[おへんじ]奥州家族


「おシゲちゃーん!あめ!べっこうあめが売ってるよ!」


あれ食べたい!
おシゲちゃんはやくー!


「はいはい、ちょっと待ちなー。」


今日はね、皆でお祭りに来てるんやで。
秋のお祭り。
政宗様の城下町がね、秋の豊作をお祝いするお祭りがあるから皆で行くか、って政宗様がゆうてくれたん。


それにやぁ、実は俺誕生日なん。
夜には俺の誕生日パーティーがあるんやけど、日が暮れるまでお祭り楽しもうねっておシゲちゃんもゆうてくれてー。
皆でやってきたのです。


「あの虎のやつがいい。」
「虎?」
「帰ったら虎次郎に見せるん。」
「食べたいんじゃないの?」
「虎次郎に見せてから食べるん。」


虎次郎はお城でお留守番なん。
ほら人がいっぱいおるとこに虎次郎が来たら皆びっくりしてしまうやろう?
やからね、お留守番。
まだお仕事があるってゆうてた鬼さんと一緒にお留守番なん。
俺らが町にやってくる最後の最後までこーちゃんと何か言い合ってたけど、最後は鬼さんに抑えられてばいばいしたんやで。


ぬう。
そんなに行きたかったんかなぁ、虎次郎。
悪い事したかなぁ。


ぬー。
今度は虎次郎も行けるお祭り探すからね!
今日はごめんね!


でもその代わり今日は鴨田さんが一緒なん。


「ぶも!」
「なー。」


一緒なんなー。
お久しぶりに一緒におでかけなんなー。


「そう、じゃあこれ梵に預けておくよ。」
「うい!」


政宗様よろしくね!!


「よろしくね、梵。」
「こら待て成実てめぇ。」


好い加減そのposition代わりやがれ。
こちとらさっきから綱元への土産やら虎次郎の土産やら女中への土産やらを乗せられて真樹緒のcuteな顔さえ見れねぇんだよ。


「こういうのはお財布握ってるお母さんが一緒に行かないと駄目なんだよ。」


梵なんてほっといたら真樹緒が欲しい物全部買っちゃうでしょ。
だめだめ。
無駄遣いは許さない俺。


風魔を見なよ。
両手いっぱいに真樹緒の荷物持ってたって楽しそうじゃない。


「あいつはそれが仕事だろうが。」


てめー、こんだけ真樹緒の欲しいもん買ってりゃ人の事言えねぇぞ。


「梵は忍を何だと思ってんの。」


えー?
俺は締めるとこは締めてるよ。



「あー!こじゅさん見て!」


ほらあそこ!
ちっちゃいお人形一杯ある!
動物もあるよ。
鴨田さんとか虎次郎もおるかなぁ。
見に行こう!


「こら真樹緒、走るんじゃねぇ。」
「はやくはやく!」


おシゲちゃんがね、政宗様とお話してるからこじゅさんの手を引っ張ってお人形がずらーって並んでるお店へ走る。


色んな顔が描いてあるお人形は子供とかお侍さんとか綺麗な着物着たお姫様とか種類がいっぱい。
こう、手のひらサイズなんやけどね、一個一個顔が違うん。
服も違うし、動物のなんてね今にも動き出しそうなんやで!


「すごい上手やね。」
「気に入ったのがあったか。」
「うーん、と。」


虎とね、あの鴨っこは可愛いん。
虎次郎と鴨田さんに似てる。


ほんでね、皆に似てるやつ探したいなーって思ったんやけど。
ぬーん。
どうやろうー。
一杯あるから探せやんってゆうかー。

うーん、なやむー。
そっくりな奴買って皆びっくりさせたいん。


「よろしければお描きしますが。」
「へ?」
「お客様方のお顔を。」


俺がうんうん悩んでたらお店のおじいちゃんがにこにこ笑って筆とまだ真っ白なお人形を持ってきてくれたん。
すぐにできますよって言いながら筆をちょいちょい。
色のついた筆に持ち替えてぺったぺった色を塗ってるなーって思ったら「ほら」って。


「似ておりますでしょうか。」
「わぁ!!!」


まっ白やったお人形が目と鼻と口がついて俺に。
髪の毛に政宗様に買ってもらったお花の飾りもちゃんとついてるん。


おおおおお…!
どこから見ても俺!!


「こじゅさん見て!ほら俺!」
「ああ、これはいい仕事だ。」
「恐れ入ります。」


それからおじいちゃんはな、また黒い筆を持って今度はちょっと大きめのお人形持ってまたちょいちょい。
黒い髪の毛を上に上げて、ちょっと顔に傷があるこれはこじゅさん!


「見事なもんだ。」
「すーごー。」


あ!!


ぬーん…
ほんならね、あそこでね、ちょっとお話してる人らも描ける?
あの荷物持ってるお忍びさんと、腕組んでるのがおシゲちゃんで、眼帯してるのが政、


「真樹緒、」
「あ、えっとその、藤次郎君なん。」


あぶないあぶない。
思わず政宗様の正体がばれてまうとこやったー。
大騒ぎになるから秘密ってゆわれてたのにー。


ぬんぬん。
今日は政宗様は藤次郎君。
ういうい大丈夫。
もう間違えへんよ。


「…描ける?」
「お任せ下さい。」


俺がもごもごしてるのにおじいちゃんは気にせんと笑ったまんまで人数分のお人形を用意してくれた。
手が器用にちょいちょい動く。


ぬー。
すごいねー。
ちょっと見ただけでそんな風に描けるなんてー。


「あ、」
「どうした真樹緒。」
「ぬう、鬼さんの分。」


鬼さん。
お城でお留守番やから。
俺ら皆の人形があるのに鬼さんだけ無いんとか寂しいと思うん。
やから鬼さんにもお土産に持って帰りたいん。


「あのね、おじいちゃん。」


ここにはおらん人で、でもいっつも一緒におる人がいてるん。
特長ゆうてみるから聞いてくれる?


あのね。
こじゅさんみたいに髪の毛上げててまっくろで、目元はちょっと釣り目でね。
でもいつも笑ってくれてるん。
優しいねんで。


「それはそれは。」


このような塩梅でしょうか。


おじいちゃんが新しいお人形にさらさらさらって筆を走らせた。
きっと三分もかかってへんよ。
絵を描くみたいにさらさらさらさって。



「うわぁぁぁぁぁ!」



出来ましたよどうでしょうか。
そう言って横一列に並んだんは、こじゅさん、政宗様におシゲちゃん、俺、こーちゃん鬼さん。
ちっちゃいお人形やけど全部そっくり…!


すごい!
すごいおじいちゃん!
こじゅさん見て!
俺らがおるよ!


「見事だな、」


だが真樹緒。
ここに二つ足りねぇぜ。


「ぬ?」
「虎次郎と子鴨も入れてやれ。」
「!!」


おおー!
こじゅさんがお店に並んでた虎と鴨の子を俺らのお人形の前に並べてくれた。
見て鴨田さん!
鴨田さんと虎次郎もおるよ!


「ぶも!!」
「勢ぞろいねー。」



「あれ、何してるのオトーサン。」
「成実、」
「おシゲちゃん!!」


俺達がお話してる間に、何面白い物みつけたの?


「おシゲちゃんは政、っと、藤次郎君とお話終わったん?」
「うん?うん、」


真樹緒の為ならどんな重い物でも持ってくれるんだって。
頼もしいねー。
まぁ、まずお母さんに口で勝とうなんて百年早いよね。


「シャーラッープ!!」


汚ねぇぞ成実!
てめーが一番真樹緒に甘いくせに何言ってやがる!



「ぬん…」



政宗様、一番偉いお殿様やけどやっぱりお母さんの方が最強よね!
おシゲちゃんはたまに笑ってても怖いん。
あ、ちがった。
強いん。


「(…)」
「ほら、こーちゃんも見て。」


ここのおじいちゃんすごいん。
瞬く間に俺らのお人形作ってしまったんやで!
こーちゃんにも見せたかったー。
ほんまにすごかったんやから!


ほんでね、こっちは鴨田さんと虎次郎なん。
もちろんこーちゃんもここにおるよ。
全員勢ぞろいやで!


「(……、)」
「こーちゃん?」
「(……………、)」
「風魔、その虎握り潰したら真樹緒が泣くよ。」


やめときな。


「(ぐ…、)」
「ぬ?こーちゃん?」
「何でも無い、何でも無い、」
「おシゲちゃん?」


にこにこ笑っておシゲちゃんはこーちゃんと俺の頭を撫でる。
お人形を見ながら本当によくできてるねって。
すごいやろ!って俺も笑ったら大きく頷いてくれて。


「おじいさん、これ全部貰うよ。」
「ありがとうございます。」
「!!」


おシゲちゃんが買ってくれたん!


やぁ、俺おこづかいで買おうかなって思ってたのに!
おシゲちゃんが買ってくれたん!


ぬーん!
まじで!
おシゲちゃんまじで!


「真樹緒の誕生日だしね。」
「よかったな。」
「あ、ありがとうおシゲちゃん…!」


うわーん!
ありがとう。
ありがとうおシゲちゃん!
俺大事にする。
とっても大事にする。


これお城に戻ったら鬼さんにも見せてな、お部屋に並べるん。
あ、皆のお部屋に一個づつ飾ってもええよね。
ほらお仕事する机の上。
隅っこにでもいいから。
今日の思い出やで!


「Hey真樹緒、勿論お前の人形は俺の隣だろうな。」
「一緒に並べてもええん?」
「Of course!!」
「ぬん!!」


やった。
俺政宗様の隣!!


やぁやぁ、ほんなら早くお城に戻ろう。
お城に戻って皆にお土産渡して、早くそのお人形並べよう!!


「あら、もうお祭りはいいの?」
「もう一杯楽しんだもん!」


やから早く!
おシゲちゃんの手を引っ張って、こじゅさんの手も引っ張って。
荷物を一杯持ってくれてる政宗様とこーちゃんのお名前も呼ぶ。



はやくはやく!
政宗様もこーちゃんもはやく!
俺今すっごく嬉しいから、はやく来てくれやんと一人で走り出してしまいそうよ!


ぬーん!
やからはやく!!




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