橘は思案していた

桔梗、春、橘の三人は京都観光(ウインドウジョッピング)をしていた

何故普通に観光しているのかというと

春曰く、京都に桔梗が住んでいたことが分かった以上、何処に記憶の欠片が落ちているかわからないからとのこと

確かに、その言い分は正しいのだが

これは本当にそれだけの理由なのだろうか

ただ単に楽しんでいるだけな気がする

だが、楽しそうにしている春を見てしまうと、突っ込むことができないのであった

もう、こうなれば気が済むまで付き合ってやろうと腹を括った所、桔梗がいない事に気が付いた

春はすぐ近くの見世物屋で商品を見ている

だが、桔梗の姿は見当たらなかった

橘はぐるりとまわりを見渡してみるが、観光客が沢山いて探しにくい

観光客の多さに苦戦しつつも探したが、桔梗の姿はない

この人の多さではぐれてしまった可能性が高い

いざとなれば桔梗の隠威の気配を辿ればいいのだが、此処では騒がしくて集中しにくい

一方で春は桔梗がいなくなった事に気が付いていない様子だった

露店の商品をしゃがみ、手に取って眺めている

とりあえず、春に桔梗が居なくなった事を伝えるために、彼女に近づく


「春。桔梗の姿が見えない。気配も探るにも此処では少し難しい、一旦此処から離れるぞ」


声を掛けられた春は、手に取っていた商品を丁寧に戻し、立ち上がる


「桔梗がですか? 本当、何処にもいませんね。はぐれてしまったのでしょうか…? わかりました、此処から離れましょうか」


二人は観光客でごった返している商店街から離れ、人が少ない脇道へと出た


「桔梗の位置、わかるのですか?」

「あぁ、桔梗の隠威の気配を探ればな」


一度認識した隠威であれば場所を特定することは容易い

勿論、相手が隠威の力を使って気配を消していない事が大前提ではあるが


「桔梗の隠威、ですか?」


きょとんとする春を見て、そういえば桔梗に隠威がいることを春には話していなかったことを思い出した


「桔梗には隠威がいる。だが、名も知らず、出し方すらわからない。また、隠威自体、出てくる事を拒んでいるから情報源にはならない」

「桔梗に隠威がいる…。」


そう繰り返す春は、何処か寂しさを含んだ目をしていた

気にはなったが、まずは桔梗の居場所を特定するのが優先だ

裏七軒にいる事によって、敵方の徳川に狙われる可能性もないわけではない

情報を得る為に、桔梗の隠威を奪う為に連れ去ったかもしれない

勿論、そうではなくただ単にはぐれた可能性の方が高いのだが


「嫌な予感しかしないんだが…」


何故かはぐれた訳ではないと、自分の直感がそう言っているのであった

溜息を吐きそうになるのを抑え、橘は気を集中させて桔梗の隠威の気配を探る

春はその間、大人しく待っている

商店街付近には気配は見つからず、さらに気を集中させることで、桔梗の隠威の気配を見つけた


「此処は…。北野天満宮? 何故、其処に気配があるんだ」

「何か事情があるはずです。橘、桔梗の元に急ぎましょう」


来た道を戻り、北野天満宮に駆け足で行く春に続いて、橘も駆け足で道を行く

此処から北野天満宮はそう遠くはない

急げば十分もかからない

その間、何事もなければいいのだが……









[ 35/44 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -