どうか見ていて



(彼女はゼロの正体を最期まで、隠していた)


Cの世界から戻ってから俺とスザクはたくさんのことを話し、たくさんのことを聴いた。

その中でスザクがふと漏らした。
彼女―ユフィのことを。


いまではもう、彼女の身体を撃ち抜いたあの感覚を思い出せない。
悲痛な声も、狂気が浮かぶ笑みも記憶の中で霞んでいる。

真っ先に浮かぶのは幼かった頃の太陽なような笑顔。
それに重なる、慈愛を感じさせる微笑み。

後悔は決して消えない。あの罪は心に刻まれていて、いつか罰を受けることを望んでいる。

(ユフィはきっと、8年前の、一番幸せだった頃を、僕たち返そうとしてた)

ああ、そうだな、スザク。
俺もそう思うよ。

ユフィが皇位継承権を返上してまでゼロの罪を許したのは、俺やナナリーだけのためではなかったのかも知れない。
スザク、お前のためにも。

俺たちが、友達でいるために。

そんな彼女の願いを無惨に打ち砕いてしまったのは俺だけど。


なあ、ユフィ。
君が今の俺を、俺たちを見たらどう思うかな。

もう戻れない、戻りはしない、優しい世界。



俺たちは過去ではない、未来を創るから、だから、どうか見ていてほしい。

ずっと、ずっと。最期の瞬間まで。




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