[おへんじ]松永さん


「という事で、真樹緒は頂いて行くよ。」

「Ahー!?」


待ちやがれ松永!
てめェうちの真樹緒をどこに連れて行きやがる!
何がという事でだか意味が分かんねぇんだよおいこらオッサン!



「……松永さん、」
「何かね。」
「政宗様ちょう怒ってるよ。」


遠くの方でちょう怒ってるよ。
もう何やちょっと煙で見えにくいけどあれ絶対に怒ってるよ。

ぬん…

やっぱりあれちがう?
出会いがしらにおもいっきりドッカーンってやってもうたからちがう?
松永さんがお久しぶりの指パッチンしてもうたからちがう?
指パッチンした後、どんな方法か分からんけどこんな遠くの方まで逃げてきてしまったからちがう?


「若い、若い、」
「…松永さん楽しそー。」


それにしてもやぁ、俺何で松永さんに連れてこられたん?
何やお山の中みたいやけど、ここ。
俺これから政宗様とお散歩タイムやったんやけど。
お昼前のお散歩タイムやったんやけど。


「来たまえ。」

「うい?」

「散歩などより有意義な事を教えてあげよう。」

「わぁ!!」


ほんなら松永さんが俺をだっこして森の中を歩くん。
ざくざくざくざく歩いてね。
岩とかも飛び越えてね。
山道を下りて川のが見えるとこまでやってきて。


「あ、お船。」


あれ乗るん?


「ああ、」


川岸にとまってたんはお船。
でもお魚とか取ったりする船やなくて、何かちょっと豪華なお船。
長細くってちょっと小さめなおうちみたいなんがくっついてる感じ。


「わー…」
「真樹緒、頭を。」
「ういうい。」


松永さんにだっこされながらお船に乗り込んだ。
そこはお船やのに広くってお部屋の中みたいなん。
畳でね、窓からは川の外の景色が見えるん。


「すごいー…」
「行ってくれたまえ。」


松永さんが座って俺はお膝の上。
松永さんが声をかけたら船が進みだした。

風がそよいで気持ちいいん。
水の音も聞こえてね。


「松永さん、松永さん、水面がすごい近いよ。」


さわれそう。
お水にさわれそうやで。
さわっていい?


「どれ、」
「わあ冷たい!」


松永さんが俺の手を持って一緒に手をつけてくれた。
さわったお水はすごく冷たくて綺麗なん。
透明なお水でたまに紅葉が浮かんでて。
俺はそれを捕まえようとするんやけど中々すばしっこくってやぁ。
松永さんが笑いながら拾ってくれる。


「これかね。」
「うん、ありがとう。」


綺麗やんね、もみじ。
赤とか黄色とか茶色とかあるけど俺は赤と黄色が混ざったんがすき。

ぬーん。
これ政宗様らへのお土産にしよー。


「真樹緒。」
「はい?」
「口を開きたまえ。」
「くち?」


こう?
良い子だ。


「むぐ、」
「噛むといい。」


もぐもぐもぐ?
もぐもぐもぐ。


「!甘い!!」
「珍しい甘味が手に入ってね。」


こんな甘ったるい食べ物は私にはとてもとても。
卿ならばと思い連れて来たのだよ。


「やぁ、やぁ、松永さんこれチョコレートやで!」

「うん?」

「チョコレート!」


俺の知ってるやつよりは甘さ控えめやけどー。
ちょっと固めやけどー。
これぜったいチョコレート!!


「気に入ったかね。」
「うい!」


ありがとー。
チョコレートありがとー。
お久しぶりのチョコレートびっくりしたけどすっごい美味しい。


ぬー…
この甘さ最高ー。
おいしー。


「松永さん、もう一個ー。」


お口にいれて!
甘いチョコレートお口に入れて!
あーん!


「…全く卿は。」
「ぬ?」
「色気の欠片も無い強請り方をしてくれる。」
「いろけ?」


うん?
俺にいろけ?
色気とか無いっておれ!男の子やし!


「くく…磨けば光ると思うがね、」


そうれ、食べたまえ。


「そう?」


もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。


「あまー…」
「くっくっくっ、」
「ぬ?」


何?
どうしたん松永さん。
そんな笑っちゃって。
背中で笑われえるとお尻が揺れてとってもくすぐったいわ俺!


「真樹緒、」
「はい?」
「真樹緒。」
「?なあに?」
「くくく…」


松永さん?
なぁ、もう松永さん!
笑ってばっかりやんかどうしたん。


「卿を、」
「俺?」
「どうすれば卿を手に入れられるのかと考えていたのだよ。」


あの独眼竜から、あの右目から、そして忍から。
どうすれば奪ってやれるのかと考えていたのだよ。
この通りの卿なれば、攫ってくるのは容易いのだが。
手に入れるとなると難しくていけない。


「うん?」
「卿を私の膝に乗せ、私だけが卿を甘やかし、愛で、」


そうあるにはどうしたらよいのやら。
何分、障害が多くてね。


「んんー?」


何や難しい事をゆうて松永さんが笑う。
もう一つチョコを俺に食べさせてくれながら笑う。
手に入れるってどういう事やろねえ。


ぬーん?


「やぁ、でも。」
「何かね。」
「俺今は松永さんと二人だけやで?」


やから、俺は松永さんのお膝に乗ってるし、松永さんにチョコ食べさせてもらってるし。
めでるのはよう分からんけど。


「…は……、」
「松永さん?」
「はは…」
「ぬ?」
「そうか、そうか、」
「松永さん、どうしたん…」


「真樹緒。」
「はい?」
「確かにここには私と卿の二人きりだ。」
「うい。」


これはこれは卿に諭されるなど。
私とした事が。


卿を膝に乗せ、甘やかし。


「愛でているのも私だけだ。」
「……ぬ?」


松永さん?
松永さん?

やぁ、どうしたん急に。
しゃがみ込んで。
ぬん、お耳くすぐったいん。


「真樹緒、」
「はい?」
「     」
「!!!」


松永さん!
松永さん知ってたん!?
俺の、俺の誕生日知ってたん!?
ええ、誰から聞いたんまじで!

やぁ、俺。
おめでとうとか、俺…!
ぬんうれしい!


「私に分からぬ事など無いのだよ。」
「まじで!」
「さぁ、本日は始まったばかりだ。」


船を下りれば次は馬に乗る。
私の御殿に案内しよう。
独眼竜などには考えもつかぬ様な雅な一日を約束しよう。




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