許しいただければと思います。

アンケにご参加ありがとうございました。
本当に長くなってすみませんー!


あ!
この後ゴロツキは二人のお忍びさんに更に痛めつけられ政宗様に報告され沙汰が下ると思います子供達に手を出したんだからそれなりの罰は受けて貰うよ!


08/17


|
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -