桔梗がこの家にやって来てから数日後

春は皆が仕事に行った後、桔梗と共に居間に座っていた

机の上にはお茶と茶請けが揃えられている

のんびりと茶を啜っていた桔梗はふと、此方に向かってくる気配を感じた


「春、この家に何か近づいてきているようだが。客か?」


春がほのぼのと茶を楽しんでいると桔梗が言った


「えっ? そんなことがわかるんですか??」


桔梗の言葉に春が驚いた

ここからは玄関の方の居間は見えないのだ

なのに春は来客があると言った

何故わかるのか

春は驚きを隠せなかった


「ふむ? 普通はわからないことなのか??」

「どうでしょう? 少なくとも私はわかりませんけど」


春は、初めて会った時の桔梗のように力を隠していない者は察知することはできる

だが、力を持つ者が故意にその力を隠している場合は察知することはできなかった


「そうなのか。だがそう言っている間にもう玄関近くまで来ているぞ」

「えっ!? ちょっと見てきますね」


もし本当に来客なら出迎えに行った方がいいだろうと思い、慌てて立ち上がる

そして桔梗に見送られて春が玄関へと駆けていく

玄関に着くと曇りガラスの向こうに人が立っているのが分かった


「あ、どちら様でしょう?」


ガラリ、と玄関のドアを開けるとそこには見知った人が立っていた


「こんにちは春。今日も元気そうで何よりだよ。それで、ちょっとお邪魔しても良いかな?」

「お、お久しぶりです秀次さん。勿論構いませんが…。皆さんはいらっしゃいませんよ?」


彼は秀次と名乗るこの裏七軒の現在の持ち主である

滅多に此処にはやって来ない人の突然の訪問に驚きを隠せない春

彼がこの家にやってくるのは稀であり、来たとしてもはな達がいる時だけだった


「あぁ、うん。今日は彼らに用があるわけじゃないんだ」


はな達に用がないというならば一体なんだというのだろうか

いつもの胡散臭いニコニコ笑顔で言う秀次に理解していない春はよくわからないまま彼を中に通した


【――息災か春?】


秀次を玄関に入れた後、彼の後ろから白い髪の少女が出て来て春に話しかけた


「お久しぶりです神言。そちらもお元気そうで」


彼女は神言

自身の身の丈よりも長い美しい髪をもち、巫女の着物を着た少女のような可愛らしい姿をしている

しかし、彼女が異形であるのはその額から伸びる角によって明らかだった

角はあるが、春が彼女を恐ろしく思ったことはない

この少女が秀次の隠威である

春は出て来た神言に嬉しそうに挨拶した


【秀次がちゃんと我に供物を捧げておるうちはな】


ニヤリと笑って神言は秀次に後ろから抱き着いてそう言った


「ふふっ。相変わらずのようですね」


前に会った時から変わっていない様子の二人に自然と笑顔になる春

とりあえず居間に通して欲しいと言う秀次を居間へと案内した




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