「「「ごちそうさま」」」

「おいしかった、二人ともありがとう」

「どういたしまして。良かったです」

「私も。全部食べてくれて嬉しいです」


朝食後の茶を啜る橘と桔梗

食器の片づけをする春とはな

桜も食器を手に持って立ち上がった


「さて、そろそろ用意するかな」

「お出掛けですか?」

「男衆の手伝い」

「おとここし?」

「上七軒の舞妓ちゃんや芸妓の姐さん達の帯結びをな。あれ、本当に硬ぇんだよ。男の力で締めあげねぇと崩れて来ちまうし」

「なんかテレビで見た事あります!」

「桜の帯結びは綺麗。なのに苦しくない」

「はなさんも結んでもらった事あるんですか?」

「うん」

「やっぱりはなさんは女の子…」


どこか安心したように致佳人が呟く

しかし、それを聞いていた桜が笑顔で首を傾げた


「うん?」

「男の子なんですか!?」

「うんー?」

「どっちなんですか!?」


少し離れたところで三人の会話を聞いていた桔梗と春も、会話に加わる


「そういえば私もどちらかは知らないな」

「私も知らないです。あまり気にしないので」

「お二人も知らないんですか!?」

「ええ」


けれど、どちらでもいいんじゃないだろうか

どちらでもはなは、はなだから

あぁ、でも致佳人くんにとってはどっちでもよくないのか


「居候、五月蠅い。…出掛ける」


橘がとん、とマグカップをテーブルに置き、立ち上がった


「あ、あの。橘さんも一緒に? 着物の着つけ」

「講義だ」

「抗議って何処に!?」


ガタンと音を立てて致佳人が腰を上げる

かなり驚いたらしい


「そんなに驚くような事でしょうか…?」

「致佳人君、おそらく漢字違うなぁー」


明らかに慌てている致佳人に桜が答えてやる


「橘は大学生なんだよ」

「え!? そうだったんですか!?」


驚く致佳人に、首を傾げる桔梗


「ほう…? 大学生とはあれか、春。きゃんぱすという所で知識を高めるという」

「ええ。そうですよ」


桔梗は大学に興味があるらしい

少しだけ目を輝かせている


「機会があったら今度行きましょうか。橘の大学の学園祭とか」

「あぁ。楽しみだ」


まだまだ半年以上の話となってしまうが、二人は約束をした

その時も友人であろうと


「俺と橘は出掛けなきゃならんのだけど、致佳人君学校は?」


片づけをしながら、会話を続ける桜と致佳人

はなも楽しそうに片づけを手伝っている


「四月の新学期から通う事になってるんです。もう三月も半ばだし、春休みに入っちゃいますから」

「じゃ、今日は特に用は」

「ないです」

「だったらはなに付き合ってやってくれねぇかな」

「え?」

「ちょっと届けもんしてきて欲しいんだが、はな一人じゃな。桔梗と春も出掛けるみたいだし」

「そうなんですか?」

「はい。少し行きたいところがありまして」


本当の話である

今日は桔梗の記憶を刺激するために、外に出掛けるつもりだった


「はな一人だと、放っとくとすぐ目につく麺もの屋に突入しちまう」

「麺!?」

「な?」

「み、みたいですね」

「はなは無類の麺好きですものね」


はなは本当に麺が好きだ

目に着く所に在ったら迷わず突入してしまうだろう


「致佳人一緒に行く?」






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