そんなアナタが好きだった 「ねぇ、ルルーシュ。覚えてる?」 夜空を見上げて寝そべるユーフェミアと、その傍らに座るルルーシュ。 長い沈黙のあと、ユーフェミアはふと思いついたかのように、上体を起こしてルルーシュに問いかけた。 紫色の瞳を瞬かせ、ルルーシュは首をかしげる。 「アリエスの離宮にわたしが泊まった時に、夜、ナナリーと一緒に貴方の部屋に押し掛けた時があったでしょう。 “わたしとナナリー、どっちをお嫁さんにするか決めて!”って」 口元を手で押さえ、無邪気に微笑むユーフェミア。 ユーフェミアが言う事をルルーシュも思い出し、思わず苦笑する。 「いきなりあんなこと言われて、かなり焦ったな。 なんなんだ、この姉妹は!って」 「ふふ、今思うと、わたし達の幼さに笑ってしまうけど、あの頃のわたしとナナリーはどこまでも真剣だったな」 「笑うなよ、ユフィ。あの時、俺は本当に必死だったんだから」 どちらも大切で大好きな妹で。 どちらか一方なんて選べないし、どちらでも良い、又はどちらも駄目と言ったら彼女達を傷付けてしまう。 どうしたら良いものかと、血管が千切れそうなほど。 「あの時、マリアンヌ様がルルーシュの部屋に来て、結局答えはもらえませんでしたね。」 そう言うと、ユーフェミアは瞳をキラキラと輝かせる。 「あの時、マリアンヌ様がいらっしゃらなかったら、ルルーシュはなんて答えた?」 ユーフェミアの言葉に、ルルーシュは噴き出す。 キラキラと瞳を輝かせながらルルーシュを困らせる質問をぶつけるユーフェミア。 何年の歳月が経っても彼女は変わってない。 ルルーシュはそんなユーフェミアが嬉しくて、懐かしくて、愛しくて。 少し、切なかった。 くすくすと肩を震わせたルルーシュに、ユーフェミアは首をかしげる。 「ルルーシュ?」 「本当に相変わらずだな、ユフィは」 ルルーシュは軽く息を吐いて、微笑む。 「ユフィ、答えは秘密だよ」 「秘密?教えてくれないの?」 「ああ、教えない」 あの時、焦りながらもユーフェミアの純白のドレス姿を思い浮かべたこと。 その彼女の隣で、嬉しそうに笑う自分がいたこと。 それは、ルルーシュの心の中にそっと閉まってある想い出。 「…いいもん。 どうせ答えは決まってるんだから」 ユーフェミアは起こしていた上体を再びマントの上に戻す。 「ルルーシュの一番はいつもナナリーだもの」 目を閉じて、ユーフェミアは微笑む。 ルルーシュは優しくて賢くて、ナナリーを大切にしていて。 同じ妹なのに、ナナリーのほうがルルーシュに愛されている気がして、いつも寂しかったけど、でも。 「…そういうルルーシュが大好きだった」 今でも、彼の一番にナナリーがいる。 やっぱり寂しくて、でも彼が昔と変わりなくて嬉しい。 ユーフェミアの言葉にルルーシュは泣き笑いを浮かべた。 「ありがとう、ユフィ」 俺も君が大好きだった。 △|▼ |