[おへんじ]皆様


「梵でしょ。」
「政宗様だな、」
「政宗殿にござる。」
「Ah?褒めるなよ何も出ねェぜ!」
「こらこら独眼竜。あんた褒められてないからね。」
「お忍び君の言う通りだよ梵。」


少しは自覚して甘やかすの止めて欲しいんだけど。
今朝も真樹緒の椎茸こっそり食べてやったでしょう。
ああいう甘やかし方やめてっていっつも言ってるのに。
いつまでたっても真樹緒には甘いんだから。


「何をおっしゃいます奥州の母上。」


あれにいっとう甘いのはあれの忍ではありませんか。
いつでもどこでも寄り添って、何を話しているのかと思えば特に中身の無い睦言で。
鬼の屋敷にある鮫に触れれないと知るや、本物の鮫を見たいと言った真樹緒と共に大波でも来れば転覆するような小舟で海に乗り出していましたよ。


私の知らぬ間に。


「あー、ありゃァ驚いたなァ。」


その後普通に鮫を仕留めて来やがったけどな。
あれどうする気だ。
絞めた後吊るし上げてっけどよ。



「あれ、いたの近江のお母さん。」


全然全く気付かなかったよ。
それにしても、呼ばれてたっけあんた。
もしかして呼ばれても無いのに来たの?
俺的にはお呼びじゃないんだけど。

真樹緒に甘いのはうちの梵なんだよ。
どれだけ梵が真樹緒に甘いか知らないの?
毎日毎日べたべたべたべたと真樹緒を傍に寄せて。
真樹緒のお願いとあらば何を置いても最優先で。
時には真樹緒のためにならない事だって率先してやってくれるんだから。


「ええ先程から。」


おやおや年若いのに視力の低下とはお気の毒に。
お気づかいなく、私がここに来る事はこのお話が始まる前に決まっておりましたので。

あの子に甘いのは忍以外にありません。
ご存知ありませんか。
それはそれは。
あの子こそいつもいつも真樹緒に寄り添い片時も離れず。
言葉無くとも常にお互いを見ている子等です。
真樹緒の為に腹痛の薬を傷口に塗りこむ覚悟がある子ですよ。
この子こそ一番真樹緒に甘いと言えるでしょう。



「ちょっと、何であんたうちの風魔を語ってくれてるの。」



言っておくけど真樹緒共々風魔はうちの子だよ。
近江のお母さんだか何だかしらないけどあんたの子なんかじゃないからね。
勝手な事を言ってもらったら困るんだけど。



……
………



「あなた存外に面倒臭い方なんですね。」


そんな事私に些かも関係ありません。
あなたの言い分は結構な事ですが、私は事実を言ったまでです。









「あいつらは本当に馬が合わねえな。」
「致し方無い事にございますが。」
「あー?何かありやがったのか?」
「西海の鬼は知らないの?」


あの方怒らせたら怖いんだよ。
真樹緒関連で。


「それにしたって毛嫌いしてるよねえ。」
「何と言う凄まじい殺気よ!!」
「あ、そうそう。」
「どうした佐助、」
「一番甘いのは誰ってのと同時に一番厳しいのは誰ってのも聞かれてるんだよね。」


どう。
真樹緒に一番厳しいお方。



……
………



「成実だろう。」
「ですな。」
「あー…何の文句も無いや。」
「うむ!成実殿は己にも真樹緒殿にも厳しい方にござる!」
「いや、おめーら明智も大概だぞ。」




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