風邪


『本当はね、ルルーシュに会いたかったの…』



荒い呼吸で、苦し気な笑顔で彼女はそう言った。








ユフィが風邪を引いたと、母上から聞かされたのはついさっきの事だ。
「だから、今日はお部屋でナナリーとお昼寝よ」と、母上は俺の頬を撫でる。

けれど俺は、どうしても「お昼寝」が出来るような気分じゃなかった。
だって、ユフィが風邪を引いたと聞いてしまったから。


彼女は大丈夫なのだろうか?熱があるのか?咳がひどいのか、鼻水がひどいのか?

とにもかくにも、ユフィに会いたい。


俺は、ユフィの部屋へと駆け出した。






* * * * * *





「…ルル…シュ…」



遠慮がちにユフィの部屋に入ると、広い部屋の中で、彼女はたった一人でベッドに横たわっていた。

ドアが開いた音に気付いたユフィは気だるそうにこちらに視線を向けて、驚いたように声を上げる。



「…どうして?、ルルーシュ…」



来ちゃダメよ。と、弱々しく言う。

ベッドのすぐ側に行き、彼女の様子を見た。

額にはたくさんの汗が浮かび、前髪が張り付いていて、頬が真っ赤に染まっていた。
息をするのが苦しいせいで、息遣いが荒い。
時折、大きく咳き込んで涙を流している。



「…ユフィ、大丈夫かい?」

「…………うん」



俺の問いに、ユフィはゆっくりとうなずく。
明らかに嘘だと分かって、俺は眉間にしわを寄せた。



「大丈夫よ…だから、帰って…ね?
…風邪、移っちゃうわ…」

「ユフィ…」



俺は、ユフィの側から動こうとしなかった。
すると彼女は泣きそうな顔で言う。



「…ルルーシュに風邪…移したくないのっ……だから、」

「…やだ、僕はここにいる」



俺はそっと、ベッドの中のユフィの手を握り締めた。
彼女は驚いて、目を見開く。



「僕は大丈夫だよ。だから、こうさせていて、ユフィ。」



こんなに苦しそうなユフィから離れるなんて、一人にさせるなんて俺が耐えられない。

俺に風邪が映ってしまっても構わないんだ。
彼女が元気になれば。



「…あのね、ルルーシュ」

「うん?」

「本当はね、ルルーシュに会いたかったの…」



苦しくて、淋しくて辛かった。
ずっと、心の中でルルーシュを呼んでいた。



「だから…会いに来てくれて、嬉しい」



今度は俺が驚く。



「ありがとう、ルルーシュ」








―なにがあったって、傍にいさせて



★サイトで設置していたアンケートからネタを頂きました。





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