[おへんじ]武田組


暗い道をお馬でぱっかぱっか。
政宗様と一緒にぱっかぱっか。


ぬん!
今日はね、今からちょっと甲斐へおでかけなのです。
真樹緒ですー。
こんばんは!


「政宗様、まだー?」
「もう甲斐領だ。」


そろそろ猿か真田でも出迎えに来てるんじゃねぇか?


「そう?」


早く皆に会いたいな!


やぁやぁあのね。
何でこんな夜に俺と政宗様が甲斐へお出かけかってゆうとね。
何とゆっきーからお手紙がきたのですよ!


凄いんやで。
ゆっきーな、「はっぴいばあすでぃ!」ってお手紙くれたん。


はっぴいばあすでぃ!
ハッピーバースデー!


ぬん!
俺ね、誕生日やってやぁ!
今日も朝から政宗様やこじゅさんらにお祝いしてもらってやぁ。
プレゼントもいっぱい貰ったん。
皆からちゅうもしてもらったんやで!
いいやろ!
とっても幸せ気分やったんやけどそこにシュタッと矢文が飛んできたのです。


あれはびっくりしたー。


窓からね、壁に向かって飛んできたんやけどこーちゃんと政宗様に叩かれたん。
壁に刺さる手前でこーちゃんのクナイに弾かれて、弾かれたその矢を政宗様がペイッって叩き落としたんやで。


目にもとまらぬはやわざ!
敵か!ってこじゅさんとおシゲちゃんがちょう怒ったんやけどお手紙開いてみたらゆっきーからのお誕生日おめでとうなお手紙だったのです。


ぬーん。
ゆっきーありがと!


でもゆっきーや甲斐の皆には誕生日の事教えてへんのやけど何で分かったんやろう。
不思議ー。
あれ?もしかして言うた事あったかなぁ?


……ううん、ないない。
やっぱり不思議!


ほんでそのお手紙にね。


「今宵、日が落ちて後。
甲斐までご足労願えませぬか。
お待ちしておりまする。」


って書いてあったん。
日が暮れてからおいでって。
俺が首傾げて、政宗様も首傾げて、こーちゃんも首かしげて、おシゲちゃんとこじゅさんが首を横にふって。
駄目だよってゆうんやけど俺お手紙のお礼も言いたいし。
ほらおめでとうっていうお祝いにお礼も言いたいし。
政宗様にお願いして甲斐まで連れてきてもらった訳ですよ。


もう甲斐の領地に入ったみたいやけど、ほんまに何のご用やろうねー。


「全くだぜ。」


一体何を考えてんだかな。


「それはまだまだ秘密です、ってねー。」
「!猿!?」
「あー!さっちゃん!」


政宗様とお話してたらさっちゃんがどこからやってきたんかお馬のお隣を走ってたん。
よく来たね真樹緒、って笑いながら片手上げてるさっちゃんはお馬と同じ速さで走ってるのにとっても爽やかなん。


えー。
さっちゃんすごい。
さっちゃんそれどうやってるん。
さっちゃんの足は本気でどうなってるん。
そんでいつお隣に来たん。


さっちゃんすごい…!


「てめぇら一体何企んでやがる。」


あんな矢文放ちやがって。
急にやって来いたぁ、随分無礼なんじゃねぇか?
それでなくても今日は真樹緒のBirthdayだ。
二人っきりのsweetな一時を過ごす予定だったっつーのにどうしてくれる。


「おっと、いくら独眼竜でもそれは教えられないねー。」


まぁそれは悪かったと思ってるよ。
こちとら真樹緒の生誕日を知ったのが当日っていう事態でさぁ?
急に呼びだしたのは申し訳なかったよ。

でもあんた、旦那。
すいーとだか何だかしらないけどどうせ右目の旦那や風魔、奥州のお母さんとかも一緒だったんでショ?
日頃から奥州のお方達で大事にしちゃってる真樹緒を竜の旦那が一人占めできてるとか思えないんだけど。


「Ahー?」
「うっわ真樹緒見て独眼竜の顔。」


真樹緒が見た事のない様な形相してるよ。
見てごらん。


「ぬ?」


さっちゃんが政宗様とお話ししながら俺を呼ぶ。
政宗様の顔見てってゆうけど、政宗様はいつも通りのかっこいい政宗様やで?
ほら、俺の頭撫でてくれてるん。
今日もイケメン!!


「…独眼竜の旦那、あんたいつまでその面の皮被ってられるかなー?」
「Ha!!真樹緒の前では何時だって俺は格好いい「政宗様」なんだよ!」


ぬん?
なんのお話?
二人とも何のお話?
むう、俺おいてけぼり…


「あ!」
「「真樹緒?」」
「そうそうさっちゃん!さっちゃんあのね、今日ゆっきーからお手紙、」


「あーあーあー!真樹緒!」
「ぬ?」
「そのお手紙について大事なお話あるからちょっとこっちこようか。」


ゆっきーからお手紙貰ったんやけどって続けようと思ったのにさっちゃんは俺の首根っこを掴んでだっこ。
さっきまで政宗様と一緒にお馬に乗ってたんやけど一瞬のうちに俺はさっちゃんの腕の中。


あれ?
何時の間に!
やって今俺政宗様に頭撫でられてたんよ?


あれ?


「てめぇ猿!返しやがれ!」
「独眼竜はそのまま屋敷の方に来てよ。」


俺様お先に真樹緒と失礼するからさ!
そう叫んでさっちゃんが飛び上がる。


「さっちゃん、政宗様は?」


怒ってるみたいやで?


「後から来るよ。」


大丈夫。
そお?
だから真樹緒は落ちない様に俺様につかまってなさいね。
うい。


高い高い木の上を飛んで。
政宗様が小さくなって、声も何ゆうてるんか聞き取れやん様になって。
目の前は空。
星がいっぱい散らばってる夜空。


「わぁ…!」


綺麗。
空に星がいっぱい。
銀色の星がきらきらひかる。


「真樹緒、真樹緒、上ばっかり見てないで。」


これからもっとすごい事が始まるよ。
さっちゃんが笑って、もっと高く飛んだ。


俺はさっちゃんに掴まってるのがせいいっぱい。
けど突然、耳元を過ぎて行くびゅんびゅんってゆう風の音が泊まった。


「さっちゃん?」
「真樹緒。」
「?はい?」
「向こうのお山の方を見てて。」
「お山?」


いつの間にか俺とさっちゃんはお屋敷の屋根におったん。
ほらおやかた様がおる、つつじがさきのお屋敷。
お屋敷の屋根にそっと下ろされてさっちゃんが指差した先は甲斐のお山。

お昼やったらまんまるなお山が見えるんやけど、今は暗いからよく見えやんよ?
いくらお空に星がいっぱいやからって。

俺が首をひねってもさっちゃんが笑ったまんまで俺の隣に座る。


さっちゃん?
もう少しだよ。
ぬ?


「ほら。」
「え…」



ドオォォォォン!!!



「!?」


そしたら急に辺りが光った。
真っ暗やった空がお昼みたいに光った。
轟音が耳を一瞬だけきーんってさせる。
時間が止まったみたいに辺りが真っ白になって。


びっくりして、顔を上げて見えたのは。



「花火!!!」



空いっぱいに広がる花火!
目の前いっぱいに広がる花火!
きらきら光る光の粒が頭の上に落ちて来そうなぐらい近い。


大きい!!



ドオォォォン!
ドン!
ドオン!



「う、わあー…」



花火がふってくる
きらきらひかりながら雨にみたいにふってくる。
手を伸ばしたら本当に触れそう。


きれい。
きれい。
きれい!


そんでもっておっきい!!
すごい!



「さっちゃん、さっちゃん、どうしたんこれ!」



はなび!
さっきから凄いうちあがってるけど!
目を逸らす間もなく次々上がってるけど!
あ、ほらまた!!


「真樹緒殿へのばーすでーぷれぜんとにござる!!」
「!?」


ゆっきー!?
ええ、ゆっきー!?


「まだまだ打ち上がりますぞ。」


ゆっきーが言ったそばからまたどーん!って花火が上がる。
俺はひょっこり出て来たゆっきーと、どーんって上がった花火にびっくりして目が花火とゆっきーを行ったり来たり。
お空いっぱいの花火に、楽しそうなゆっきー。
さっちゃんはその横で笑ってて。


俺は、俺は、もう、何が何だか分からんくって。



「え?あ…?」



「真樹緒がね、誕生日だっていうから。」
「間に合わぬかと少々焦り申しました。」


真樹緒殿のため、真樹緒殿にご覧になって頂くための、真樹緒殿だけに送る大玉にござります。


「おれの…」
「どうよ、真樹緒。」


武田の祝い方は。
気に入ったか。
お主のその様な顔を見る事が出来てまこと大義ぞ。


「おやかた様!」


おやかた様!
おやかた様!
やぁやぁおやあかた様いつのまにそこに!

俺もう突然には慣れてもうたよ!
ゆっきーもさっちゃんも現れたんは突然やったし!


ぬん!
あのね!
聞いておやかた様!

ゆっきーがな!さっちゃんがな!
俺の誕生日やからって花火を!


「あら、打ち上げてくれたのは大将もだよ。」


俺は準備とお迎え担当だけど、山のとこで花火を打ち上げてくれたのは大将と旦那なんだよ。
真樹緒を驚かせようってそりゃあもう二人とも張り切っちゃって。

まぁ、それは、俺も同じだけど。


「真樹緒殿がお生まれになった日にござる。」


これを祝わずしてどうしましょうか。


「まじで…!!」


あ、そういえばちょびっと二人とも髪の毛とか赤いもふもふが焦げてるん。


「ぬーん…!」


やぁやぁ、おやかた様ありがとう。
さっちゃんもゆっきーもありがとう。


俺、すごいびっくりした。
お手紙貰った時もびっくりしたけど花火見たときはもっとびっくりした。


「は!そうや!」
「真樹緒殿?」
「どうしたの。」
「お手紙ありがとうゆっきー!」


俺ね、それのお礼言いにきたんよ。
花火にびっくりして忘れてたけど。
お手紙。
はっぴいばあすでい!ってくれたやろう?
それすっごい嬉しかった!
とっても嬉しかった!


ありがとう!


「真樹緒殿をお祝いする事が出来まして、この幸村大変光栄にござります。」

「ゆっきー…」

「おめでとう真樹緒。」

「さっちゃん、」

「大きゅうなれよ、真樹緒。」

「ぬん、おやかた様!」


打ち上がる花火に照らされて、笑ってるおやかた様が見える。
ゆっきーが見える、さっちゃんが見える。
皆に見れて何だかむずむず、くすぐったい気持。
でも、ちゃんとありがとうを伝えたくって、俺も笑う。


「そうら真樹緒、最後の玉ぞ!」
「よく見ててね、力作なんだから。」
「地が轟きまする!!」
「まじで!」


俺がさっちゃんとゆっきー、おやかた様に挟まれて見上げたまっくらなお空。
さっきまでぴかぴか光ってた花火が消えて静かに静かにそこにある。



ひゅうって風がふいて一瞬。



ドオオォォォォン!!!!



「うわぁ…!!」



今までで一番おっきな花火が。
赤と黄色と緑と、金色に包まれる。
包み込まれる。



きらきら光って、弾けて、また光って。
ほしくずがいっぱいあつまったみたいな花火がお空いっぱいに広がった。




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